6-28 宝物庫での企み ⑤
―――妨げ喰らう炎蛇
―――蛇剣舞:風蛇の飛突刃
左腕から放たれた、炎の蛇が纏わりつくように、ナニカを燃やす。
渦を巻くような風の刃が、真っ直ぐと燃えるナニカに突き進む。
「ッチ、流石にこの程度じゃ駄目か」
風の刃は、血の刃の一撃で簡単に潰された。
同時にその振る勢いで炎も掻き消える。
[……――]
「――づぁっ!?」
ナニカの姿がブレた瞬間、嫌な気配のした後方を向いて、剣を盾にするように構えた。
案の定現れた紅い怪物の攻撃を受ける。
剣を貫通して、全身を駆け巡る衝撃が身体を飛ばす。
痺れる身体を魔力で無理矢理に動かし、問題なく着地する。
[――……]
「今度は喰らわねぇよ!」
―――爆ぜ喰らえ雷蛇・五連
―――蛇剣舞:地蛇の破砕刃
―――蛇剣舞:風蛇の斬尾
次の攻撃を予測し、回転するようなステップで横に即座に避ける。
真横をナニカが、通り抜けたと感覚で理解した瞬間、後方へ左手を向け、雷蛇を放つ。
噛み付いた雷蛇が爆発し、怪物の表面を傷つけた。
振り返り、その傷が呆れた速度で再生するのを見ながら、次の攻撃の準備をする。
血色の刃を薄黒い結晶が包み、風が更にそれを包む。
ライトは、剣で居合の構えをとる。
(多少の傷は再生するが、分離した身体はどうなるかね?)
―――蛇剣舞:蜿蜒長蛇・流雲八波
刃にウネる蛇の紋様が刻まれる。
急速に伸びた刀身で、ナニカの左二の腕を八回切りつけた。
砕けた結晶が傷口を広げ、風が更に押し広げる。
そうして、想像よりも容易く切断された、刃の腕が床へと落ちる。
だが、油断した。
「グアッ!?」
左腕の切断など物ともせずに、高速移動してきたナニカの蹴りが、彼の腹を抉る。
居合の構えから、回避は出来なかった。
何度目か分からないが、壁に叩きつけられる。鈍い痛みが、思考をも鈍らす。
それでも、壁から這い出て、攻撃に備える。
しかしながら、攻撃は来なかった。
「何、して……はぁ…」
思わず、溜息が漏れる。
視線の先で佇んだナニカは、全く動こうとしない。だが、怪物の切り落とした左腕の断面は、ボコボコを膨れだしていた。
瞬きごとに膨れた肉は、強靭な腕となり刃となった。
さっきまでと、大きく違うのは刃の形が、左右非対称の斧のようになったこと。
厚く何でも切り裂いてしまいそうだ。
「てか、あんな大きかったか?……待て、状況は最悪かもしれねぇ…」
ライトは、ふとナニカのサイズに違和感を感じた。
明らかに、先程までより大きくなっている、成長しているように感じた。
そして、それは間違っていない。
確かに、2mから2.5m近くまで大きくなっているのだ。
(あの怪物は、卵から生まれた。…もし、あれがまだ幼体の状態で…まだまだ成長途中だとしたら…だとしたら…俺だけじゃあ、手が負えなくなるかもしれねぇ)
想像したのは、最悪の状況と事態、そして結末。
嫌な汗が流れる。足に力を入れて、踏み出す。
想像よりも遥かに速く、怪物との距離は縮まった。
「『喰らえ』!」
無理矢理に剣を振り上げ、ナニカにぶつけながら言葉を紡ぐ。
刃に生成された口が開き、空間ごと怪物を喰らう。
「チイッ!?」
[――……]
右肩口から切断するように、怪物の身体を喰らうことが出来たが、当然その程度で相手が怯むわけもなく。
真上から、血肉の重き斧が振り下ろされた。
「受け、れるっ!」
《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-聡明》
―――八彩王法:喰らい妨げろ、黒盾
集中力を総動員し、時空魔法を使ってもいないのに、視界に流れる時間が遅れているかのようになる。
あまり消費したくない王気を使い、頭上に斧を丁度防げるだけの、最小限のサイズの漆黒の盾を作り出す。
斧と盾の衝突の衝撃で、空間が震える。
力は拮抗したかに思えたが、一瞬の間を置いて、漆黒の盾に罅が入る。
危機を察知したライトは、駆け出した。
「あっぶねっ――うおあっ!?」
盾が砕けたせいなのか、途轍もない衝撃が背後から襲い、地面に伏せることになる。
王気の弾けた衝撃というのは、今まで気にしたことがなかったが、凄まじいようだ。
(どうなった?)
声を出さずに立ち上がり土煙の中、目を凝らす。
辛うじて、ナニカが立ったままなことは分かった。
―――吹き飛ばせ風蛇
掌から生じた強風が、煙を綺麗に吹き飛ばす。
見えたのは、変わらず佇むが斧が破損し右腕が千切れたナニカ。
右腕は恐らく、さっきの衝撃で吹き飛んだのだろう。
「まだ、足りねぇ。再生する前に、切り刻む!」
―――切り刻め炎蛇・五連
―――切り刻め水蛇・五連
―――切り刻め氷蛇・五連
―――切り刻め風蛇・五連
―――切り刻め雷蛇・五連
―――切り刻め地蛇・五連
―――切り刻め闇蛇・五連
―――切り刻め光蛇・五連
各属性の刃が、再生を開始したナニカに殺到する。
「――ッ"ウ"!?」
突如、頭に激痛が走る。目眩もしたが、何とか踏みとどまった。
直感的に、原因を察した。
(王気の操作が限界近いな。精神を、この空間というか満たしてる力が削ってきやがる。あの怪物も、同じような感じだし、相性が全く悪ぃ)
頭痛を忘れ去り、汗を拭って、ナニカへと視線を向け直す。
そこには、各属性が混じり合ったせいか、様々変化をした肉片が転がっていた。
(そういえば、コイツ。もしかして再生してる時は、無防備なのか?)
何故、ここまで出来たのかその理由を推察しながら、ライトは近づいていく。
最中で、肉片の中に赤黒い本があることに気付いた。
(力の源はあれかっ!そういえば、無くなってたわ。というか、ネビュロルは?)
今更に変化を気付いた。まあ、半気絶だったので仕方ない。
そんなことよりも、肉片に近付ききった。ライトは、剣を構えた。
本を、消すために。
「何だか知らんが、面倒そうだから、消えてくれっ!」
―――蛇剣舞・変異:地蛇の剛撃・衝黒鎚
彼は躊躇いなく、剣を振り下ろした。
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次の投稿は11/13(月)です。
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◆技解説
蛇王蛇法技録
吹き飛ばせ風蛇 前方に相手を飛ばすことに特化した強風を起こす
切り刻め炎蛇 使用者が選択した対象のみを炎の刃で切り刻む 炎症効果あり
切り刻め水蛇 使用者が選択した対象のみを水の刃で切り刻む 遅延効果あり
切り刻め氷蛇 使用者が選択した対象のみを氷の刃で切り刻む 凍結効果あり
切り刻め雷蛇 使用者が選択した対象のみを雷の刃で切り刻む 麻痺効果あり
切り刻め地蛇 使用者が選択した対象のみを地の刃で切り刻む 鈍化効果あり
切り刻め闇蛇 使用者が選択した対象のみを闇の刃で切り刻む 暗闇効果あり
切り刻め光蛇 使用者が選択した対象のみを光の刃で切り刻む 閃光効果あり




