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黒塗の八岐大蛇 ~負けれない少年は、人道外れでも勝利をもぎ取りたい~  作者: 白亜黒糖
第6章 誇り高き青の王家と生贄喰らいの魔本
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6-26 宝物庫での企み ③



 ネビュロルは、勝利を確信していた。

 触手でライトを埋め貫いた瞬間には、表現のしようもない悦に浸っていた。

 だが、それは長く続かなかった。



「――ウ"キ"ア"ッ!?!?」



 視界に、触手の壁に"紅い線"が走ったかと思えば、左腕が宙を舞い、鮮血を散らす。



「油断大敵、そっくりそのままお返しするぜ?ネビュロル」

「ふざ、けないでくださいっ!さっきまでぇ、息も絶え絶えだった筈!」



 触手越しに、聞こえる声に耳を疑う。

 だが、実際に聞こえ、腕も斬られた。彼の生存を疑うだけ時間の無駄だ。


 刹那、触手の壁が切り刻まれる。



「っ!?ライト・ミドガルズッ!貴方はぁ!一体、何者なんですかぁ!」



 触手の中から出てきた、ライトの姿を見た瞬間、ネビュロルは叫んだ。


 彼は、見慣れない血のような刃を持つ剣と、何故か無い左腕から黒い血を滴らせながら、笑う。



「お前程度に教える気はねぇよ。何も知らずに、死んでいけ」



 その凶悪な笑みと共に、彼は駆けながら血色の剣を振るう。




 さて、ライトが何をしたか、説明しよう。



「腕の一本"くれてやった"んだから、その分働きやがれ!この腐れ剣がっ!」



 迫りくる触手を切り裂きながら、彼は言う。


 最純二択の空間から抜け出した瞬間に、彼が取り出したのは、ムールマスから奪い取った悪魔の剣だ。

 何らかの力により、この宝物庫奥でイグニティ及びその他武器を巳蚓魑(ミヅチ)から、取り出せなくなっていた。

 だがしかし、それは術自体の無効化ではなく、物体の追加の阻害であるのが直感的に理解できた彼は、一つの奇策を、あの空間で思いついたのである。


 悪魔の力で阻害されているならば、悪魔の武器はその影響を受けないのではないか、と。

 そして、それは正しく悪魔の剣は取り出せた。

 ここで問題になるのは、どのようにして悪魔の剣を従わせるか。

 ぶっちゃけ、じゃじゃ馬が過ぎるのだ。一度取り出した時は、ライトやコーセルト達を喰おうとしたのだから。


 なので、彼は先に『自身の腕を喰らわせた』。

 普通に考えれば正気の沙汰ではないが、腕程度ならば治せるしという安易なイカれた思考で、彼は行った。

 結果としてそれは最適解であり、腕を喰った瞬間に悪魔の剣は血のような刃の見た目は、普通の剣になったのである。


 これらの行動が行われたのは、僅か一秒の間。

 次の瞬間には、彼は剣を振るい触手の壁を切り裂いた。



(にしても、格好つけたが、何でネビュロルの腕は斬れたんだ?)



 ネビュロルにとの距離を詰めながら、ライトは考える。

 彼女の腕を斬ったのは、意図的ではなく、偶然である。

 ポーカーフェイスと言うのか、格好つけと言った方のがいいのか、誤魔化すのは相変わらず得意らしい。


 そんな話や思考をしていれば、彼女は目の前だ。そもこの宝物庫奥は、そんなに広くないので。



「来るなっ!!」



 大きく広がった影の穴から、それは巨大な異形の蜘蛛があらわれる、彼を喰らおうとする。



「喰っていいのは、喰われる覚悟のある奴だけらしいぜ?――『喰らえ』」



 彼の言葉が紡がれると同時に、血色の刀身に歯が生成されガパリと刀身が開く。

 その歯の間()の空間が歪んだと認識するよりも早く、蜘蛛は不明瞭な声と共に消滅する。

 僅かに、床に紫色の血液が飛び散る。



「まだで――「遅ぇ」――ア"ッ!?…グ…デ、スガ、ワ…タシ、ノ…ホウ…ガ…ウ、ワテ…デ…シタ…ヨ…」



 赤黒い本を開き、何かしようとするネビュロルよりも早く、血色の剣で胸を貫くライト。

 彼女の手から、本が抜け落ちる。

 剣を胸から引き抜いて、彼女を投げる。



「何を言ってんだ?ふぅ、これで……可笑しい、何でまだ魔力の操作が――っ!?ゔっ――ガッ」

 


 違和感を感じた瞬間、足元からの悍ましい気配を認識する。

 そして、視線を下ろす前に、横から殴られたかのような衝撃が全身を襲い、身体が吹き飛ぶ。

 場所悪く、棚にぶつかり置かれていた物が、彼に降ってきた。

 鈍痛に気持ち悪くなりながらも、立ち上がれば、奇妙な光景があった。


 赤黒い本が赤光を放ちながら、独りでに浮いていたのだ。



「……大丈夫な訳がない」



 口を開くよりも先に足は動き出して、床を蹴り上げ本へと近付いていた。



「だから、潰すっ!!」


《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》


―――蛇剣舞・変異:地蛇(ちだ)剛撃(ごうげき)衝黒鎚(ショウコクツイ)



 血色の剣に、魔力を流し黒き王気を纏わせ、万力を籠めて振り下ろした。


 赤黒い本に刃が触れた一瞬、血の波動のようなものが広がり、周囲の空間を歪めた。

 しかし、刃が本を切ったり潰した感覚は返ってこない。


 刹那、腹に謎の衝撃が走る。

 少し遅れて激痛と共に、身体が吹き飛んだ。

 壁にぶつかったいたみよりも、身体の痛みの方が数段強い。

 視界が、チカチカと明暗を繰り返す。



(骨がっ…内臓が、逝かれた。何だってんだっ)


―――(いや)(なお)聖蛇(せいだ)



 声を何とか絞り出し、術で身体を治療する。

 痛みが引き、序でに無くなっていた腕も元に戻る。



「一体に何が……何だ、アレッ」



 視線を上げれば、気味の悪い光景が映った。


 宙に浮く赤黒い本から"肉が出ていた"。

 開かれた本のページの真ん中の隙間から、文字通り赤黒い肉が這い出るように、出されて本の真上で球体状に纏まっているのである。


 肉の球体は脈動しながら、徐々に肥大しているように見える。



「何かが…生まれる、のか?そうは、させるわけがねぇ!」


―――八彩王法(ファルべケーニヒ)咬み穿て、黒爪(オニキス・バイター)



 剣から放たれた、黒き斬撃が肉の球体にぶつかる。

 意外にもその斬撃は効き、横真っ二つに球体は分かれ、本と共に床へと落ちた。



「効いたの――」


[ーーーー・・・ー・・ー・・ーーー・・・・・・ーー・ー・]


「うがぁっ!?頭がっ割れるっ!?」



 突如、常人の耳でギリギリ聞き取れる程度の高音が、空間に響く。

 常人よりも圧倒的に高性能な耳を持つライトに、その音は五月蝿すぎた。

 それこそ、効いているだけで気が狂って、頭が割れそうになる程に。



「畜生!『喰らい続けろ』!!」



 血色の剣に生成された口が開き、彼の周囲の音を喰らい出す。

 そのお蔭で、彼は一旦の安寧を手に入れる。

 息を吐いて、落ち着く。ゆっくりと前を向いた瞬間、



[?????????????????]



 赤黒い本と肉の球体の血溜まりが蠢き、そこから"ソレ"は現れた、いや生まれたのだ。


 名状しがたき、その紅い『ナニカ』は。



◆投稿

次の投稿は11/7(火)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆蛇足

語り部「動き出した本に怪物に、謎がいっぱいだねぇ?」

蛇の王「だが、面白そうな展開になりそうじゃのう」

白き槍「本来の武器がない状態で、大丈夫でしょうか?」

語り部「大丈夫、ライトは適応力高いから。折れなければ何とかなる」

蛇の王「それどうかのう?精神消耗をすれば王気は使えなくなる。長期戦は出来ぬと思うぞ。魔法も使えぬしな」

語り部「じゃあ、蛇王蛇法をどれだけ上手く使うになってくるかねぇ?」



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