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5-32 狡猾な毒蛇と血濡れの騎士団 ⑤





「つまんねぇから、簡単にやられんじゃねぇぞ!」


《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明》


―――超級毒魔法:激毒の泥沼(ベノム・マッドランド)



 蛇杖の杖先をカッ、と地面にぶつけるとかなりの広範囲が濁った紫へと変色しドロドロに溶ける。

 ムールマスもその範囲内に入っているのだが、特に変化はない。



「マジで効かないな。本来なら、毒にやられてて可笑しくねぇのに」

「私に、悪魔に魔法は効かぬ。知らなかったのか?」

「本当に効かねぇのかの、一応の確認だよ」



 嘲るような顔をしたムールマスに怒りを感じながらも、ライトは後方へ迷うこと無く蛇杖を振るう。

 硬い物体が砕けるような音と共に蛇杖に何かに触れた衝撃が返ってくる。



「――それに、お前には効かなくてもこの血の騎士には効くみたいだしな」

「貴様、そのためにっ」

(液体みたいだが、完全な液体じゃない。半液体半個体ってところか?それか攻撃時のみ個体化するとか……そこらへんは戦いの中で確認するか)



 彼は別に無造作に攻撃した訳ではなかった。

 背後から近づく敵をしっかりと感知し、攻撃を防ぐ為だった。

 まあ、実際は彼の力が強すぎて壊してしまったが、その分には問題ない。



「さて、こっからは本気でやってくか」


―――虚の理:≪拡張世界認識(エクタグノーシス)()時空(クロノス)



 世界が紐解け、全てが透けて映り出す。

 脳内に入る情報が統一され整理され、すんなりとそれらを理解することが出来る。


 同時に、腕に巻き付いてい白蛇が消える。



「覚悟しろ悪――あっ」

「――『我、万象を貫く神々の矛』」


《白剛彩王-無の理-未来予知-槍術:神級-魔法:超級-神雷絶火-無絶技-天羅眼-神刹風-真深愛》


―――神級槍術・変異:彩王の白炎雷槍レヴァルス・イグニビート



 蛇杖を構えた瞬間、雷が弾けたような音が聞こえた。

 その瞬間には、視界が白に包まれる。


 ライトには見えていた、白い雷と炎を纏ったミスティアナが、ムールマスの斜め上後方からやりを突き出して貫こうとしていたのが。



「死んでないよな?」

「――くっ!離れよ!!」


―――上級血操術:ブラッディソード


「っ、そのようなことも出来るのですか」



 直ぐに晴れた視界には、血の剣を振るいミスティアナを押し返す悪魔が見えた。

 驚きながらも跳ねるように悪魔から距離を取った彼女は、ライトの隣に立つ。



「マスター、決闘は終わったと判断しましたので、加勢に来ました」

「助かる」



 すっかり頭から抜けていたが、彼女は決闘を少し離れた上空から見ていていてくれたのだ。

 ならば、新しい戦いに参戦して彼を助けてくれないわけがない。


 そこで、ライトに正に天啓にうたれたかのように感じた。



「なあヨル。もしかして悪魔って物理は普通に効くのか?」

<そうじゃな。正確には魔力による攻撃が減衰するという感じじゃ。中でも魔法は無効化されると言うだけじゃのう>

「そういうことか。じゃあミスティ、あの悪魔の相手をしてくれ、俺はさっさと血の騎士達を倒してくるから。それまで時間稼ぎを頼む」



 ミスティアナは基本的に魔法を使わないで、剥奪槍と身体能力を活かした近接戦を主とする。

 魔法の効かない悪魔に対して、最適だと考えた。

 頼む、というライトの言葉を聞いた彼女は、目に見えてやる気が溢れ出している。



「分かりました……倒してしまっても良いのですよね?」

「……ああ、問題ない。けど、油断はするなよ?」

「分かってます。……ですがマスター、もし勝倒した場合は、ご褒美などは期待してもよろしいのでしょうか」

「う、うん」

「そうですかっ!」



 彼女にしては珍しい問い掛けに答えれば、彼女は喜色満面の笑みを浮かべた。



(早急に血の騎士を片付けないと不味い、絶対に)

「マスターのご期待に添えるよう、頑張ります。――悪魔、貴方にはマスターのご褒美の為――んんっ、マスターに褒めて貰う為に、死んでもらいます!」

(おーい、それでいいのかー)

「出来るものならやってみろ!」

「ってそんなこと、考えてる場合じゃない」



 地を蹴り、剥奪槍をムールマスにぶつけるミスティアナ。

 残念ながらそれは、血の剣に止められていたが、彼女が戦いが始めたことには変わりなかった。

 それ即ち、タイムリミットが迫りだしたということ、ライトは即座に駆けて、既にそう遠くない距離に大量に居る血の騎士達の下へと向かう。



「済まんが、さっさともう一度死ね!」

 

―――死毒(シドク)()八岐大蛇(ヤマタノオロチ)



 蛇杖から溢れ出した黒が膨れ、八つの頭を持つ大蛇に変わる。

 本日二度目の出現である。



《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-聡明》


―――中級毒魔法:ポイズンランス・六十四連



 各頭の口内に作られた毒の槍が、吐き出されるように血の騎士団へ放たれる。

 高さの関係のより、雨のように降り注ぐ毒の槍が騎士を、



「なっに!?おいどうなってんだ」



 貫かなかった。

 槍は彼らの鎧に触れると液体へと代わり、地面に落ちてしまう。


 反撃とばかりに、血の騎士団から血の矢が放たれる。



「まあ、この程度なら――ん?」



 大した密度でもない矢の雨は、脅威にはならない筈だった。

 しかし、矢が触れた八岐大蛇の鱗が液体に変わり消えてしまう。



「何がどうなって……いや、そういうことか?試してみる価値がある」


―――超級毒魔法:激毒の泥沼・八連

―――超級毒魔法:流動毒牢(リュウドクロウ)・十六連



 先程よりも格段に広い範囲、血の騎士団全員の立つ地面を毒沼に変える。

 泥に足を取られる騎士達。

 その泥が流動し騎士団を覆い牢に変わる。



「やっぱり、そういうことか。アイツ等に直接ぶつかるとか作用する魔法は無効化されるが、別に作用した魔法は無効化出来ない。あの悪魔とは別で完全な魔法への体勢は持ってないってわけだ。そして」



 囚われた騎士達が前進し、牢に剣が振るわれると一瞬にして液体に変わり、その意味を為さなくなる。



「武器は、魔力無効化の能力が強いと。だから矢が触れると八岐大蛇を構成する魔力を無効化されて、鱗が溶けるってわけだ」



 その魔法に起こる変化から、敵に何がありどうして変化が起こってしまうのか、原因を見抜く。

 だが、同時にあまり今の状態では対応策がないことも理解する。



「図体がデカくて毒魔法しか使えないこの状態じゃ、唯の的だな」



 再度放たれた血の矢の雨により、八岐大蛇が溶けていく中、ライトは高速で思考を回す。


 時間はあまりない。

 だからこそ、余計に回る思考が妙案を生み出した。



「ぶっつけだが、やるか!」



 そう気張った瞬間、八岐大蛇が溶けて崩れ去る。


 空中で蛇杖を構え、意識を研ぎ澄ませる。

 八岐大蛇の溶解が停止し、流動しライトの周囲を回りだす。


 刹那、出来上がった宙に浮く黒い球体が光を放ちながら砕け散る。



―――死毒(シドク)()八岐大蛇(ヤマタノオロチ)狡猾なる黒域リスティヒ・シュヴァルツ





◆投稿

次の投稿は8/4(金)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

中級毒魔法:ポイズンランス 毒の槍を生成し放つ 槍の硬度・粘度は調節可能


超級毒魔法:流動毒牢(リュウドクロウ) 周囲に存在する毒を使用して牢・檻を作り出す 規模調節は可能 作った牢・檻には弾性がありある程度の物理攻撃体勢がある


スキル技録

神級槍術・変異:彩王の白炎雷槍レヴァルス・イグニビート 王気を纏い使用者の限界値まで使用者を加速させ突きを放つ 攻撃時に炎と雷の爆発発生 耐性貫通・魔力破壊あり


上級血操術:ブラッディソード 血を成形し剣を作り出す 自由度高め


◆蛇足

語り部「ミスティってやっと我出てくるようになったよな」

蛇の王「そうじゃな!まあ、まだまだ未熟な部分もあるじゃろうに、欲求に一直線じゃが」

語り部「何処行ってたん?」

蛇の王「何、ちょっとした確認じゃよ」

白き槍「何の確認なんですか?」

蛇の王「それはまあ……細々としたアレソレよ」

語り部「はいはい、教える気ないってわけね」



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