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5-28 狡猾な毒蛇と血濡れの騎士団 ①

少し短めです。





「風が気持ちいいですね。空はこんなに晴れて、絶好の戦闘日和です」

「戦闘日和とは?」



 ライト達が居るのは、ハグロ平原。

 そう、トラッシュが決闘する場所に指定してきた場所だ。

 つまりは、今日は決闘当日、一ヶ月後である。


 迷宮都市ラビルの西に広がる平原だ。因みに、ライトがハジノスからラビルへ行く時に一度通っていたりする。

 


「そりゃあ戦闘がしやすくて、して気持ちが良い日ですよ」

「成程…分かりました」

<ライトの戦闘感覚を理解しようとするのはよせ、別世界の者と話しているような感覚に陥るぞ>

「何でそんな悲しいこと言うんですか?本当に僕の婚約者ですか?」

<婚約者だからこそじゃ。被害者を増やさぬようにしとるだけじゃ>



 ライトの戦闘感覚は、戦闘狂種族白魔らしく常人には理解できない領域にある。

 まあ、ミスティアナもヨルも常人とは言えないので、理解できても可笑しくはないと思う。

 いや、やっぱ違うかも。



「ナイも来れば良かったのに」

「仕方がありません。本人が行かないと言っていたのですから」

<ま、アヤツなりの考えがあってのことじゃろう>



 この場に、ナイは来ていない。一緒に行こうと言ったのだが、断られた。

 何でも、少し嫌な予感がするから残るとのこと。

 最初は、トラッシュの好色の目に晒されるのが嫌なのかと思ったが、そうでも無いらしい。

 悪魔にみたいなのが来そう、とかよく分からないことを言われたので、理由は不明だが相当行きたくないらしいので諦めた。



「はぁ、さっさと楽しんで帰りますか」

「楽しみはするんですね」

<楽しみはするのか>



 面倒そうな態度ながらも、楽しむ気満々のライトにミスティアナの呆れた視線とヨルの呆れた感情が突き刺さる。

 だが、そんなもの気にする必要はない。



「ま〜だ来ませんかね――お?」



 視界の端に此処へと向かってくる集団が見えた。

 が、それには問題があった。



「いやいやいや……()()()()



 向かってくる、光を反射する銀色の鎧纏う集団は、あまりにも多すぎた。

 それこそ、パッと見だけで万に届きそうな程の数に思えた。


 あれ、意外と多くなくない?と思うかもしれない方も居るかもね。

 けれどもそうではないのだ。



「可笑しい。騎士団にしては、多すぎるあんな人数管理しきれる訳がない。それにそもそも一貴族が保持してていい戦力じゃない」



 国ならいざ知らず、一貴族が保有している戦力にしては多すぎるのだ。

 公爵家というのを加味してもやはり多いだろう。


 更には、



「あと、気持ちが悪い気配です。魔物に似た感じ…でも瘴気じゃなくてもう少し弱い感じですね」

<恐らく、負の魔力じゃろうな。瘴気に影響されておるから同じような感覚を少し覚えるのじゃ>



 その集団は、奇妙な気配を放っていた。



「負の魔力って、瘴気と同じく常人には悪影響じゃありませんでした?」

<そうじゃの。浴び続ければ、魔物化もありえる。そも瘴気の関わるモノは、魔王共以外やその系譜以外で有害じゃない方が珍しいわ>

「……確かに、嫌な気配ですね」



 遠くからでも感じ取れる濃密な負の魔力が、ライト達下に届いたらしい。

 あの騎士団(暫定)が、本当に人間なのか不安になる。

 が、少なくとも魔物ならば、あのような隊列は組まないだろうと彼は納得した。



「精々楽しめると良いんですけどね!」

<何故、そこで更に元気になるのかのう…>

「まあ、そこはマスターですので」



 彼としては、楽しく戦えれば別に何でも良いらしい。

 


◆◇◆



 数分後、そこそこ離れた場所に、全身銀色甲冑の気持ち悪い気配の集団が一糸乱れぬ整列をしていた。

 彼らの一番前には、見たことのあるデップリとした金髪の貴族服を着た男が居た。



「クヌフフッ!!逃げずに来たか」

「お前、そんな感じだったっけ?」



 男は、トラッシュだった。

 一瞬、ライトはそうでは無いと判断してしまう程に、その雰囲気が大きく異なっていた。


 確かに、体格や見窄らしいその脂肪は変わらないが、全体的に(やつ)れていると言うか、何か老けてる。

 金髪もくすんだ感じ、何本か白い髪の毛も見える。


 一ヶ月でここまで変わるか、という感想が出てくる。



「何を言っている!我は、変わらぬ。そう、変わらぬのだ!」

「目がイッてるぞアレは」

「正気ではないかと思われます」

<じゃが、負の魔力に影響されているというよりは……>



 トラッシュの瞳は、濁っていた。死人と言ってもいいくらいに。

 生気を感じられない、その様子は酷く奇妙に映る。



「始めるぞ!決闘を、我の全てを賭けて貴様を殺す!!」


『…………』


「掛かってこい、ゴミ公爵めが」



 機械のような乱れぬ動きで、トラッシュの声に従い武器を構える騎士と兵士達。

 よく見たら、前方に居る騎士の後ろに、グレードの落とした装備をした兵士が大量に居た。

 全部が完全装備でなくて良かったと、ひっそり息を吐いた。



「ミスティ、離れた空中で見ててください。危ないので」

「分かりました。ご武運を、マスター」

<では行くか、ライトよ>

「ええ、勝ちにいきますよ」


―――神喰螺旋蛇杖(アスクレピオス)

 


 フードの中に居たヨルが目の前に現れ、長い黒い杖へと変わる。

 結構久しぶりに握るその杖は、やはりよく手に馴染む。

 これこそ、自分の武器という感じだ。ま、イグニティも同じなのだが使用量が違うと、少し感覚も変わるというもの。



「さあ、決闘開始だ」





◆投稿

次の投稿は7/24(月)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆蛇足

語り部「トラッシュの兵には、一体何が仕込まれているかね?」

蛇の王「ということで、次話はライト無双!」

白き槍「おまけにそろそろプロローグ回収ですね」

語り部「ちょっと今回の戦闘は通しで伸びるからな。それだけじゃあ終わらないのは既に確定している!」

蛇の王「元気じゃのう」



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