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5-26 連戦を終えて、血石の正体





「んぅ~~!!あぁ~スッキリした」

「……はぁ、それは良かったです」



 大きく伸びをして、ベッドに倒れ込んだソヨは楽しくも気持ち良さげな声を出す。

 そんな彼女の隣で座っているライトは、心なしか疲労の色が濃く見える。

 ソヨが笑みを深くして口を開く。



「なぁにそんな冷たい反応しちゃってさぁ、さっきまであんなに可愛い声上げてたのにさぁ」

「っ!それはそれっ、これはこれですっ!」



 顔を赤くしたライトが、慌てて否定する。


 此処は、ソヨの家。

 ラビル南部に位置する、こじんまりとした一軒家だ。ギルドマスターが住んでいるとは到底思えない。

 曰く、「別に大きい家なんて管理しにくいし、基本ギルドに居るから殆ど必要ない」かららしいぞ。


 ライトが此処にそこそこ訪れている。

 大体の場合、疲れたからといって連れてこさせられて、酒で酔わされて襲われるというのが、テンプレートだ。

 前は、ソヨの気配が強く残り過ぎていて、ミスティアナとヨルに深く追求された。



「本当にライくんは可愛いなぁ……それはそうとして、今日はお疲れ様」

「全くですよ、決闘に百人斬り、そしてこれ…まあでも充実した一日ではありましたよ。得るものも多かったですし」

「んふふ〜なら良かった。でも、まだ終わってないよ?」

「公爵家の件、ですよね」



 深く溜め息を吐きながら、ライトはソヨと同じようにベッドに倒れ込む。

 二人の顔は極近い。息遣いが耳によく聞こえる。


 ※注意、裸では別にありません。



「改めて考えてみても、やっぱり外部から何らかの干渉があったとしか思えません」

「ま、だよね〜私もそう思うし」



 自分の考えを言えば、あっさりと同意してくるソヨに、ライトは少し驚いた。



「え?じゃあ、何で対処をしないんですか?」

「そりゃ、ギルドは内政不干渉だからさ、貴族には簡単に手を出せないからさ。それも公爵家ともなれば尚更。無責任かもしれないけど、ぶっちゃけこの国がどうなろうとどうでも良いからね。私の地位変わらないしさ」



 そう普通に言い切る彼女は、いつもとは雰囲気が大きく違って。

 冷たく鋭く、絶対に揺るがない大地のように静かだ。


 だが、彼女のその雰囲気が堪らなくライトに刺さる。要は、滅茶苦茶好ましい。

 その思考回路が彼のそれと似通っているからだろう。



「王国がなくなると…僕は困りますね。大切な人も沢山居るので」

「その中に、私は入ってる?」

「何を当然なことを」

「そっか……良かったよ」



 何故か、ソヨが手を合わし指を絡めてくる。

 別に離す必要もないので、そのままにしておく。


 そのまま数分ゆっくりした後、ふと、公爵家の話から思いだした奪ったものを虚空から取り出す。

 ギラギラとした金の腕輪、それには赤い宝石が付いている。

 イスカルから奪った、『生命(いのち)血石(けっせき)』が付いた装備である。


 

「うわぁ、趣味悪っ」

「ですよね、でも重要なのはそこじゃありません」



 ソヨに、腕輪に付いた血石が見えるようにする。

 特段驚いたように感じられない、ということはきっとコレがなにか知っており、イスカルが大量に所持していることを知っていたのだろう。



「『生命の血石』ねぇ」

「あれだけ大量に集められるのは、不自然じゃありませんか?」

「だよね〜滅多に出ないのに」

「……僕が思うに、ソヨさん…ソヨさんは、コレが『生命の血石』というものが何であるか知ってるんじゃないですか?」



 ライトは、ハッキリと淀み無くそう言う。

 僅かにだが、絡めている手から動揺が伝わってきた。

 密かに、口の端が上がる。



(やっぱりですか)

「っ……どうして、そう思ったのかな?」

「いえ、唯の勘ですけど。強いて言うならば、ソヨさんが神獣だからです。何でも知ってそうなので」

「そっかぁ、でも残念。お姉さんは何にも知らないんだ――」

「――嘘吐かないでくださいよ」

「わふっ!?」



 白を切ろうとするソヨに対して、絡めた手を軸にくるりと回転するように、彼女の上に動く。

 彼が彼女をベッドに押し倒したかのような体勢だ。



「嘘、吐かないでください」

「うっ嘘なんてついてないから、なんてったって私は神獣だからさ」

「嘘吐いてますね」

「だから吐いてないってば!」



 明らかに動揺した風なソヨに対して、ライトは確かな自身を持って言う。

 その言動が更に彼女の心を揺さぶる。



「嘘吐いてますよ。知ってますか?ソヨさん嘘を吐く時、決まって左に視線を少し逸らした後に真っ直ぐ見てくるんですよ」

「っ」

「そして、左の耳だけが僅かに動きます」

「そんなことっ」

「あと、これだけ密着してれば、別に癖を知らなくても分かりますよ」

「どうやってさ」

「心臓、凄い早いですけど」

「っ!?」



 ソヨ・ラビットニアという存在と深く関わり合っているからこそ気付ける癖で、彼は嘘を吐いているということに気付いていた。

 まあ、そんなとこまで見ているのか、と少し引きたくもなるが彼はそういう男だ。

 関わる相手には、しっかりと意識を向け、些細な変化にも気づく(外見など見た目のみだが)。


 そこで、漸く観念したのか、彼女が溜息を吐いて改めて身体から力を抜く。



「む〜私の負けだよ。知ってる、知ってるよその血石の正体」

「ですよね。じゃあ教えてください」

「ライ君から、キスしてくれたら良いよ」

「えっ…くっ」

「えぇ〜何?してくれないの?お姉さん悲しいなぁ。ホント、何にも話したくなくなっちゃう」



 一転して、ニヤニヤとした顔でキスを要求してくるソヨ。

 彼女も彼女で、諦めが付いたら吹っ切れるタイプなので仕方がない。


 ぐぬぬ、と唸りながらもライトは覚悟を決める。



「い、行きますよ……――んっ」

「――」

「っ!?――んれぁ、らめっ、んぅぃ」



 ゆっくりと唇を重ねれば、直ぐに舌が捩じ込まれ、口内を弄んでいく。

 息を継ぐ暇も無く、只々弄ばれ思考が形を保てなくなりトロトロになっていってしまう。


 一分程、熱く(ホットで)深い(ディープな)キスをされた後、唇が離される。

 二人の唇の間には、銀色の糸の橋が架かっており、それがテラテラと光を弾く様子が酷く淫靡に見える。



「ふぅ……じゃあ教えてあげるね」

「しゅみません、んんっ!すみませんもう少し時間をください。じゃないと頭に多分情報が入りません」

「仕方ないなぁ」



【少年、絶賛安定中!】



「……よし、大丈夫です」

「じゃあ、始めていこっか」



 コップに入った水を飲み干して机に置き、ベッドに戻ったライトは腰掛けた状態でソヨを見る。

 彼女は、手に持つ腕輪を弄びながら、口を開く。



「『生命の血石』は、通称"賢者の石"、ソウルフル・スカーレットなんて呼ばれてるものだね」

「賢者の石?」

「うん、コレを飲み込めば不老不死になる、なんて言われてるね」

「へぇ〜」

「ま、そんなことにならないんだけど」

「え?」

「別に言われてるだけで、唯の迷信だし」



 驚くライトをクスリと笑ってから彼女は、真剣な顔に戻る。



「ま、コレが本物だったら分かんないけどね」

「本物?どういうことですか、これ本物じゃ無いんですか?」

「言ったでしょ、通称だって。本物ならそんな言い方はしないし、そもそも『生命の血石』名前自体も現代人が付けたものだしね」

「成、程…」

「コレは、賢者の石に至らなかった失敗作、贋作。今世界で出回ってる『生命の血石』は全部そうだよ。正式名称は"愚者の石"。賢者の石を作ろうとした愚か者が作り出した、歴史から抹消された筈の負の遺産」



 ドンドンと彼女の声が平坦になっていくので、若干の息苦しさを感じてきた。

 ライトは、彼女の中で膨れる怒りに逸早く気づく。



「そう、歴史から全て消えた筈なんだよ。遺跡に残っているのは、処理の手抜かりにしても。イスカルが持っていたあの量はありえない……誰かが、製法を処理しきれなかった資料から再現したんだろうね」



 彼女は、苦虫を噛み潰したかのような顔で言う。



「その…製法って?」



 明らかに聞かない方が良いだろうが、好奇心には変えられない。



「フゥー……材料は生命だ。生きていれば何でも良い、動物でも人間でも獣人でも、本当に何だって良い。そしてそれが大量に必要。集めたそれらから血、生命の源と魂を抜き取り一箇所に集める。その中に宝石を入れ、一月もの間燃やし続ける。生命の源が消え去り、魂が宝石に融合すれば愚者の石の完成。不思議とそうなった宝石はどんなものでも紅く染まるとか」

「……生命を使い、魂を融合させる…じゃあ、もしかしてソレが死を無かったことにするのって」



 彼女の説明から推測し、その効果の理由に思い至る。



「そう、唯石内部の魂が死を肩代わりして無かったことにしてくれてるだけ」

「そんな……そんなことって…」

「今現代には、そんな悪魔のような所業をする奴がいるってこと……本当に、虫唾が走る」



 開いた口が塞がらないとは、このことで、ライトは今動揺を隠せない。

 すると、グイっと引っ張られ、ベッドに倒れる。

 覆いかぶさるように、ソヨは移動していた。その瞳は、色んな意味で怖かった。



「この話は、もう終わり。チッ、本当にイライラする」

「あのっ、ソヨさん」

「ライくんがこの話をさせるのが悪い。だから、発散に付き合って」



 彼女の、荒い息が頬を撫でる。



「ちょっ、ソヨさん発散ってまさかっ」

「ニ回戦、行くよ」



 その後は、もうお分かりだろう。



◆投稿

次の投稿は7/19(水)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆蛇足

蛇の王「生命を素材とは、エグいのう」

語り部「作者は、割とこういう設定好きだぞ」

白き槍「それはつまり…変態ということで?」

語り部「そういうことよ!」

蛇の王「それは否定するべきではないかのう?」



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