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5-24【黒塗】VS【???】



 デーウルスと悪巧みをした後、二十人の挑戦者を細切れにした。

 九十人目の挑戦者は、全く知らない顔、ギルドに居たかなぁ?という思いも抱かない程に見たことがなかった。

 そして、姿も完全に把握できない。いや、見えてい入るのだが、顔など体つきが分からないのである。



「よろしく、ライト君」

「あ、はい。よろしくお願いします。"クリーム"さん」

「うん、楽しもう」



 目の前に居るのは、クリーム色のローブで頭から足首上まで完全に覆った奇妙の格好の相手。

 名をクリームと言い、声色的に女性だと思われる。

 顔も見えない、つまり視界が確保されていない筈なのだが、足取りはしっかりしており不思議な相手だ。

 だが不思議と不気味さのようなものは感じず、何故か逆に親近感のようなものを感じる。



[さて、お次の挑戦者は、全てが謎に包まれた飛び入り参加の少女、クリームだ!全身を覆うローブで何から何まで分からない彼女だが、一体どんな戦いを見せてくれるのか!【黒塗】相手にどう動くのか、気になって仕方がない!]



 見たことがないと思ったら、飛び入り参加らしい。

 この百人斬り、元々八十人程は事前に決まっているらしく、残りの枠は当日参加用に空けてあったらしい。

 飛び入りが無かった時用の穴埋めも準備しているらしいが…意外と飛び入り参加は多かった。

 彼女を含め、丁度十九人になるので、予定で考えればあと一人というところだろう。



(ふ〜む、どんなタイプか見た目からは予測できない…まあでも恐らくは魔法メインの魔道士系かナイフなどを扱う軽戦士系)



 ライトは、クリームを見ながら密かにその戦い方や強さを測ろうと試みる。



(強さは正確には、測れないけど……いや、多分確実に強い下手したらフーリンさんクラスの可能性すらある)



 彼女の纏う雰囲気が、足運びが、脱力の仕方が、強者のそれに感じられて彼は仕方がなかった。


 ライトは、今日初めて、イグニティを取り出して構えた。

 気を抜けば負けそうな気がするから。

 対するクリームは特に準備していない、強いて言うならば肩幅に足を開いたくらいである。



[それじゃあ、レディ――ファイトッ!!]


―――超級闇魔法:カースジェイル


「魔道士タイプかっ!」

 


 ライトの足元から黒い触手が現れる。

 イグニティでそれらを切り裂き、クリームとの距離を詰めるべく駆ける。

 


―――超級闇魔法:影の抜け穴(シャドウホール)


「こっちだよ」

「っ!?」


―――上級闇魔法:シャドウバレット・マグナム



 いつの間にか背後に回っていたクリームから、声が掛けられ振り返る。

 目の前には既に紫の魔法陣が、既にありそこから放たれた薄黒い球体が高速で放たれ、ライトの腹を穿つ。



「うっぐっ――ラァッ!!」


《黒剛彩王-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-回避錬術-怪力》


―――蛇剣舞:地蛇(ちだ)剛撃(ごうげき)


「遅い」


―――中級闇魔法:ダークバースト



 衝撃に耐え、イグニティを振り下ろす。

 確かに命中する位置と速度で振った筈なのに、刃が触れそうになった瞬間、霧のようにクリームの姿がブレて解け、少し後ろに現れる。


 床に刃が触れて窪むが、それすらも軽い跳躍によって避けられ、放たれた闇の波動に吹き飛ばされ、床を数回跳ねる。



(魔法発動が早すぎる。闇魔法使いとは戦ったことがないから尚更対応しにくいっ)



 地面にイグニティを突き刺し身体を止め、直ぐに引き抜いて横薙ぎに振るう。



―――蛇剣舞:風蛇(ふうだ)飛裂刃(ひれつじん)

―――上級闇魔法:アブソープダーク


「成程、不思議な技」



 風の刃、闇の盾に喰らわれ意味を為さず。

 声が聞こえたかと思えば眼前に、紫色の靴底が見えた。



―――上級体術:寸勁(すんけい)()剛波(ごうは)


「――アガッ!?」



 靴が身体に触れた瞬間、衝撃が身体を突き抜け、内臓がグルグルとかき混ぜられたかのような感覚と共に身体が痺れる。

 視界が揺らぎ、立ち上がることが出来ない。



―――超級闇魔法:ダークネスファング


―――上級時空魔法:正しの歯車(トアル・ギアル)

―――中級時空魔法:テレポート



 頭上に現れた歯車がギリッ、と音を立てれば、身体の異常が正され正常に戻る。

 視界が切り替わり、安寧を得るがこちらへと掛けてくるクリームが視界に映る。



「息つく暇がありません、ねっ!!」


―――蛇剣舞:蛇螺刃風(ダラジンプウ)



 居合の構えからイグニティを振り抜けば、一陣の風が吹く。

 だが、風の刃が触れ引き裂けば彼女は、また霧のように解けてしまう。

 そしてそれらが集まれば、また人の形を取り戻す。



「ちょっと、強めで行く」


―――天級闇魔法:闇夜の舞踏会クレセンテスト・ロンド

―――天級闇魔法:夜鯨(ヤゲイ)()(アギト)

―――超級闇魔法:影の抜け穴


「ちょっ――危なっ!?」



 舞台が薄黒くなったかと思えば、床からライトを喰らわんとする何かの口が現れた。

 その口が閉じ切る前に跳躍で回避する。

 すると、その何かは床から抜け出て跳ね上がる。それは大きな薄黒い鯨。

 鯨が床へと接触すると、ドプンと薄黒い床が波打ち何事もなかったかのように、鯨が消えた。


 一連の出来事に目を取られていれば、"真後ろ"から床を蹴る音が僅かに聞こえた。 



―――上級体術:武装抜(ぶそうぬ)

―――上級音魔法:振動遮断(バイブスアウト)


「む?」

「貴方が使う体術の方向はもう読めてますので!」



 反射的に挟み込んだイグニティに振動を遮断する魔法を掛ける。

 ぶつかった靴からくぐもった妙な音がした。

 

 反動で少し距離を取った彼女は、新しい魔法陣をローブの上に浮かべる。



「流石、適応が早い。じゃあ次はどう?」


―――天級闇魔法:夜鯨(ヤゲイ)()滑空百陣(カックウヒャクジン)



 床が波打ち、無数の小さな鯨が飛翔し、ライトへと迫る。

 イグニティを大上段に構え、即座に振り下ろす。



―――蛇剣舞:嵐蛇激甚斬(らんだげきじんざん)

―――超級闇魔法:影の抜け穴



 風の刃が鯨を切り裂き、生まれた嵐がその他の鯨を巻き上げバラバラにしていく。

 視界の端に、紫色のものが入り込む。



―――超級体術:流麗転脚(リュウレイテンキャク)


「ぐあっ!?」

「気を向けすぎ」



 高速の蹴りが放たれる。何とか腕を振り上げ挟んだが、固めていない唯の腕では意味もなく。

 押し切られ、腕の骨がミシミシと音を立てた瞬間に横に飛ばされ転がされる。



「そろそろ、終わりだね」


―――神級闇魔法:闇は暗く深く、(ダークス・ダーク)永久に閉ざせ帳(ネス・エターナル)



 舞台が光沢のない黒紫色の幕のようなものに覆われドーム状になる。

 内から外、外から内、どちらからも反対側を見ることは出来ない。

 空間が、完全に隔離されているのだ。


 これほどの魔法を一瞬にして、発動できるクリームにライトは、敵にも関わらず驚嘆と尊敬の念を送らずにはいられない。

 立ち上がり、薄暗い空間の中で彼女を見つける。



「クリームさん、貴方は一体」

「何者だろうね?ライト君はどう思う?」



 声からして愉しそうな彼女は、そう問うてくる。

 ライトは、顎に手を当て、少し考えてから口を開く。



「そうですね。可愛いお姫様、ってところでしょうか」

「っ……フフッ、フフフッ、君良いね、嫌いじゃない」



 何となくの雰囲気から適当に言ったのだが、何故かウケた。

 ローブが小刻みに揺れているところから、相当笑っているようだ。



「そんな面白い君に免じて…コール、降参(サレンダー)


[――あっ、クリームの降参(サレンダー)コールにより――ゲームセットッ!勝者、ライト・ミドガルズッ!!]


「え?」



 魔法が掻き消され、薄暗い勝った世界に光が戻る。

 ライトは、何が起こったのか理解していない。



「クリームさん、何を」

「降参しただけ、別に今回は面白そうだから参加した。勝ちに来てないから」

「それでも、あれはもう僕の負けで……」

「でも、そうは判定されてない。だから君の勝ち」



 立ち尽くすライトに背を向け、クリームは一人勝手に歩き出す。



「今度は、然るべき場所で、"本気で"戦えるのを楽しみにしてる」

「クリームさっ……消えてしまいましたね」



 声をかけようとすれば、彼女は霧のように解けて消えてしまった。

 まさに霧のように掴めない相手だった。

 けれども、悪い者ではないとライトは感じていた。



(不思議な人ですね。またどこかで会えること、僕も願ってますよ。クリームさん)



 何故だか、この結果に不満などはなく、ストンと自分の中で落ち着いた。

 ライトは、不思議と温かい気持ちを胸に、次を待つことにした。



◆投稿

次の投稿は7/14(金)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

中級闇魔法:ダークバースト 自身を中心に全方位を闇の衝撃波で周囲を吹き飛ばす


上級闇魔法:シャドウバレット・マグナム 闇の弾丸を高速で打ち出す 周囲の光度が低い程威力上昇

上級闇魔法:アブソープダーク 前方に闇の盾を生成し受けた攻撃を吸収する 籠めた魔力量に応じて吸収する攻撃量増加


超級闇魔法:カースジェイル 対象の足元の影が自動的に対象を拘束し檻と化す 本質が影な為光が強すぎると不発になる

超級闇魔法:影の抜け穴(シャドウホール) 繋がった影の範囲を即座に転移する 癇癪を広げることで地表であればどこでも転移可能


天級闇魔法:闇夜の舞踏会クレセンテスト・ロンド 使用した範囲の地面を影があるという状態に変化させる 光度にこの影状態は左右されない

天級闇魔法:夜鯨(ヤゲイ)()(アギト) 影がある場所でのみ使用可能 影で鯨を模し対象を喰らい跳ね上げ引き裂く

天級闇魔法:夜鯨(ヤゲイ)()滑空百陣(カックウヒャクジン) 影がある場所でのみ使用可能 影で無数の小さな鯨を模し対象を喰らい尽くす


神級闇魔法:闇は暗く深く、(ダークス・ダーク)永久に閉ざせ帳(ネス・エターナル) 使用した範囲をドーム状に隔離し夜であるという状態に変化させる 光度にこの夜状態は左右されない ドーム内での術使用者のあらゆる闇属性魔法物理両方ともの威力が上昇する


上級時空魔法:正しの歯車(トアル・ギアル) 使用した対象のあらゆる状態異常を限定的時間遡行又は限定的時間加速で解消する


上級音魔法:振動遮断(バイブスアウト) 使用対象に伝わる振動を遮断する 魔力量に応じて遮断力上昇


スキル技録

上級体術:寸勁(すんけい)()剛波(ごうは) 対象の芯を貫くように衝撃を伝播する 強度がない場合内部から破裂する

上級体術:武装抜(ぶそうぬ)き 武器や装備に対して基本は使用 武器の場合持つ手などを衝撃で痺れさせ取り落とさせる 装備の場合金具などを衝撃で破損させ武装解除をさせる


超級体術:流麗転脚(リュウレイテンキャク) 急加速から流れる様な蹴りを放つ



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