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5-20【黒塗】VS【炎竜刃】



 〈アニマリー〉に勝利した後、続けて六人の挑戦者彼女ら程の難なくボコした後。

 十一人目となるのは、見知った相手だった。



「ん~、久しぶりですね。グレンダさん」

「ああ、暫く見ない内に随分化け物になったみたいだね」



 久方ぶりに向き合う、燃え盛る炎のような髪の長身の女――グレンダは、前よりかはその力が洗練されているように思えた。



「グレンダさんも、ちょっと強くなりました?」

「その自然に煽ってくる感じ、変わって無くて安心したよ」


[さて、次の挑戦者はクラン『炎血の翼』のリーダー!Aランク冒険者【炎竜刃(えんりゅうじん)】の二つ名を持つグレンダだ!実は、【黒塗】とは一度決闘をしたことがあり、その際には敗北したという、因縁があったりする!彼女は、雪辱を果たすことが出来るのか!]



 ソヨの声が訓練場に響く。

 そんなこともあったなぁ、とライトは笑みを浮かべながら、右手に持っていた鋼の剣を握り直す。


 何の変哲もない鋼の剣だ。セイク商会で販売されている丈夫で扱いやすい、ごく普通の剣と呼ぶに相応しい片手直剣。

 とある目的の下、ライトはこの剣を今使っている。

 〈アニマリー〉の後の挑戦者は、コレを使って全員倒した。



「安心ってなんですか」

「そう、安心だねぇ――」


[それじゃあ、レディ――ファイトッ!!]


「――安心して、攻撃できる!」


―――超級剣術:剛裂破斬(ごうれつはざん)



 開始の合図と共に、勢いを乗せた魔力の籠められた紅の大剣が振り下ろされた。

 半歩身体を右へ動かし、長剣で軽く大剣の刃を逸らす。

 刃の触れた床が、バキバキと亀裂が入る。



「嫌な信頼、です!!」

「ぐっ!」



 大剣をグレンダが引き戻す最中に、胴に魔力を纏わせた蹴りをお見舞いする。

 倒れはしないが、少しだけ姿勢を崩した。


 距離を詰め、彼女の首へと長剣を振り上げる。



―――中級炎魔法:ファイアバースト


「――っとと、流石お得意の炎魔法は今日も良い火力してますね」

「あんた、力任せじゃなくなったみだいだねぇ」

「まだまだです、でも前よりかは上がってる自信が――ありますよ!!」



 流れるように、ライトは自然体で斬りかかる。

 大剣に防がれ、金属音が響く。しかし、攻撃は止まらない。

 彼女の身を包む、紅の鎧でも構造的に薄い部分、間接などの部位を的確に狙い、切り裂いていく。



「チッ、素早いね」

「やっぱり、大剣よりも取り回しが楽で早くていいです」

(イグニティの一撃が重い感じも良いんですけど、こっちもこっちで好きなんですよ。イグニティの前は、こっちの方が使ってる期間長かったですし)



 軽く切っただけなので煩わしい程度だろうが、その洗練された軽快な動きにグレンダは、警戒を強める。

 一方ライトは、軽く数回跳びながら長剣をクルクルと回す。


 瞬間、床が砕ける程、脚に力を籠めて彼女へと肉薄する。



《黒剛彩王-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-回避錬術-怪力》


―――蛇剣舞:水蛇(すいだ)鱗牢(りんろう)



 唸る水を纏う刃で、鎧ごと身体を連続で斬り付ける。

 鎧の表面に付いた傷に流水が入り込み、押し広げ破壊する。

 そこで、爆発するように水と鎧が弾け飛ぶ。

 熱い水蒸気が、頬を撫で僅かに湿らせる。



「――成程、身体にまで攻撃が届く前に、魔法で鎧ごと水を吹き飛ばしましたか」

「随分凶悪な技を使うねぇ、後少し遅れてれば、身体がバラバラなるところだったよ」



 直ぐに晴れた視界、見えたのは鎧を着ていないグレンダ。地味に初めてだ。

 薄着の隙間から見える身体に刻まれた複数の傷痕が、その修練と戦いを想像させる。



「う〜ん、鎧の上からでも分かってましたけど、良い身体してますね、簡単に壊れなさそうな」

「こんな傷だらけの身体、好きじゃないんだがねぇ。一応あたしも女なんだ、やめてくれないかい?」

「別に良いじゃないですか」

「あんた、そういうとこ直ってないねぇ。いつか本当に困るよ。年長者からのアドバイスだよ」

「はいどうも、僕よりも弱い、年長者さん」

「この、本当にっ」



 ヘラヘラといつも通りに喋り倒すライトのせいで、グレンダの額に青筋が浮かぶ。

 最近は、他人との関わりが多くなってきたにも関わらず、戦闘中は饒舌になる癖は直っていない。

 もしかしたら、関わりの有無は関係なく、元々そういう質だったのかもしれない。



「ここで、叩きのめすっ!!」


《竜の血統-大胆不敵-豪傑-幸運》


―――血統解放(けっとうかいほう)()炎竜(ファイアドラゴン)



 身体中の傷が赤く光り、全身から炎が溢れ出させ、紅の大剣が赤熱して炎を纏う。

 彼女自身と同じく久しぶりに見るその姿は、やはり悪魔のようで結構怖い。



「熱いのは、嫌いなんですよね!」


―――蛇剣舞:水蛇(すいだ)牙芯(がしん)



 その場で突きをすれば、剣先から生じた水球が弾丸のような速度で放たれる。

 グレンダにその水の弾丸が到達すれば、ジュッと明らかに蒸発した音がして消えた。



「うへぇ、バカ熱量は健在ですか」

「暢気だねぇ!」


《竜の血統-炎魔法:超級-火炎操作-大胆不敵-豪傑-幸運》


―――超級炎魔法:ドラゴンファング

―――超級炎魔法:ドラゴンテイル



 溢れ出している炎の一部が竜の牙を模り、迫りくる。

 それと同時に、竜の尾を模った炎が鞭のように振るわれる。


 舞台全域に至る尾の攻撃を、グレンダの身体と魔力の動きから読み切ったタイミングの跳躍で回避し、



―――蛇剣舞:風蛇(ふうだ)斬尾(ざんび)



 剣から延長された風の刃で牙を一刀両断にする。



「ここだっ!」


《竜の血統-剣術:超級-炎魔法:超級-火炎操作-大胆不敵-豪傑-剛腕-幸運》


―――超級剣術・変異:炎竜刃(えんりゅうじん)



 それが放たれた瞬間に、空間の温度が明確に上がった気がした。

 以前よりも洗練され明らかに速く大きくなった、炎竜の斬撃が猛り身を焼き切ろうと迫る。

 こんな時でも、ライトは至極楽しそうに笑みを浮かべていた。



「強くなってますね。でも、俺の方が強い!!」


《黒剛彩王-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-回避錬術-怪力》


―――蛇剣舞:氷蛇解獄斬(ひょうだかいごくざん)



 鋼の長剣が真っ直ぐ振り下ろされたかと思えば、炎竜の斬撃が左右に分かれるように舞い上がる。

 そう認識した瞬間には、それら全てが凍結し氷へと変わった。

 アーチ状になったそれは最早一種の芸術のようだ。


 肝心のグレンダはというと、炎と一緒に氷の彫像へと変わっていた。

 剣を構えた姿が何とも勇ましい。



[――ゲームセットッ!勝者、ライト・ミドガルズッ!!]



 訓練場の歓声が聞こえてくる。どうやらライトの勝利らしい。

 舞台の氷が砕け散り、それがまた結晶が舞っているようで綺麗。



「はぁ、また負けちまったのかい」

「でも、強くなってましたよ?」

「ふんっ、口が減らないねぇ、まあその精神的強さがあんたの強さの秘密かもね」



 鎧まで完璧に元に戻ったグレンダは、なんだか不満げだ。仕方ないのだろう、負けたのだから。

 大剣を鞘に納めながら、出口へと彼女は歩き出す。



「今回もあんたの勝ちだが、次は負けないよ」

「いえ、次も僕が勝ちます」

「そうかい、じゃあ負けんじゃないよ。この後も結構な数控えてるんだからねぇ」

「言われなくてもですよ」



 長剣を虚空に仕舞いながら、ライトは笑みを浮かべてその姿を見送った。



◆投稿

次の投稿は7/5(水)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

スキル技録

蛇剣舞:水蛇(すいだ)鱗牢(りんろう) 対象を連続で斬り付けてその切り傷を流水で拡張し破壊する

蛇剣舞:水蛇(すいだ)牙芯(がしん) 突きの追加で高速で水球を射出する

蛇剣舞:風蛇(ふうだ)斬尾(ざんび) 刃を拡張するように風が包む リーチ延長と切断力上昇

蛇剣舞:氷蛇解獄斬(ひょうだかいごくざん) 使用時周囲に炎及び熱量が高いものがある場合のみ使用可能 不可視の斬撃を飛ばし斬撃とその軌跡周辺の熱を押し退けながら凍結させる


魔法技録

超級炎魔法:ドラゴンテイル 巨大な竜の尾を模した圧縮した炎で広域を薙ぎ払う


◆蛇足

語り部「長剣を使うライトは珍しいよな。イグニティはバスタードソードだから、どっちかっていうと大剣だし」

蛇の王「ライトの腕力など力を存分に伝えられるから大剣は、結構相性が良いからのう。ライトが使う杖というか我も長い分、遠心力で破壊力が増せるからこれまた相性が良いのじゃ」

白き槍「そういえばあの杖、2mもあるんですよね?狭いところでは使えません」

語り部「改めて考えると自分より長い得物をぶん回すのって、難しそうだよな」

蛇の王「アレは、ライトの才能あってこそで扱えてるものじゃ。只者ならば、取り回しの時点で地面にぶつけて話にならぬ」

白き槍「つまり、ライト様は凄いということで?」

蛇の王「あ〜うむ、そうじゃな」



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