5-12 簒奪の影響
「うぅ〜」
「ほ〜ら、頑張ったわね〜」
ソファにだらりと寝転がり、少女に膝枕されながら、ぐでぐでとする少年が一人。
少女の方は、黒色のコートの下に白いシンプルなビキニという、家の中だからこそ奇怪に感じる格好で膝枕しているナイ。海ならこうは感じなかっただろう。
少年の方は、珍しくもコートを脱いで、同じく黒い部屋着で膝枕されているライトだ。非常にやる気が感じれない。
因みに、ナイが着ているコートはライトの脱いだ物である。
「軟弱じゃなぁ、全くこの程度で」
「いやぁ、でもなんか〜身体に力入らないんですよ〜力を抜かれたみたいな感じで〜」
「力が入らない…ああ、そういうことか」
「どういうことなんですかぁ、一人で納得してないで教えてください〜」
彼の言葉を聞いて、一人納得した様子のヨルに、語尾が伸びたライトが問う。
ナイとライトが座っているソファの反対側にあるソファに座っている彼女は、自身の隣で静かに寝ているミスティアナを一瞥した後で口を開いた。
「ミスティアナに簒奪されたようじゃな。我も剥奪槍の開放形態と戦った後にそうなっておったわ。別に不調なわけでもなく、ただ怠いのじゃろう?」
「お〜よく分かってますね、流石です」
「……だとしたら、不味いかもしれないな。ライトというのが、とても不味い」
「な〜にが不味いのよ、ハッキリ言いなさい。ヨル」
重々しい顔をしたヨルが、ナイとライトを真っ直ぐ見る。
へらへらとしていた、ライトはその異様な雰囲気を感じ取り、顔を引き締めた。
だが、身体は怠いので膝枕されたままだ。
「恐らく、ミスティは――」
一旦、言葉を区切って横で寝るミスティアナの右手を取り、着けている白い手袋を外した。
そこには『真っ白な王冠状の刻印』が手の甲に刻まれていた。
「――『白剛の王』の座についた」
「……ミスティがですか」
「へぇ、凄いじゃない、何が不味いのよ」
「不味いも不味い、大問題じゃ」
手袋を戻した後、彼女は天を仰ぎながら言う。
「ミスティが『八彩鉱王』になることは、別に問題はない。それだけの才覚は有しているからな。問題なのは、ミスティとライト。お主ら二人の関係性じゃ」
「まあミスティ、正直バグりすぎてますしね」
「それはワタシも感じたわ。髪が"神創金属"なんて、凄いわよね」
「ええそうです……ん?神創金属?」
「ワタシも触って分かったんだけど、あれは絶対に神創金属だったわ」
「え?あれ?ミスティの髪って神創金属なんですか?」
「そうだって言ってるじゃない」
ライトは、ナイが何を言っているのか理解するのに少しの時間を要した。
それも当然のこと、髪が金属という事実自体、意味が不明だからだ。
彼自身、何度もミスティアナの髪に触れたことがあるが、金属質だった記憶など皆無であり、完全に普通の触り心地が良すぎる髪だった。
確かに、彼女の髪を切ったことは無いし、言われてみれば伸びてもいない。
ライトの場合は、背中の半ば以上に伸びた場合、切っている又は切ってもらっている。
「確かにミスティの髪は神創金属じゃな。これも昔の天羅の特性じゃな。昔の奴らは全身神創金属じゃったがな。ミスティの髪は切れば、一分も経たずに元の長さ形状に戻るぞ
「便利と言うか、ある意味不便といえばいいのか。今度、ミスティにお願いして試させてもらいます」
「して、話を戻していいか?」
「あ、はい」
ミスティアナの髪の話題は一旦置いておいて、ヨルが話を戻す。
「問題になるのは『白剛の王』が『黒剛の王』の奴隷だということが不味いのじゃ」
「……成程、パワーバランスが崩れるんですね?」
「その通りじゃ」
「どういうことよ、ライト」
ナイが、ライトの頬を手で挟み、ヨルの方を見ていた彼の顔をぐりんっと自分の方へ向ける。
煌めく黄金の瞳は、今日も美しい。
「『八彩鉱王』は、それぞれ八つの属性の理を管理する者達。その役割は重要で、他の何にも左右されず、個々が個々の意志で行動し、力の均衡を保たなければならないが故に『八彩鉱王』にはあらゆる権力などが効果を発揮することはない絶対的治外法権と言っても言いものがあります」
「それで」
「治外法権に関しては、まあいいのですが。力の均衡の方が重要なんです。世界を安定させる為に、王同士は何にも害されず対等である必要があるんですよ」
「…そういうこと。ミスティはライトの奴隷だから、それが出来てないから不味いと」
彼女の言葉に、その通りと彼は頷いた。
頬から手が離され、彼女は顎に手を当てる。何故か、コートの袖が伸びており、彼女の手を完全に覆っている。
萌え袖と言うには長すぎて、ただ袖を余らせているだけのように思える。
「かといって、ミスティ。絶対に100%、確実に奴隷辞めないわよ?」
「ですよねぇ」
「それが不味いのじゃよ。ライト絶対主義と言ってもいいミスティ。力の均衡など取れているわけがないじゃろう」
「もう少し、ミスティが自主性を持ってくれれば良いんですが」
奴隷としては、最高なのだがそこが問題だ。
ライトは思案する。
「最近はそこら辺の成長も著しいですし、期待しましょう」
「先延ばしにしたわね」
「先延ばしにしたな」
ライトは、先延ばしにした。現時点で完全な解決方法を見いだせないから。
二人から刺さる視線から逃れる為に、ナイの腹部に顔を埋める。
彼女はビキニなので、その場合顔に触れるのは生肌、柔らかな彼女のお腹だ。
突然の行動とこそばゆさに彼女は、軽く震える。
「ちょっと、くすぐったいわよ」
「ん?んん?ナイ、肌スベスベ過ぎません?」
「手入れとかは、普通よ?まあ、この身体は造物だから、元々綺麗なのだけれど」
「手触りが、気持ちが良いです。今更ながら、これは最高ですね」
二人の関係性が成せる技ではあるが、ライトはナイのお腹に手を滑らせる。
婚約者を目の前にして、一心不乱に別の女のお腹を撫でるという、化け物染みた精神力でなければ出来ないことを平然とやってのける男が此処に。
「それを言うならライトの肌もそうでしょ?貴方の場合、ワタシよりも何もしてないのに綺麗過ぎじゃないかしら」
「確かに、言われてみれば……ヨルもそうじゃないですか?」
「お主、我とて女じゃぞ。手入れくらいしておるわ。ほれ、我の肌も触ってみよ」
反対側のソファから移ってきたヨルが、最近はそればかり着ているワンピースを脱いでライトの手を自身のお腹に持って行かせる。
因みに、最近は下着を着けてくれるようになった。今は、青いレースの下着を着用している。
半ば露出狂のようなその行動も、ライトにとっては慣れたもので、反応を示さずに彼女のお腹を堪能している。
「あ〜ナイとはまた別方向ですねこれは、肌ってこんなに差があるんですか」
「ワタシも触っても良いかしら」
「いいぞ」
ナイが、ヨルのお腹に手を伸ばし、触れてから驚嘆の顔をする。
ライトの頭をゆっくりと膝から降ろして、ヨルのお腹を触りに行く。
「確かにこれは、癖になりそうね。…ミスティのお腹も気になるわね」
「それは不味くないですか?」
「いえ、何事も挑戦よ」
「………」
挑戦した結果、驚いて反射的に発動した魔法の被害をライトとナイが受けるまで、後10秒。
スッと逃げていたヨルのみが、その被害を免れた。
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