5-11【黒塗】ライトVS【白閃】ミスティアナ 下
巨大な炎の竜巻、激流を纏う土塊の大蛇、弾け散る雷光。
蛇王蛇法が、本来の猛威を振るいミスティに襲い掛かる。
ぐらりと一瞬揺らいだ視界に伴い、倒れそうになる身体に力を入れて保つ。
「やっぱり受けるのは良くなかったな…魔力切れ寸前だ。魔法を使えるのは、あと超級が三回ってところか。天級なら一回。神級は使えない…ならそうだな……」
左手で剥奪槍を受けた時、魔力を殆ど奪われた。
そのせいで若干、身体が怠いが、勝てないほどではない。
策を練り上げた所で、
―――纏い駆ける風蛇
風を纏い駆け出す。
ミスティは、水蛇と地蛇の合体した大蛇に手を焼いているらしい。
蛇王蛇法は魔力を使用していない為、剥奪槍の奪う力で対応できないのだろう。
だけど、どうも作為的に感じる。開放した神器の力があの程度な訳がない。
絶対にまだ手を隠している筈。警戒は怠ってはいけない。
《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》
―――蛇剣舞・変異:嵐蛇激甚斬・黒嵐戦雷
―――天級重力魔法:無重力の天望球
止まらずに、イグニティで眼前の空を切る。
黒の混じった翡翠色の斬撃が放たれ、ミスティに喰らいつかんとする大蛇を斬り伏せた。
瞬間、爆発したように黒き竜巻が生まれ、嵐となり炎の竜巻すらも飲み込み肥大する。
台風の規模になってきたそれは、遂には地面すら巻き込み始めた。
竜巻と台風はそもそも発生するメカニズムが違うので比較するのは間違いかもしれにないが、両者は規模という点でも大きく違うので今回は問題ないものとする。
さて、此処で重要なのは、台風は地面を巻き込む程の風力になり得るのかというところだ。
答えは簡単、そこまでは中々ならない。建造物の倒壊まではあるが、地面を抉る規模が自然発生するならば、社会や文明というものは恐らく存続していないだろう。
よく見れば、台風に地面が巻き込まれているというよりは、砕けた地面が浮遊し風に流されているという方が正しいことが分かる。
この状況を作り出したのは、僕の魔法、無重力の天望球。
使用した周囲の重力の作用を時間経過ごとに薄れさせる魔法、但し使用者はその影響を受けない。
何でそんな魔法を使ったかと言えば。
「見つけた」
重力魔法の影響を受け、台風に引き寄せながら空中で藻掻いているミスティが見えた。
確かに彼女は、馬鹿げた速さを持つが、それは走れる地面や蹴れる壁があるから。
空中に浮いていれば、その速度を殺せる。空気でも蹴れない限り、中々行動できない。
だからこその重力操作だ。
宙に浮く地面を跳び移り、彼女へと近づき、丁度50m程離れた場所に着く。
イグニティで抜刀のような構えを取る。
《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》
―――蛇剣舞:蜿蜒長蛇・流雲八波
柄から切っ先へウネウネとしている蛇の模様が現れたイグニティを、連続で振るう。
ビュンッ、と空気を切る音が八回響き、鞭のように伸びしなる刃がミスティを斬る。
重力が減衰している為、彼女の身体は宙に浮いたままだし、彼女特有の白い血(初めて見る)は玉のような状態で周囲に散らばったまま保持されている。
主のするべき攻撃なのかは微妙だが、有効打にはなっているだろうな。
「『我、万象を貫く神々の矛』」
《未来予知-零落簒奪-槍術:神級-魔法:超級-神雷絶火-無絶技-天羅眼-神刹風-真深愛》
―――上級無魔法:ミュールシールド
―――全能から簒奪する槍:《王気簒奪》
―――神級槍術:獅子王の雷槍
「――う"く"っ!?!?」
刹那、雷が弾けるような音と共にミスティが既に眼の前に居り、腹を剥奪槍が深々と突き刺さり抉る。
口内に逆流した血液が溢れ、金属の味が舌を汚す。
先程の魔力が抜ける瞬間的な喪失感ではなく、身体から徐々に何かが抜けていく感覚が僕を侵していく。
これ王気を奪われてるっ、時間がねぇのにっ!
―――逃れ跳べ空蛇ッ!!
黒腕に開いた口が、僕を窮地から逃げさせる。
離れた浮く地面に居るものの、状況は最悪だ。
ドバドバと壊れた蛇口のように、腹の傷口から血液が流れ続けているからだ。
思った以上に深かったらしい。まあ、常人なら動けもしないが、まだ僕ならいける。
―――癒し治せ聖蛇
「くっぅ、マジかよ、傷が治らねぇ…」
掌から生まれた白い蛇が傷を治そうとするが、失敗に終わる。
原因は分からない、いや今原因なんてのはどうでもいい。
状況が好転できない、魔力もなければ体力もない、この状況でどう勝てと?
不安がよぎるが、そんなことをしている場合ではなかった。
宙に浮いているミスティがこちらを見ている。
奪った黒き王気を纏う剥奪槍を向けて、戦意を向けて来ていた。
魔力の高まりを感じた。
―――上級無魔法:ミュールシールド
彼女の真後ろに半透明の小さな板が作られた。
成程、そういうことか。
蹴る地面が、壁がないなら自分で作ればいい。
魔法で作った壁を使って、移動と攻撃をしてきたというわけだ。
そして、今もう一度それが行われようとしている。
このダメージで回避は、恐らく間に合わない。
なら迎え撃つしかない……んだが、それもまた速度が足りない。攻撃に合わせられないと思う。
……ああ、そうだった。正面から戦う必要無いんだった。勝てば、それでいい!
痛みで急に冷めた思考が、本来の目的を思い出させる。
求めるは勝利のみ、敗北は死と同義、我が邪道は常勝無敗の覇道。
―――取出・巳蚓魑
「『我、万象を貫く神々の矛』」
《未来予知-零落簒奪-槍術:神級-魔法:超級-神雷絶火-無絶技-天羅眼-神刹風-真深愛》
―――全能から墜とし簒奪する槍:《全能殺しの白金槍》
―――神級槍術・変異:彩王の黒炎雷槍
ピカッと黒い閃光が走り、彼女の姿がブレる。
それを見た瞬間に、口は動いていた。
「――《反逆の閑話》」
目の前に現れた、一枚の曇ガラスのようなものにミスティが突っ込んだ。
剥奪槍の穂先に集束された力が開放されてしまう。黒い波動の後に炎と雷の爆発が巻き起こる。
その全ての被害を、僕は受けていない。全ては曇ガラスの向こう側、彼女自身へと返された。
曇ガラスの手前、身体の真ん前に浮かぶ一冊の辞書ほどの厚み且つ文庫本四倍のサイズ感の本が、今の状況へと事を至らせた。
真っ白な表紙に黒い王冠のマークの上に、筆で描いたであろう乱雑な灰色のバツ印が描かれた本。
名を『反逆書 レボルシオン』というこの本は、攻撃の反射や効果の反転などを行えるカウンター特化型の神器だ。
ピーキーだが、格上殺し、大物喰らいにもってこいの能力。
これの能力を使い、攻撃を完全にミスティに返したというわけ。
攻撃が出来ないならば、しなければいい。実に、単純なこと。
「危ないな、本当にだがまだ終わってない。きっと意識は残ってる。最後の一撃を、決めに行く」
反逆書を虚空へ仕舞い込み、落としていたイグニティを握る。
黒腕の口が開く。
―――狙い迫れ空蛇
視界が急変化する。
身体が落下しているのに、気づき空中なのを理解する。
目をしっかり開いて見れば、真っ直ぐ先の地面に張り付いたように倒れる白い少女が見えた。
動きづらそうにしながらも、身体を動かしこちらを見上げる彼女の瞳には、まだ諦めは見えない。
ミスティの頑丈さは、主であるからこそ最も理解している。あの程度で倒れるわけがないのも分かっていた。
「さあ、今回の戦いは」
黒腕が解けるように黒い靄へと変わると、イグニティの刀身に纏わり付く。
落下による風で腕の消えたコートの袖が乱れる。
ニタリと三日月のような笑みを浮かべながら、漆黒に染まった刃を振り下ろす。
「これにて――終幕だ」
《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》
―――八彩王法:黒剣は、極星を墜とす
放たれた巨大な漆黒の斬撃。
それが、地面へと接触した瞬間、黒が弾けたように溢れ出す。
広がったそれが地面を黒く染め上げた。
「……あ、不味い身体から力が抜けてく。魔力もないし王気もないし、おまけに出血しすぎたしな。仕方がないな。……死なないと、良いなぁ」
彼が意識が途切れる前に見たのは、自身がぶつかる真っ黒な地面だった。
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次の投稿は6/6(火)です。
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◆技解説
魔法技録
天級重力魔法:無重力の天望球 使用した周囲の重力の作用を時間経過ごとに薄れさせる 使用者はこの魔法の影響を受けない
スキル技録
蛇剣舞:蜿蜒長蛇・流雲八波 蜿蜒長蛇+固定位置からの八回連続攻撃 若干の弾性がある為斬撃と殴打の両方の攻撃となる
蛇王蛇法技録
狙い迫れ空蛇 思い浮かべた対象の近くに転移する 稀に視界の開けた空中に転移する場合あり




