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4-31 第ニ次 黒剛の王VS蛇の覇王 終





(構え直せって言われて、仕切り直しっぽいですけど。そんなことする気は毛頭ありません―――使うなら、やるなら今しか無い)



 ライトは、漲る身体の勢いに任せ、覚悟を決めていた。



(入れるフェイントは一回だけ、その次の一撃で終わらせる。今の全力をぶつける、それが最善手だ)



 真正面からの攻撃など考えている訳がなく、勝つ為の最善手を模索している。

 波一つ無い海のように心を落ち着かせ深く意識を集中させていく。


 全身に魔力を流し、王気を纏い、ヨルに視線を向けた後、彼女よりも早く虚を突くように駆け出した。

 少しも動揺していない彼女に内心苦笑しながら、イグニティへ王気を流し込む。

 銀河の刃に、柄から剣先に向けて黒い亀裂が入る。亀裂が、星々を吸収していく。星の消えた銀河、青黒く澄んだ刃は勝利を映す。


 地面を砕く程に脚に力を籠め、蹴り跳び上がる。

 イグニティを天へ掲げる。


 真っ直ぐに刃を振り下ろす。



《Error code ███:何らかの障害により、表示できません》


―――八彩王法(ファルべケーニヒ)絶望に堕とす、業黒(ブラック・アウト)



 一閃の刃が描いた黒い軌跡が上下に延長された瞬間、軌跡を境目に"世界がズレる"。

 地面が、空が、光が、原子に至るまで軌跡で、全てが断ち絶たれた。

 更に一拍置いて、軌跡が爆ぜて黒き力の奔流が世界を黒く塗り潰していく。



「『隠せ』」



 ナイの神性(言霊)がライトという存在を秘匿する。


 黒塗の世界の中にぽっかりと空いた穴のように佇むヨルの下へ静かに降りる。

 警戒する彼女の後ろへ周り、イグニティの剣先を地面に向けるように自然に構えた。


 ライトの瞳に刻まれた髑髏の神紋が強く輝く。



「『我が刃、真に命刈り取る断罪の暗器』」



 イグニティの全体が真っ黒に染まったかと思えば、粒子のように(ほど)けてしまう。

 それは瞬きの間には、イグニティと似たような"鎌"が手に握られていた。

 銀河のような孤を描く刃とヨルの杖状態と同じような長さの柄、イグニティと同シリーズの武器と言われても納得してしまいそうなほどに、似た意匠の鎌だ。


 その変化に驚きもせず、ライトは鎌を構える。

 迷わず、そして、速く鎌をヨルの心臓目掛けて、流れるように振るう。



《Error code ███:何らかの障害により、表示できません》


―――神術・死:死神の暗絶殺(タナティック・キル)



 タナトスから降ろされた神性を全力で行使した、あらゆる生物を死に至らしめることが可能な絶死の一撃。

 鎌の刃がヨルの身体に触れ、肉を貫き始めた刹那、彼女の首がこちらを向く。

 だが、時は既に遅い。



「『死ね』」

「―――相打ちじゃ」


―――神喰(ゴッドイーター)絶命之喰楽(エンラ・ガント)



 刃が胴を貫通するのとほぼ同時に、後ろに動かされていた彼女の手がライトの頭に触れる。

 その瞬間には、脳内にノイズが走り意識を蝕み喰らってしまう。

 意識を手放す前に見えたのは、自身と同じように倒れていく口から血を流したヨルだった。



◆◇◆





「――ライトッ!?」



 地面に横たわる、彼を抱き締めたのは、ナイ出会った。

 自身の神性を使い、ライトの八彩王法から身を守っていた彼女は、戦いが終わったのを見て、いの一番に駆け寄っていた。



「そんな、どうして…」



 ライトの身体からは熱は感じられず、心臓の音もしない。

 感情の箍が外れ、涙が溢れ出す。恥も外聞も今は捨て、咽び泣く。

 冷たい彼の身体に、意味がないと分かっていても熱を伝えるように強く抱き締める。


 そんな彼女に一人の存在が近付く。



「まさか、手を抜いていたとはいえ、ヨルさんと相打ちまで持っていくとは」

「誰よっ!」



 振り返らば、竜の翼を持つ青年が立っていた。

 見られた彼は鷹揚に口を開く。



「どうも神の器。ボクは『七種覇王』第二席"龍の王"バハムート・ドラグニア。以後お見知りおきしなくても良いですよ。だって貴方にはここで――壊れて(死んで)もらいますので」

「不味っ」



 バハムートの真上に現れた混じり気のない青く巨大な炎が現れる。

 それは竜の鋭い爪を模し、ナイへと落ちていく。



「――それはいけません」

「――それは駄目やろ、ムートはん」



 身を焼き尽くすかと思われた青い炎は、空中で凍りつき、ナイはモフモフとした尻尾に包まれていた。



「何故、邪魔をするのですか?ボクらは元々、神の器を破壊しに来た筈です」

「確かにそうでもありますが、本来はヨルの伴侶である少年をただ連れ帰るだけだった。それに、ヨルの言葉を覚えていないのですか」

「戦いが終わった後、干渉をするなと、つまりは勝手に動くなと言ってたやないか」



 民族衣装を来た宙に浮く少女――ユーフラグリス・ユグドラシル、ユグと花魁のような着物を来た狐の女――タマモノマエが、バハムートとナイの間に割って入っていた。

 少し空気がピリつく。



「ええ、ですがこれは想定されていない事態、相打ちの場合は――」

「――そういうことではないのですっ!バハムート!今すぐに戦意を抑えなさい!でなければ」

「でなければ、何な――ヴッ!?」



 彼の言葉は、途中で終わってしまう。身体に異変が起こったからだ。

 彼の右腕は肩口から先が跡形もなく、一瞬にして消滅した。

 左腕は指先から黒く変色していき、ボロボロと崩壊してしまった。



「バハムート、我が伴侶に手を出そうとし、我が命令に背いたということは、死ぬ覚悟が出来ているのだろうな」



 二つの声が上がった。

 片方は、イグニティの鎌で心臓を貫かれたにも関わらず、確実に死んでいたにも関わらず、悠々と起き上がりその顔を怒りに染めた蛇の王、ヨルムンガンド。



「『龍の王よ、我らが王を真に殺そうとした狼藉、到底許せるものではない。死して償え』」



 もう片方は、同じく死んでいたライトなのだが、いつもと先程と大きく雰囲気が異なっていた。

 それはもう、"別人"かのように。


 二人から放たれる物理的に空間を歪めそうな程の覇気に当てられたバハムートは、顔を青くする。



「ら、ライトッ!?」

「『我らは我らが王ではない。我らが王の身体をただ借りているだけだ』」

「我らが王?じゃあ、アンタ何なのよ!」

「『神の器よ、今は落ち着け。そなたよりも重要なことが今はある。我らが王の身体は、事が終わったら返そう』」

「答えになってないわ!」



 可笑しな、ライトの身体だがライトではない存在にナイは不満を表すが、同時にこれ以上は意味がないだろうことも察した。


 そんな会話が行われている横では、ヨルがバハムートの首を締め上げていた。



「ふざけるなっ!!この―――が、―――して―――してから、更に―――して終わらせてやろう!こんな形で我に歯向かうとは、失望したぞバハムート!!」

「――落ち着きなさいヨルッ!いくらなんでも終わらせるのは駄目ですっ!」

「――そうやそうや、確かにそれだけしても良いかもしれへんけど、流石に不味い!九割殺しで納得してくへんか!?」



 意識が途切れかかっているバハムートに、ライトとの戦いの数倍以上の魔力を込めた拳を叩き込み続けるヨルを止めるユグとタマモが居た。

 そんな彼女らに、ライト?が鎌から元に戻ったイグニティを持ちながら近付いていく。

 


「――む?」

「『死して償え』」


《Error code ███:何らかの障害により、表示できません》


―――████:█████████



 ヨルの手から強引にバハムートを奪い取り、宙に放り投げて、ドロリとした黒い液体のような力の溢れ出るイグニティを叩きつける。

 遥か遠くまで、黒い線を描きながら、バハムートが飛んでいく。


 ヨル達の意識が、ライト?に向いた。

 ヨル以外が彼に対して警戒をしている。



「ライト…いや、違うな…お主らか、久方振りじゃな」

「『久しいな、蛇の王よ。実際にこうして合うのは、何百年かぶりか』



 見た目自体は、いつもと二人の会話なのに、内容や雰囲気はやはり異様だった。

 ヨルは、ライト?対して懐かしくも苦々し気な顔を向ける。

 ライト?は、言葉こそ落ち着いているが、その裏には深い憎しみのようなものが伺えた。



「『時間など、関係ない。だが、少し驚いた。よもや貴様が我らが王と婚約をしているとはな』」

「成り行きじゃ、存外我もそやつを気に入っているからな」

「『よくも、そんなことが言えるな、蛇の王。我らは忘れはしない、貴様が罪を。我らは忘れはしない、貴様が業を』」

「口を開けば、それか。早く消えてしまえ」



 会話が不穏な方向へと進んでいく。



「『我らは許しはしない。頂きに立つ蛇の王よ、貴様が我らに与えた円環の呪いに誓ってな』」

「さっさと眠れ、亡者共。我が伴侶を返せ」

「『いずれ我らが王も知ることとなるだろう。いつまで貴様は己が過去を隠し通せるか――』」

「――その時が来て、刺されようとも良い。それが我の罪なのだから」



 かと思えば、真っ直ぐヨルは、ライト?の濁った瞳を見つめて言い返す。



「『…ならば、我らは見届けるとしよう。我らが王と貴様の行く末を』」

「ライトに、力は貸してやってほしいのじゃ」

「『言われずともだ。それこそが、我らが役目』」

「そうか、ではこれ以上はない」

「『さらばだ、蛇の王。貴様が運命に災厄あらんことを』」



 ありったけの憎悪を籠めたかのような言葉を告げた後、ライトから異様な気配が消え、バタリと倒れる。

 前に、ヨルが彼を支えた。



「……全く、いつまでも面倒な奴らじゃ」

「ヨル、もう大丈夫なのですか?」

「ああ、もう良い。さて、帰るぞ我が同胞たちよ。バハム――あの馬鹿は置いていくぞ」



 ヨルの声に応じて、離れていた残りの二人の王もこちらに近付いてくる。

 ふと、彼女は、地面にへたり込んでいるナイを見た。

 彼女に、そっと手を差し伸べる。



「…そこの神の器、来い」

「どうしてよ…貴方達の目的はワタシの破壊でしょ?」

「だが、お主を生かすとライトは願った。そして、こやつは相打ちとは言えど我に僅かに勝利した。ならば、願いを聞き届けねばならぬ」

「ライトの、為?」

「その方が、お主としても納得しやすいじゃろ?」

「…ええ、そうね」



 ナイは、ヨルの手をゆっくり取った。


 こうして、魔導書から始まった奇怪な旅路は、終わりを迎えた。

 多くの謎を残して。



◆投稿

次の投稿は5/4(木)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

王法技録

八彩王法:絶望に堕とす、業黒(ブラック・アウト) 王気を剣へと流し込み剣撃と同時に解放する 剣の描いた軌跡の延長上前方に存在するほぼ全てを切断し切断箇所から王気を溢れさせる 切断後の王気の生成には周囲の現力が必須 王気の触れた周辺は崩壊と共に変換吸収され使用者の力へと還元される


スキル技録

神術・死:死神の暗絶殺(タナティック・キル) 攻撃した対象に死の運命を強制して確実に生命活動を停止させる 鎌でのみ使用可能 刃が対象の触れている必要あり


神喰(ゴッドイーター)絶命之喰楽(エンラ・ガント) 対象の命気を喰らい尽くす 対象の身体内部に触れている場合に捕食時間短縮 命気は使用者のものへと変換される



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