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4-25 黒剛の王VS狂気の魔王





『来たか、黒よ』

「ああ、してやられたよ、狂気の魔王。お前、囮になったな?」

『私が最適だったからな。まだ他の魔王は、本来の力すら取り戻してはいないのだから』

「そんなこと俺に言っていいのか?ま、見当は付いてたがな」



 悠々と向かい合い話してくる触手の生えた球形の肉塊――狂気の魔王、ヴァーンズィン。

 策に嵌められたことは理解しているが、怒りは別に湧いてこない。

 今の状況は、ライトにとっても好都合だからだ。


 邪魔が入らない、一対一で完全ではない魔王ならば、勝機は十分にあると、確信しているから。



「王を冠す者、取り分け俺達『八彩鉱王』と『六天魔王』のメインウェポンとでも言うべき、王法(ケーニヒ)を俺との戦闘で使ったのは、王気が感じられたのは、"お前だけ"だったからな」

『そこまで言うのならば、分かっているのだろうな』

「こっからは、唯の推測だが、復活したお前らには何かしらの封印が付いてる。それが解けてるのは今の所お前だけってところなんだろ?」

『良い目と思考回路を持っている、やはり王の座に、それも黒の座に選ばれるだけの才覚はもっているか。ならば、私も本気で行かなければ』



 ヴァーンズィンがそう言うと同時に、奴の特徴的な一箇所に集まっている眼球が、バキバキと音を立てて砕けていく。

 その変化は、明らかに眼球のものではなく、全く別の何かだった。



「それ、眼球じゃなかったのかよ……」

『当然だ、私にはそもそも眼球など存在しない。必要ないのだから』



 無くなった眼球の場所に現れたのは、一枚の鏡のようなもの。

 だが、明らかに鏡ではなかった。滑らかな鏡面のように見えるが反射はしていなく、映っていたのは真っ黒な空間とその中心で脈動する心臓。


 瞬間、右側から何かが叩きつけられ、吹き飛ばされる。



「――ッ!?」

『『狂気が潜む反逆の心臓ルナティック・ハートグラス』私の相棒だ』

「チッ、"六王武装"か。そんな真正面に出してるとは思わなかったよ」



 受け身を取り、何にやられたかと見てみれば空中に黒い穴が開いていた。

 どうやら、あの鏡モドキは六王武装らしい。恐らく、その力を使った攻撃なのだろう。

 六王武装は、『六天魔王』の主武装、見た目上の象徴とでも呼ぶべき武器だ。


 しかし、ライトは笑みを浮かべる。



「だけど、その六王武装には致命的な弱点がある」

『ほう?私達の武装について詳しく知っているような口調だな』

「知ってんだよ。俺には、世界を見通しているような蛇もんでねっ!!」


《黒剛彩王-虚の理-神罰執行-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》


―――蛇剣舞・変異:虚空幽冥(コクウユウメイ)()四陣黒蛇(シジンコクダ)



 イグニティを振り下ろすと共に、狂気の周囲に四体の黒蛇が出現し突撃する。

 けれども、それは狂気には届かなかった。


 空間にぽっかりと開いた穴に黒蛇は吸い込まれてしまう。



(何だ…一体どんな能力なんだ?巳蚓魑に似てるけど、巳蚓魑は現力及び術は収納できない、それが可能な異空間収納って線で攻めるか)

『防げる、というのなら防いでみよ。己が技をな!』



 上空に無数の穴が開き、そこから大量の黒蛇が溢れ出す。

 予想だにしない能力に、流石の彼も動揺した。



「おいっ、マジかよっ!?」(収納じゃなくて、吸収複製かっ!)



 ライトは、六王武装全ての能力を聞いていた訳ではない。

 というか丁度『狂気が潜む反逆の心臓ルナティック・ハートグラス』だけまだ聞かされていなかった。



「けど、武装の能力で複製されてんなら、大丈夫だ!」



 彼は、虚空から"鎖"を取り出した。

 見ているだけで気持ちが悪くなる、そんな鎖だ。


 黒い鎖が唸り伸び、彼の周囲を囲み半円球を作り出す。

 幾度の地面が揺れ、その攻撃の壮絶さを知らせる。


 攻撃が、止んだ後に鎖に隙間を作り出した。その隙間からイグニティの刀身だけを出す。



―――蛇剣舞・変異:水蛇(すいだ)流尾(りゅうび)黒迅走(コクジンソウ)



 剣先から黒い液体が生じ、高速で飛翔し狂気へと向かう。

 また先ほどと同じように穴が開き吸い込もうとするが、その直前で液体が曲がり唸って回避する。

 そこからは、ライトと狂気の操作勝負だ。


 空に黒い円が現れ、黒い軌跡が描かれていく。



「そろそろか――黒迅走、開放」

『――っ!?』



 突如、軌跡が爆ぜて空間を黒く染め上げる。

 彼は別に遊んでいた訳ではなかった。狙いは、直接当てずとも、狂気の近くに軌跡を描くことであり、そうすれば攻撃が可能だったからだ。


 鎖が縮み唸り、ライトの右腕からイグニティの刀身までを覆うように巻き付く。



『何故だ、何故貴様がそれを持っている!それは、ラスターハルトの武装だっ!!』

「さあて、何でだろうな?俺も何であるかは知らん」

『返してもらおう、黒よ』

「よく言えるねぇ」



 真正面に黒い穴が現れ、赤黒い触手が貫かんと出づる。

 その触手を潜るようにして、ギリギリで避けて鎖の巻き付いたイグニティを振り上げた。



「さっきいっただろう?弱点は知ってるって!」

『グッ!?成程、そういうことか。私達が私達自身で付けた、相互攻撃を無くす性質を利用したかっ!』

「そういうこったぁ!!」



 穴に鎖が触れた瞬間、穴が消えてなくなり、取り残された触手が切断され、ボトッと地面に落ちる。


 これは六王武装にある、俗に言えばフレンドリーファイアを無くす能力によって引き起こされている。

 互いが互いを攻撃しないように、互いの六王武装の攻撃は同じく六王武装で消滅させられるようになっているのだ。

 ヨルから真っ先に教えられた武装持ちの魔王と接敵した時の対応方法だった。

 だが、無効化するには武装の能力又は武装本体との接触が必要だし、武装以外での攻撃は防げない。

 それでも、随分動きやすくなるのは間違いなかった。


 次々と穴が現れ、そこから同じように触手が突撃してくる。

 それをまた同じく避け、穴を消す。

 幸運だったのは、穴が同時に出来上がるのではなく、確実に順々に現れ攻撃してくること。



(複製攻撃は同時に攻撃出来るが、空間接続は連続にしか出来ない。同時だったら、今の状態じゃ防げなかった)

『動体視力と反応速度――ならばこれはどうだ』



 上空に巨大な穴が開き、次々と崩れた建造物が落ちてくる。

 何処か見覚えがあるのは当然で、それらはレギノーの建造物たちだった。



「問題なし」


―――中級時空魔法:テレポート


「これで――」

『――全ては読めている』

「チッ、くぅっ!?」

『片面しか出せないとは言った覚えはない』



 穴を消すため、建造物を出している方の裏側へ転移するが、その裏側からは触手が溢れており、更に上空へと殴り飛ばされる。

 飛ばされた先には、既に触手が準備されており、また殴らえた。

 先にはまた触手が、また、また、また…彼は弾かれ続けるピンボールのように空中を舞い続けさせられる。


 ライトは、少し飛びそうな意識の中、イグニティを握る手の力を抜いて落とす。



「墜ち、ろ」


―――超級重力魔法:超常加過重力アル・グラヴィティエスト



 加速したイグニティが掴もうとする触手を切り裂き、下にある巨大な黒い穴を貫く。

 穴が消滅し、切り離された触手達が落ちていく中、彼は意識を集中させる。



(アイツが、油断している。手を知らない今なら、いける。チャンスはこの一回だけだ)



 策略家な彼は、取っておいた切り札を切ることにした。

 異次元に可愛い死神様に教えてもらった、いや見て盗んだ今の彼だからこそ使える最高の一撃を。

 この瞬間の為だけに、彼は今扱える筈の神性を使わずに戦っていたのだ。


 触手に紛れるように落ち。狂気へと近付く。

 数秒が経つ。後少しで手が届く距離だ。

 意識の全てを右手に集中させ、拳を握り降ろす。

 その瞬間に、



「――それは、困りますね」



 そんな呟きが、妙に耳に響いた。


 刹那、



「――あっ、がぁっ!?」



 自身の右腕と左足が何者かに"引き裂かれ"身体から離れて宙を舞うのが、視界に映った。



◆投稿

次の投稿は4/19(水)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

蛇剣舞・変異:水蛇(すいだ)流尾(りゅうび)黒迅走(コクジンソウ) 突きの拡張で圧縮された王気混じりの水を飛ばす 水は停止以外ならば自由に操作可能 水の軌跡を炸裂させて追撃可能



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