4-24 神を代行し罰を執行する者
「ハアッ!!」
ナイの中に居る水晶へイグニティを振るう。
無情にも、返ってきたのは水晶の見た目とはかけ離れた硬質的な感触と金属音だけだった。
(馬鹿げた硬さだっ、全く砕ける気がしねぇ)
「壊せない――わよっ?それはその器の"神性"をっ――利用した檻。同じく"神性"をでなければ絶対に破壊出来――ああもうっ、話聞きなさいよっ!?」
「悠長に聞くわけがねぇだろ、クソ尼ッ!!」
ライトは、話を聞きながらも幻惑に切りかかっていた。
それは偏に、彼女の近くに何かをしただろう幻惑が近くに居るのが嫌だったからだ。
何をしたのかは正確には彼には理解は出来なかったが、何かしらナイの力を利用して水晶は作られており、普通では壊せないという、重要な部分は理解している。
魔力で身体強化を施し、一気に距離を詰め幻惑を蹴り飛ばす。
「うぐっ!?」
「何故、ナイを狙う」
[ソレハ、ソノ娘ガ神ノ器ダカラダ。神ノ器ガ内包スル"神性"ヲワレラハ欲シテイル]
「さっきから神性、神性って何なんだよ」(それに、ナイが神の器だと?…確かに、そう考えればあのステータス異常は納得がいくな)
繰り出される魔法を切り裂き、攻撃を加えながらも会話をする。
不死の魔法は斬られてライトに届かず、逆に彼のイグニティは骸骨故の身軽さかスルスルと避けられている。
彼は、神の器という言葉の意味を知っていた。ヨルに聞いていたからだ。
タナトスの神の器もあるのだろうか?と考えたことから、少し目立つ感じで頭の中に残っていた。
だが、神性については知らない。
『知らないのか?…さては貴様、新任か?』
「……」
《黒剛彩王-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-回避錬術-怪力》
―――蛇剣舞:嵐蛇激甚斬
沈黙は肯定であると分かっていながら、ライトは狂気を攻撃した。
そのまま素直に答えるのは、癪だったからだ。
唯の嵐が、その身体の表面の肉に傷を付けるが、それだけで被害は収まり、即座に再生されてしまう。
『そうかそうか、なればこそ、その弱さも納得出来るというもの。私達が戦った王は、真に非道という言葉を体現した者だった。断じて、貴様のような半端な強さではない』
「っ!」
プツリ、と彼の中の何かが切れたような気がした。
別に彼は、元々他者からの評価など気にしてはいない。最近こそ、ヨルの契約の為多少は気にしているがそこまでだ。
彼にとって重要なのは、自身と他者の差だけであり、他はどうでもいい。
差こそが自と他を分けるものであると信じて疑っていないから。
そして、無意味に他者から評価を突き付けられることを嫌う。
「ああ…そうか、俺が弱い、半端か…そうかそうか」
「ヴァーンズィン、アンタ何か踏み抜いたっぽいわよ」
[気配ガ変ワッタナ]
『これだから、黒は面倒なのだっ!!』
《狂気魔王-狂気の理-武術・邪道:神級-触烙奇手-不倶戴天-破壊砕衝動-天賦-絶腕-狂乱》
―――六魔王法:狂壊・我王冥衝閃
空間が震え、狂気から数時間前に放たれたものと同じとは思えない程に、力強い紅き破壊の砲撃が放たれる。
同時に、ライトの身体から黒い魔力が迸り、バチバチと弾けるような音を立て始めた。
「――今こそ、使うべきだ」
(タナトス様、貴方の力を借ります。俺に、あの死に損ない共を殺す力を)
ニヤリと笑う、この世のものとは思えぬ程美しいゴスロリ服の神様の顔が浮かぶ。
王は、迷うこと無く、その言葉を口にした。
―――神罰執行
巻き起こったのは、力の爆発。
視認できる程の"灰色"の力が、紅き破壊を喰らい尽くした。
「う、嘘…これって、この気配はっ!?」
[今ノ不完全ナワレラニハ、手ガ余ルゾ!]
『"神性"知らないと言っておきながら、持っているとはっ…やはり、新任と言えども黒は黒ということか!』
瞬間、ブンッと風が切られる音と共に、ライトの周囲で巻き起こった土煙が吹き飛ばされる。
彼の様相は少し変わっていた。
漆黒の髪は、一部分が灰色に変わっており、右の瞳には髑髏の紋様が刻まれている。
コートにも灰色のラインが入り、右肩には『Thanatos』の文字、左肩には、鎌のような模様。
後ろのいつもウロボロスの紋様が描かれている場所には、元の紋様の空いている真ん中に髑髏の紋様が描かれていた。
そして、その身が纏う雰囲気と力の質が大きく変わっていた。
「魔王共…こっからは、俺の時間だ――」
「――はっ―――アギィ!?」
―――収納・巳蚓魑
「遅ぇ」
[クッ、離レロッ!!]
《不死魔王-不死の理-魔法・邪道:神級-確定確立-魔導深淵-叡智-月蝕-背理-悪意》
―――天級毒魔法・邪道:壊毒苦殺爆陣
唯地面を蹴って、幻惑との距離を詰め、イグニティで肩口から右腕を切断する。
それを再生されないように即座に巳蚓魑へと仕舞い込んだ。
濁った紫色の魔法陣が地面に形成され、爆発するようにドロリとした毒が溢れ出す。
それに半ば浸かった彼は、動揺していない。
イグニティの刀身に灰色の幾何学模様が走る。
「学べよ、骸骨」
《黒剛彩王-虚の理-神罰執行-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-聡明》
―――虚の理:≪猛毒支配法則≫
―――虚の理:≪構成変化≫=神毒
―――虚の理:≪状態凝固≫
溢れた毒が刀身へと集束していく、集まり切った刀身は当然いつもよりも一回りほど大きくなる。
毒々しくも妙な光沢を持ったその刃を不死へと振るう。
濃密な魔力で作り上げられた、障壁が張られるが構わず振り下ろす。
『馬鹿がっ!?魔力障壁で防ぐな!!』
「――死ね」
『――間に合えっ!』
《黒剛彩王-虚の理-神罰執行-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》
《狂気魔王-狂気の理-武術・邪道:神級-触烙奇手-不倶戴天-破壊砕衝動-天賦-絶腕-狂乱》
―――疑似・神術:害悪を降す死毒蛇刃
―――六魔王法:死地の先、猛れ我が魂
灰色の軌跡を描きながら、不死を斬り伏せる予定だった刃。
しかしながら、彼の思い描いた結末には至らなかった。
不死の真下の地面に穴のようなものが空いたと思ったら、その時には既に狂気と入れ替わられていた。
イグニティは、巨大な狂気の肉を三分の一程度斬り半ばで止まってしまう。
丁度狂気の眼球らしき部分に触れたところでだ。
その眼球に紫電が走る。
―――六魔王法:狂烙・我王天衝波
「不味い」
―――虚の理:≪脱兎の如く、避ける時≫
開けた空中からの見下げる視界に映るのは、先程よりも格段に広範囲に被害を及ぼしている赤い雷の波動。
生半可な距離の転移では、アレをまともに受けていたことだろう。
地面へとゆっくりと落ちていく、撫でる風が思考を冷ます。
ライトは、今までの短い生の中で一番力が溢れ、全能感というものに浸かっていた。
詳細のよく分かっていなかったスキルだが、どうやら加護を受けた神の力を一時的に借り受けるらしい。
当然、そんなもの常人には耐えられる訳もない。王になる資質のある彼だからこそ、こうして生きていられる。
それでも、思考が鈍る程の陶酔感は感じていた。それが今、落ち着いたようだ。
「雑に攻撃したからあんな風になるんだ。気を付け……ん?気配がない」
自分を戒めているところで彼は気づいた、狂気以外の魔王の気配が消えていることに。
先の攻防により本当にレギノーは壊滅しているのと、何故か瘴気も無くなっていることから魔王の気配を十全に探れるのだが、それでも感じ取れない。
「ちっ、逃げられたか」
恐らく、狂気が囮になり、二体は逃げたのだろう。
一時的に強くなっている状態だからこそ、自身の未熟さが分からされて、嫌になる。
「なら、今出来る最善を尽くす」
再度覚悟を決めて、彼は地面へと降りた。
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次の投稿は4/17(月)です。
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◆技解説
魔法技録
天級毒魔法・邪道:壊毒苦殺爆陣 対象の周囲を爆発させ周囲を毒で溢れさせる
虚の理:≪状態凝固≫ 支配下にある液体状態のものを強制的に凝固させ個体にする
虚の理:≪脱兎の如く、避ける時≫ 使用した瞬間又は直後に行われる攻撃を予測解析して最適な場所に転移する 使用時に思考加速
スキル技録
神罰執行 加護を受けている神の力を借り受ける 常人では力に耐えきれず死んでしまう 任意選択可能 時間制限あり
疑似・神術:害悪を降す死毒蛇刃 神気を纏わせた剣による大上段からの振り下ろし 攻撃と共に神毒以下複数の毒を流し込む 対魔物・瘴気特効
王法技録
六魔王法:死地の先、猛れ我が魂 使用者が仲間と認識し且つ視界内に居る者と現在位置を交換する 交換後十秒間に受けた損傷を十秒後完全に再生させる
六魔王法:狂烙・我王天衝波 王気を圧縮収束させて解放して扇状に波動を放つ 触れた王気以外の現力を破壊する 触れた生命の機能を破壊する 精神体にも攻撃可能




