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4-22 暴虐を為せ、それは王を冠す者に許された所業



 二択を選び終え、覚悟を決めたライト。



「じゃあ、早速やってくか」



 イグニティを正眼に構え、深く息を吐いて自身の内へと集中させる。

 湧き上がる力を掌から漏らし、刀身に纏わせるようにイメージする。


 そのイメージ通りに、溢れ出した黒き王気が、イグニティの銀河の刃を漆黒に染め上げた。



「ふぅ〜ここから更に…」


《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-聡明》


―――天級虚魔法:倍々技偽鷹揚(ラララ・ラグミー)

―――天級音魔法:音無き殺人鬼(アントーン・キラー)



 形成された黒い魔法陣と半透明の魔法陣が刃に重なると、その表面に白いバツ印と消音マークが現れる。

 それを見て、笑みを浮かべながら、彼はイグニティを振り下ろす。



《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明-会心》


―――蛇剣舞・変異:嵐蛇激甚斬(らんだげきじんざん)()黒嵐戦雷(コクランセンライ)



 黒の混じった翡翠色の斬撃が放たれる。

 斬撃は、そのまま真っ直ぐ思えば、突如として二つに分かれた。

 そして分かれた斬撃が分かれ、増え、増え、鼠算式に増えていく。


 物体に触れた斬撃は大きく渦を巻き、雷を放つ黒き嵐へと変化して猛威を振るう。

 増えた斬撃によって同じように増えていく黒い嵐が、瘴気を巻き取り、都市の建造物を破壊し人間を取り込んでは、粉々にしていった。

 だが、そんな惨劇を起こっているにも関わらず、音は一切していない。

 建物が崩れる音も、人が潰れる音も、風の吹く音も、全てがないのである。

 何もないかのように、音だけは平穏だ。



「違和感が半端ないな。けど、有用には違いない」



 これは、彼の魔法の効果だった。


 にしてもだ、ライトの顔には、人を殺している後悔や苦しみは見えない。

 そも、別に彼は他人を殺すことに罪悪感は抱いていなかった。この世は弱肉強食だと理解しているからだ。


 では何故、この行動を渋っていたかと言うと、理由は二つ。

 一つは、矜持。実はこの矜持、恐らく皆様が考えているようなもんではない。

 ライトの矜持とは、ある意味ヨルの教えとも言えるもので「他を巻き込まず、己が力だけで全てを結してこそ最強」というもの。

 他人を巻き込むこと、それ即ち彼自身が未熟だと証明するのと同じなのである。

 だから彼は、渋った。別に他人を殺すことに抵抗があったわけではない。


 ライトは『一人の命の価値が時に、何千もの何万もの命の価値を上回ることだってある』と言った。

 これの意味は、自身の未熟さの証明(大勢の命の価値)から()逃げる(取る)のとナイの命の価値を取るか、では彼女の命の方が、自身の矜持よりも勝っている、高い価値だということだ。

 彼は最初から見ず知らずの人間の命なんか勘定には入れていなかったわけだ、全く怖いね。


 二つは、ナイのことを考えて、だ。

 彼女は、言動こそアレだが心は優しく温かみに溢れている。

 故に彼女を助ける為に他人を殺したとなれば、悲しんでしまうと思ったのだ。

 実際にそうなった場合、彼女悲しむであろう。しかしそれはライトの予想していた悲しみではないだろう。

 きっと、その時彼女が心を痛める理由は、”愛する男の手を、自らのせいで血に染めさせてしまった"というところだろうな。


 結局彼は覚悟を決め、一時的に矜持を捨てて、ナイの心の穴埋めも自分でするとし、行動を起こすことを選んだ。

 その覚悟があるからこそ、彼の王は暴虐を為す。



「まだ、足りないか」



 そう、ぽつり呟く。それもそうだろうと言える。

 レギノーは要塞と呼べる程に大きく頑強だ。今の攻撃で破壊できたのは、精々全体の四分の一程度なのだから。



「移動して、次を放とう」



 ゆったりとした足取りで、瓦礫と死体の上を進んでいく。




 まだ壊れていない方面へと近付いた所で、乾いた発砲音が響く。

 ライトが胸に軽い衝撃を受けると同時に、金属音が下からなる。

 下を見れば、一発の撃たれたであろう弾丸が落ちていた。

 それから、何が起きたかすぐさま理解した。


 もう一度ならず、次々と発砲音が響き。

 無数の軽い衝撃が彼を襲う。



「ふ〜む、催眠で敵対者を攻撃しろとでも命令されてるんだろうな。にしても助かった実弾式なら何の問題もない」



 発砲音の原因は当然銃だった。

 建造物の影から現れた軍服を着た男達が、彼へと銃を乱射していた。

 ヨルの服のお陰(せい)で、欠片も攻撃にはなっていない。少し音が煩いくらいだ。

 催眠のせいだとおもいつつも、解除なんて出来るわけもなく且つ面倒なので、彼はイグニティを構える。



「恨んでくれんなよ、雑魚共ッ!!」


《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明》


―――蛇剣舞:蜿蜒長蛇(エンエンチョウダ)



 漆黒を纏い、柄から切っ先へウネウネとしている蛇の模様が現れたイグニティを水平に振るうと、イグニティの刀身が"伸びて"鞭のようにしなる、しなっているにも関わらず触れたものを一切合切、斬り分かつ。

 上半身と下半身が綺麗に分かれ、地面へと音を立てて倒れる。

 同時に、柱を切られた建物が倒壊していく。



「フゥー!爽ッ快ッ!!」



 この男、こんな状況でも十分に楽しんでいるらしい。

 刀身が元に戻る。

 辺りには、血液の鉄臭い匂いが広がっている。



「さて、どっちの方向に攻撃したものか…」



 早々に雑魚のことは思考から追い出し、次の行動を考えるライト。

 化け物精神力は健在だ。



「あっちのデカいタワーがある方か、こっちの店の多い方か…う〜む、どっちでもいいしタワーの方――っ!…何だ、今の」



 次の攻撃方向を決めたその時、知らなくもないような、それでいて強力な力の波動を感じた。

 いつ前に感じたのかは思い出せないが、何処からその力が発せられた場所は正確に把握していた。

 店の多い方向にある、大規模商店の馬鹿デカ倉庫からだ。


 直感に従い、そこへと彼は駆け出した。

 


「――ビンゴッ!おいおい、馬鹿なんじゃねぇか?気配がダダ漏れだぜ」



 近づけば、その気持ちの悪い魔王共の気配に直ぐに気付くことが出来た。

 何故か、ここ周囲一帯には瘴気が何故か無く、ぽっかり穴が空いたような状態になっていた。

 理由なんて、彼には今どうでも良い、気配が分かる、その結果だけが重要だった。


 下衆めいた笑みを浮かべ、魔力を脚へと流し、建物の壁を蹴り上げ屋根の上に登る。



「キーッキキッ、馬鹿丸出しの魔王共、喰らえ!」



 屋根を蹴り飛ばし、更に高く上がり空中で、漆黒に染まった刃を振り下ろす。



《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-暴虐非道-偽詐術策-回避錬術-怪力-聡明-会心》


―――八彩王法:黒剣は、極星を墜とすイオルム・ステラエンド



 極大の斬撃が、倉庫へと降り斬った瞬間、黒い爆発が起こり、倉庫を吹き飛ばす。

 倉庫跡の瓦礫の上へと降り立つと、黒い流れに何とか耐えている魔王達が居た。


 そんな異形達へ、彼は



「――俺の『姫様』、返してもらいに来たぜ?魔王共」



 と、そう気色満面の笑みで言った。



◆投稿

次の投稿は4/12(水)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

天級虚魔法:倍々技偽鷹揚(ラララ・ラグミー) 倍加状態を付与する 無機物にのみ付与可能 付与後の攻撃一回のみに有効

補足:倍加状態 攻撃を鼠算式に増やし続けるバフ 増えれば増えるだけ本来の威力から減衰していくが追加効果はそれに当てはまらない 増えるよりも早く攻撃がぶつかった場合にはそれ以上増えない

天級音魔法:音無き殺人鬼(アントーン・キラー) 消音状態を付与する 無機物又は生物に付与可能 付与後一定時間効果継続

補足:消音状態 行動の音を消すバフ この状態が継続する限り付与された対象によって生じたあらゆる音を発する事象は消音される


スキル技録

蛇剣舞・変異:嵐蛇激甚斬(らんだげきじんざん)()黒嵐戦雷(コクランセンライ) 切断力の極めて高い風の刃を飛ばし刃が切断又は接触した地点に雷を伴う黒い嵐を生成する 崩壊・回復阻害・裂傷効果あり

蛇剣舞:蜿蜒長蛇(エンエンチョウダ) 剣の刀身を伸長させ弾性を付与する 技終了後伸長は元へと戻る 弾性は元の性質の邪魔をしない



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