4-19 魔の王を冠す者達
新たに現れたのは、一箇所に集まった無数の眼球が特徴的な赤黒い肉の塊、つまりグロい。
と、茶色のそこら辺にありそうなローブを着た骸骨、つまりは地味。の二体だ。
「…最悪だ」
しみじみとライトはそう呟く。
新たに現れた二体は、イルズィオーンと同じく吐き気を催すような瘴気を纏っているのは同じだった。
しかして、感じる力の強さが段違いという言葉では足りない程に、隔絶した差があったのだ。
『意識があるか、やはり頑丈だ』
[アレ程ノ才ナラバ良イ駒ニナリソウダナ]
「アンデットにする前に私に寄越しなさい、存分に痛めつけてから返すわ」
[ソレハ出来レバ遠慮シタイナ、素体ニ傷ガナイ方ガ作業ガシヤスイ]
「何ごちゃごちゃ言ってやがる。駒になんかなんねぇよ!」
《黒剛彩王-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-回避錬術-怪力》
―――蛇剣舞:蛇螺刃風
居合の構えを取り、即座にイグニティを振う。
一陣の風が吹き、三体を切り刻――まなかった。
分かりきっていた、だがこれ程までに容易く防がれるとは思っていなかった。
三体の周囲には薄緑色の結界が張られていたのだ。
魔力の質からして、骸骨の魔法だろう。
[名乗リノ前トハ、礼儀ガナッテイナイナ]
『私もその前に攻撃したのだが、どうなんだ?』
[……気ニスルナ]
「何、軽口叩いてやがる」
イグニティを構え直し、敵意と戦意を漲らせてライトは三体を睨む。
それを見た骸骨がケタケタと笑う。
[良イ気概ダ。ワレハ『六天魔王』ガ一人、『不死の魔王』シェーデル。生ケル者ヨ、ソノタノ蛮勇ヲ讃エヨウ]
『私も『六天魔王』が一人、『狂気の魔王』ヴァーンズィン。一つ提案がある、聞く気はあるか?』
「提案、だと?」
『そう、提案だ』
狂気の言葉に彼は怪訝な顔をする。
そもそも、口の無い肉塊がどのように喋っているのか疑問しか浮かばないが、それは考えるだけ無駄なのだろう。
警戒を緩めないまま、彼はまだ理知的そうな狂気の言葉に耳を傾けた。
理知そうな狂気とは、これまた言葉として矛盾しているかもしれない。
そうする内に、僅かに脈動した狂気の後ろから、『触手で拘束されたナイ』が現れた。
瞳は閉じられていた。恐らく気を失ってるのだろう。
「ナイっ!?」
『動くな、この器を今直ぐ捻り潰しても良いのだぞ』
「くっ」
ライトは、深く後悔する幻惑の相手に集中しすぎたせいで、ナイが背後から消えたことに気づかなかった己に。
ギリッ、と血が出そうな程に歯を食いしばる。
彼女為とは言え、動けない自身への怒りがふつふつと沸く。
「それで、提案って?」
『簡単なことだ。この器さえ私達に渡せば、貴様の命は助けてやる。とそういう提案だ』
「器って、何だ?」
『貴様が知る必要はない。理解すべきは、この貴様にとって大切な少女が、器だということだけ』
「……」
『貴様は何も分かってない。この器がどれだけの力を秘め、何の為に作られた存在なのかを。貴様程度が持つに相応しくないものであると――』
「――黙れ」
[ホウ?]
尊大な言葉を放つ狂気へと、彼は迷いの一つも無く、その言葉を返した。
格上であることは、疾うに理解している。しかしそれだけで、物怖じする程、この男の精神は柔ではない。
その態度に不死は、驚く。
「器?訳の分からないことを言うな。例えナイが、何か特別な存在だとしても、そんなの関係ねぇんだよ。普通に怒り、普通に泣いて、普通に不安になり、普通に我儘で、普通に笑う。何処も変なんかじゃない、唯の女の子。そして、俺の大切な大切な仲間だ。俺が、守ると決めた女なんだよ」
『……』
「端から、お前らの提案なんて受けるつもりは、無い。ナイを、返してもらう……後だ、ナイは物じゃねぇ、魔王共」
向けたイグニティの刃を、降ろすことはない。
覚悟を決め切った、黒い瞳が魔王達を射抜く。
『……――』
瞬間、"拘束されていたナイが握り潰された"。
グチャリと音を立てて、血と肉が飛び散り彼女は物言わぬ肉片えと変わってしまう。
だというのに、ライトは動揺していなかった。
「下っ手くそな幻影だな」
「っ!?だから何であんたっ!?」
「下手だから、それ以外に無いな。誰が騙されるのか」
[ヤハリ、良イ素質ヲ持ッテイルナ]
『イルズィオーンの幻影は、この世界でもトップクラスだ。確かに才があると言えよう』
そう、彼は拘束されていたナイが幻影だということに気付いていた。
狂気が喋っている最中に、ほんの一瞬、瞬きよりも早くだが、拘束された彼女の魔力が幻惑と同質のものに変化したからだ。
「というか、確かにナイは俺にとって人質になり得る大切な存在だ。だが、口ぶりからして、それはお前らにとっても重要だろ?なら、簡単に殺すわけがねぇ。実質的に、ナイの安全は保証されているって訳だ」
「全く、本当に頭の回るガキね」
「それはどうも…『六天魔王』、かつて『八彩鉱王』に負けた筈のお前らが、何故復活しているのか。俺の知ったこっちゃねぇが。俺の女に手を出すなら…例え魔王だろうが容赦はしねぇ」
[何故、ソコマデ知ッテイルノカ不思議ダ。殺シタ後ニ、ソノ記憶調ベサセテ、モラオウッ!!]
《不死魔王-不死の理-魔法・邪道:神級-確定確立-魔導深淵-叡智-月蝕-背理-悪意》
―――神級毒魔法・邪道:陥落融解の厄毒死竜
禍々しい紫色の魔法陣から現れたのは、超巨大な竜の形をした毒の塊。
大きくその翼を広げ、地面を溶かし侵しながらライトへと迫る。
この規模の魔法を一瞬で発動させるのは、流石魔王としか言えない。
だがしかし、使った魔法が悪かった。
毒という分野に於いて、彼の右に出るものは、それこそ神か何処かの最強しか居ないのだから。
《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-偽詐術策-聡明》
―――虚の理:≪猛毒支配法則≫
[何ッ!?]
「喰らい尽くせ!毒竜!!」
彼の言葉に従い、毒竜は翻り魔王達へと向かっていく。
不死は、自身の魔法が支配されたことに驚愕する。
当然、迫り来る毒竜に何も対処しない奴らではない。
『――問題無い』
「――そうはいかねぇよ」
《狂気魔王-狂気の理-武術・邪道:神級-触烙奇手-不倶戴天-破壊砕衝動-天賦-絶腕》
《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-偽詐術策-聡明》
―――神級武術・邪道:壊滅仙輪・嘲る冥星
―――虚の理:≪構成変化≫=神毒
狂気の周り無数の赤い輪が現れ、毒竜を殲滅せんと唸る。
対してライトも何もしない訳もなく、毒竜が黒々しく変異した。
それを見た幻惑が叫ぶ。
「シェーデルッ!!転移よ!アレを受けるのは不味いっ!!」
[了解シタッ!]
《不死魔王-不死の理-魔法・邪道:神級-確定確立-魔導深淵-叡智-月蝕-背理-悪意》
―――神級時空魔法・邪道:テクニカルワープ・ショートカット
「本当に、運が悪いねぇ!!」
《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-偽詐術策-聡明》
―――虚の理:≪時空支配法則≫
[ナッ何故ダ!?]
「シェーデル何してるのっ!?」
[魔法ガ発動シナイノダッ!]
『不味い、私の後ろに来い!』
魔法が不発に終わり、ワタワタとしている二体の前に狂気が出る。
本当にライトとしては運が良かった、彼の扱う領域の魔法であったから出来たことだ。
「ヴァーンズィンッ!!その毒は不味いわ、それは神すら蝕むっ――」
『私ならば、問題ないっ!』
黒い毒竜と狂気が衝突した。
◆投稿
次の投稿は4/7(金)です。
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◆技解説
魔法技録
神級毒魔法・邪道:陥落融解の厄毒死竜 即死級の毒を竜を模して対象へと飛ばす 溶解・腐食効果あり 自動追尾
神級時空魔法・邪道:テクニカルワープ・ショートカット 『未使用の為、未開示』
虚の理:≪猛毒支配法則≫ 毒に属する使用者が認識したものを意のままに操る 時間制限なし 現力消費なし
虚の理:≪構成変化≫ 支配・制御下の物体や現象を属するものの枠を出ない範囲で構成を変化させる 変化させる時間が短かったり元の状態とかけ離れたものだと変化後の性能が落ちる
虚の理:≪時空支配法則≫ 時空に属する使用者が認識したものを意のままに操る 時間制限なし 現力消費なし
スキル技録
神級武術・邪道:壊滅仙輪・嘲る冥星 闘気を輪状にして操り対象を粉砕する 耐性貫通・精神汚染&破壊効果あり 手動制御




