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4-15 森から嫌な気配、奇怪なる化け物



 ナイとライトが互いに胸の内を吐露してから、一週間が経った。



「ライト、嫌な予感がするわ」



 昼間、唐突に彼女がそう言う。



「どっちからですか?」

「前に、肉塊を討伐した森の方からよ」



 ライトは、彼女の言葉を疑うこともせず、真面目に聞き返す。

 それには、明確な理由があり、彼女の勘は妙に当たるのだ。

 彼は、それを彼女の種族特性なのではないかと思っている。



「向かいましょう。また、あの肉塊が現れたかもしれませんし」

「結局あの肉塊についてはあまり分からなかったのよね?」

「ええ、そうです。竜を使った混成獣(キメラ)なのは分かりましたが、他は混ぜられ過ぎている上に、僕の知るどの方法でもない作り方をされていました。どうすれば、あそこまで混ぜ合わせた生物が生命活動を維持できているのか理解が出来ません。でも、確実なのは、あの肉塊は"作られた"存在だってことです」



 専門家ではないが、可能な限りの知識と能力であの肉塊を解析した結果、上記のことが分かった。

 彼が、その時ほどの嫌悪感を覚えたのは久しぶりだった。


 さっと、二人は準備を整える。



「行きますか」

「ええ、準備万端よ」



 二人は、『ドローレ』を出ていった。




 門を出ようとした所で、見知った顔に声を掛けられる。



「おや、ライトくんにナイちゃんじゃないか。これから、探索かい?」

「トーラスさんですか、いえ探索というよりは、見回りに近いです」



 声を掛けてきたのは、トーラス。この都市で初めて出会った、そして唯一真面目に名前を覚えている人間だ。

 トーラスは、この都市の防衛副官という立場故に、いつも何処かの門に居るため、結構合うことが多かったりする。

 意外と忙しいらしい。


 そんな彼は、ライトの言葉に疑問を抱いた。



「見回り?どういうことだい?」

「いえ、何か嫌な気配というか予感というかと感じまして、少し森の方に行ってこようかと」

「それは、勘、かい?」

「はい、勘です。けど、あながち外れてもいない気がします。最近は何かと魔物の動きも活発ですし」

「そうかい、なら気をつけてくれ。妙なことがあったら報告してくれると助かる」

「では、僕たちは行きます」

「ああ、気をつけて」



 二人は、門の外へと歩いていく。

 そんな二人を、トーラスは意味有り気な笑みと忌々しそうな目で見ていた。







瘴気(ミアズマ)が濃い。明らかな異常ですけど、長居は危険ですね」

「気持ちが悪いわね、今すぐにお風呂に入りたいわ」

「我慢してください、この異常の原因を片付けてからです」

「分かってるわよ」



 薄紫色の霧と言うほどではないが、薄い煙が地面少し上を漂う、前に訪れた時は全く違う様相の森が歯科に広がる。

 煙の正体は、瘴気であり常人ならば恐らくこの森に入っただけで身を侵されてしまうだろう。

 二人は素の体でも大丈夫だが、安全策を取り魔力で体を覆うことで、被害を防いでいる。



「これじゃ埒が開かないわ、ライト何かない?」

「あります。これはさっさとやった方が良さそうですし、早速――」


―――(しめ)()つける探蛇(たんだ)



 掌から半透明の蛇が上空へと飛び出で、弾ける。

 周囲の空間の情報、広域に居る魔物の状態から風や魔力、そして瘴気がどちらから流れて来ているかという、目などでは手に入れることが出来ない情報が脳へと流れ込んでくる。

 異常のせいか情報が多く、彼の許容出来る情報量ギリギリだった為、一瞬視界が眩み、体が傾く。

 すると、ナイに支えられた。



「何かないかと言ったけど、無茶をしろとは言ってないわ。気をつけなさい」

「すみません、思った以上に情報が多かったようです。それで、恐らく原因はあっちですね」

「どうしてかしら?まあ、貴方のその不思議な術と言われたら終わりなのだけれど」

「まあ、それも正解ではあります。けど、根拠はあります。瘴気がそっちから流れてきているんです。然も、風の流れに逆らってまで」

「ということは、瘴気を出している原因が、そっちにあると考える方が適切ってわけね」

「そういうことです」



 手に入れた情報から、行動を決める。

 再度、二人して歩き進む。瘴気の流れてくる方へ。




 歩くこと十分。

 明確に、視界の邪魔になる程、瘴気の煙は酷くなっていた。



「これ以上は、このままだと不味いですかね。ナイはどうですか?」

「別に何にも無いのよね。よく分からないけど、多分魔力を纏ってなくても大丈夫だわ」

「本当に、ナイは謎生態してますよね。一体どんな種族なのか」

「人を珍獣みたいな言い方しないでくれる?ライトも同じようなものじゃない」

「そう言われると、返しづらいですねっと」


《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明-天啓》


―――八彩王法(ファルべケーニヒ)王の外套(レクスオーバー)()黒虚(ヴァニタス)



 全身から溢れた黒き王気が、漆黒の外套と化し、ライトの身を包む。



「それは?」

「僕の力で作った、まあ一種の鎧みたいなものです」

「ひらひらだけど?」

「大丈夫です……」



 言われればそうだよな、と思いつつも、性能は問題ないので、頷いておく。


 刹那、瘴気の波が二人を襲う。

 咄嗟にライトは、ナイを抱いて守る。



「っ!?――危ないっ」

「ライトッ!何が――って、そういうこと」



 彼女を抱いたまま横に跳躍し、転がる。

 体勢を整え、彼が跳躍した原因たる存在を見る。



「前よりも気持ちが悪い。一体こんな趣味の悪い怪物、誰が作ってやがんだ」



 居たのは、肉塊の上を行く奇怪なる化け物。


 骨の巨人、ならばそんなことは言わない。

 10mを優に超える骨の巨人、その心臓部には禍々しさを詰め込んだ無数の口がついた球体があり、その口それぞれから巨大な赤紫色の触手が這い出ている。

 触手が骨に絡みつき、ほぼ全身を覆っており剥き出し筋肉のようで、嫌悪感を催す。

 そして、全身から瘴気を溢れさせており、森の異常の元凶なのは間違いようがなかった。



「愚痴は後よ、薄気味悪い場所にずっと居る趣味はないわ。片付けるわよ」

「了解。それで作戦は、どうする?」



 イグニティを虚空から引き抜いて構え、巨人に目を向けながらライトは問う。



「ワタシがよく通る属性を探すわ、それまで時間稼ぎをお願い。探し終わったら、一緒に一気に叩く。これでどう?」

「いいね乗った!そんじゃ、時間稼ぎと行きますか。遅すぎて、俺が先に倒しても文句は言うなよ?」

「寝言は寝て言いなさい。ワタシを舐めないで」

「そっかそっか、じゃあ安心してやってくれ。ナイは、俺が守る」

「期待してるわ」



 外套を翻し、彼は強く駆け出す。


 こんな状況に見合わず、月は綺麗にイグニティの刃を照らした。



◆投稿

次の投稿は3/31(金)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

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