4-13 都市散策、邪魔者には拳を
それから数分。
「成程ね、それで隠したいってわけね…納得だわ。理の管理者なんて大変ね」
「別にまだ正式な命令を受けたり、仕事をしている訳ではないなので、分かりませんけどね」
「あら、そうなの」
『八彩鉱王』の説明をライトは終えた。
聞き終わった後のナイは、彼を優しい目で見ていた。
その身に背負うことの重大さを記憶喪失でも理解できたからだろう。
「何にせよ、バレたら困るのは理解できたわ。だから、ワタシは喋らない。そこは安心して」
「別に心配してません。姫様はそういうところしっかりしてますから。事情を話せば、分かってくれると思ってました」
「…それで、ワタシに買う物は決まったかしら?」
「ええ、当然です」
話しながらも店内を見回り彼女の要望通りに、彼女に似合うアクセサリーをライトは探していた。
ありがちだが、平均的にハードルの高いその要望を何とかこなす為に、正直殆ど意識は、アクセサリーの方へ向いていた。
「コレとコレのどっちかにしようと思うんだけど、どっちがいいですか?」
「ふ〜む」
ナイの眼の前に出したのは、ブレスレットとペンダント。
ブレスレットは、流星をモチーフにした金と紫色がメインのもの
ペンダントは、星座盤をモチーフにした金と青色がメインのもの。
その2つを前に、彼女は頭を悩ませる。確かに両方共抜群なセンスであり、美しくも今の彼女に合っていたが故に選び難かった。
彼女が選んだのは……。
「両方共って言うのは駄目かしら?」
「そう言うと思ってましたよ」
どちら共だ。結局は選ぶことができなかった訳である。
ナイの言葉を半ば予想していたのか、ライトは特段驚くこともなく、二つ買うことを了承した。
彼女は、何かに気づいた様子で彼の顔を見る。
「もしかして、どっちも買うって最初から決めておきながら、敢えて選択肢があるように出したりしてないわよね?」
「さあ?どうでしょうね。僕はご注文通りに姫様に合うアクセサリーを選んだけですし」
「はぁ……全く」(当たりね。何でそこで素直にならないのか…ま、それもライトの魅力よね)
問いに対してはぐらかすライトを見て、彼女は自分の考えが当たっていたと知る。
少しだけだが彼の掌の上で踊らさせられたと思うと、仄かな悔しさが込み上がってきた。
そそくさと会計を済ませて来たライトが戻ってくる。
「買ってきましたよ、姫様。自分で着けますか?それとも僕が――「貴方が着けなさい」――デスヨネー」
「ほら早く、ブレスレットから」
「分かりましたよ」
一応聞いたが、返答は分かり切っていた。
購入したブレスレットを包みから出し、彼女の右手を取る。
留め具を外し、手首に巻いてから再度留める。
「いいわね、次はペンダント、よろしくね」
「では、後ろに回ります」
「いや、前からやりなさい」
「え?それだと体が密着――」
「――いいから、や・り・な・さ・い」
「はい……」
ペンダントを着ける為に後ろに回ろうとすると、何故か止められ強制的に向かい合う形で着けさせられる。
彼は、言われた通りの形で彼女の首にペンダントを回す。
そも、どうして彼がこの形を避けたかと言うと、別に恥ずかしいからとかではなく、単純に着けづらいからである。
彼女の体があるが故に、首裏が見えにくくて面倒なのだ。
無理に見ようとすれば、体が密着する為、こちらは恥ずかしいので止めようとしていた。
状態に苦労しながらも何とかペンダントを着け終わる。
「よし、着け終わりまし……これが狙いですか」
「あら、何のことかしら?別に仕返しなんてしてないわよ?」
「それ、自白と同じなんですよね」
ライトが離れようとすると、彼の首と腰に手が回され、行動を阻害した。
ナイのその行動から、彼女の思惑を直ぐに読み取った彼は、抗議の視線を送るが、彼女は何処吹く風だ。
しかし、彼は今の状況の不味さに気づいていた。
「姫様、此処まだ店内ですよ?店員から凄い視線が飛んできてます。傍から見たら、唯抱き合ってるだけですし、当然ですけどね」
「っ!?――っとと、済まないわねライト。ちょっと倒れそうになったから。体を借りただけよっ」
バッ、と凄い勢いで彼女が離れた。白い肌は首まで朱くなっている。
どうやらそこまで気は回っていなかったらしい。
「さあっ、行くわよライト。ずっと留まっていると店に迷惑になるわ」
「ええ、そうですね、姫様」
言うが早いか、そそくさと足早に出口へと進むナイを、ライトは笑みを浮かべて追いかけた。
少し歩いて。
「全く、ああゆうのは気づいたら直ぐに言いなさいよ」
「僕には、姫様の行動は予測出来ない訳で、あれでも早い方だと思いますかけど?」
「くっ、やっぱり貴方は一枚上手ね」
悔し気ながらも、楽しそうな彼女。
彼女がそのような顔をするからこそ、彼は彼女への意地悪を止めはしない。
次は何をしようか、と聞こうとしたところで不意に声をかけられる。
「――そこのイカした嬢ちゃん、そんなガキと一緒に居ねぇで、俺と遊ばね?」
その声に二人は同時に顔を歪めた。
振り返れば、一人の人間の男が、下衆染みた笑みを浮かべてこちらを見ていた。
典型的に面倒臭いナンパである。
因みに、説明し忘れていたのだが、この都市には人間"しか"居ない。
どれだけ探しても人間以外の種族は発見できなかった。
それがこの界全体でなのかは、彼らの知るところではない。
「ワタシ、貴方みたいな軽薄な男、嫌いなのよね。さっさと消えてくれる?」
「おおっと、そういうタイプかい。嫌いじゃないねぇ」
ナイのストレートな言葉に、男は笑みを深める。
「だったら、コイツはどうだい?抵抗しないなら、手荒なことはしないぜ」
「はぁ、直ぐに脅し、馬鹿の典型みたいね、貴方」
男が取り出したのは『銃』。全体が真っ黒な拳銃、回転式ではなく自動式のだ。
この都市の人間は、銃をよく扱っている。人界では見なかったこともあり、武器オタクに半ば足を突っ込んでいるライトは、直ぐにその構造と仕組みを解析した。
今では彼も一流の銃士ではあるが、イグニティや魔法の方が火力が出る為使ってはいない。
(魔力は感じない。つまり魔弾式ではなく、実弾式の銃。なら脅威になりませんね)
この都市の銃は、二種類あり、それが魔弾式と実弾式だ。
実弾式は、皆様の世界の物と大して差はない。
魔弾式は、その名の通りに魔法の弾を撃つ銃、銃の内部や外部に魔術式が刻まれており、魔力を込めるだけで撃つことができる。
予め刻まれた魔術式の魔法しか撃てないが、込める魔力が多ければ多い程に威力が上がるという単純な強みを持つ。
「面倒よ、ライト、さっさと片付けなさい」
「手伝ってはくれないんですか?」
「だってそこの雑魚なんて、貴方一人で過剰戦力じゃない。それに、そんな穢らわしい人間には近付きたくもないわ」
「はいはい、分かりましたよ」
ライトが気にするのは、魔弾式の銃のみ、実弾式は何の脅威にもならない。
「言ってくれるねぇ。残念だ、その体に傷を付けたくはなかったんだが……先ずはガキ、死ね」
バンっと、音が響き銃から弾丸が放たれる。
その弾丸が、ライトの胸を貫く――ことはなかった。
「は?」
「これだから、実弾式は駄目なんですよ。威力が低すぎる」
服の表面で、止まり地面へと落ちる。
そう、実弾ではヨル製の服を貫けないのだ。だからこそ、実弾式の銃は彼の脅威に成り得ない。
「そ、そんなわけっ!?」
「何度やっても無駄ですよ。あと序でにですが――」
「なあっ!?」
複数回、銃音が響き弾丸が放たれるが、服の表面でやはり止まり地面へと落ちて、金属音を鳴らすばかりだ。
すると、ライトは撃たれた弾丸の一つを"手で掴む"。
男は驚きで口が塞がらない。
「それに、実弾式は弾が遅すぎます、何でこんな物を使うんでしょうね」
「素で弾丸を掴めるのは多分、此処ではライトだけだと思うわよ」
「…そうかもしれませんね」
「――ふざけるなっ!こんなことがっ、あっ、あれっ」
男は、引き金を引こうとするが、引くことが出来なくなっていた、スライドが後退したままになっている為である。
それが意味するのは、弾切れだ。
「実弾式は、弾数も限られますし、多く持とうとすれば重い。全く理に適ってません」
「く、クソッ!!」
男は、やけになったのか、殴りかかっている。
当然そんなもの、通用するわけもなく、容易に男の腕を掴むライト。
そして、地面に男を叩きつけた。
「普段なら、気絶で済ませるんですけど、今日はそうも行きません」
「ひっ」
「今は、デート中だったんですよ。その邪魔をした代償は大きい」
ライトは、拳に魔力を籠める。
そして、良い笑みを浮かべ、
「――俺達の邪魔すんじゃねぇよ」
勢い良くその顔面に拳を叩き込む。
「じゃあ、デートの再開と行きましょうか」
「そうね」
一通り、男をボコボコにしたライト。
さっさと、邪魔者のことは脳内から追い出し、二人はデートを続行した。
◆投稿
次の投稿は3/29(水)です。
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◆蛇足
語り部「銃って何で人界じゃ見ないんだ?」
蛇の王「銃という物が広がっておらず、単純に魔法の方が火力が出るのもあるが、一番は大量生産するほどの金属を安定して手に入れることが出来ないことじゃな」
語り部「作るのに色々と苦労しても、別に普通の物だと大した威力にならないからってことね」
蛇の王「そうなるな」
語り部「てことはさ、奇界ではそれを解消されているから作らっれていると言っても良いよな?」
蛇の王「ああ、そうじゃ」
語り部「一体何処から金属を供給してるんだ?」
蛇の王「それは既に登場しておるではないか、生ける金属たちが」
語り部「成程、魔物から取っているのね」




