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4-10 実践に勝る経験無し

少し短いです。



 あれから三日、要塞都市レギノーの東部にて。


 そもそもの、レギノー周囲の環境説明。

 北部には、ライトが転移しナイと出会った謎のダンジョン森。

 西部には、ナイに魔法の指導を行った平原があり、そのずっと先にはまた別の都市があるとか。

 南部には、魔物だらけの山岳地帯、これを越えた奥には海があるらしい。

 そして現在地、東部には異常性の無い広大な森が広がっている。



「さてさて、来ましたよ姫様。実践、行きましょうか」

「いや、急にステップ上がり過ぎじゃないかしら?」

「実践に勝る経験無し、師匠の弁ですが、あながち間違って無いと僕は思ってます。なので、姫様にもそれを強要します」



 馬鹿みたいに遠い、最強の座に立つ師を思い浮かべながら、ライトはナイにそう告げる。



「……嫌な師を持ったわ」

「でも、その分強くはなれますよ。ぬるま湯に浸かってる凡人共なんかよりも、圧倒的に。……リスク無しに強くなれる程、この世界は甘くありません。止めたいなら、無理強いはしませんけどね」



 げんなりと嫌な顔をする彼女に、彼は譲歩の言葉を掛けた。

 その瞬間、彼女はキッと彼を見返す。



「馬鹿にしないでくれる?ワタシに記憶は無い。けど、それでもワタシはワタシなの。そして、ワタシは自分で決めたことを曲げるのが嫌い。ワタシがワタシである限りね。だから、やるわよ。やり遂げて見せるわ」

「……それでこそ、姫様です。そんな姫様のやる気に答えて、スパルタに指導してあげますよ」

「……嵌められたわ」



 彼女の言葉を聞いた、今のライトはさぞかし"良い"笑みをしていたことだろう。



―――(さそ)()せる幻蛇(げんだ)


(まさか、僕自身が自分の意志でこれを使う日が来るとは、驚きです)



 掌から紫色の光球が現れ、弾け飛ぶ。


 刹那、周囲全方位の地面から、振動が伝わってくる。

 それは、まるで森が動いているかのように感じられた。



「ら、ライト、大丈夫なのよねっ!?」

「はい、心配する必要はありません。姫様はただ只管に、『僕に抱えられながら』魔法を打ち続けてください」

「え?――ちょ」

「敵も状況も待ってくれませんよ」

「ねぇこの抱え方恥ずかしいんだけどっ!?それに、ライト武器持ってないじゃないっ!?ねぇっ!?」



 ナイは、焦り動揺した、魔物が急に迫ってくる現状に。

 それを更に加速させたのは、ライトの抱え方だ。

 今彼女は、彼に所謂お姫様抱っこの形で抱えられている。

 恥ずかしさもあるが、それよりも大きかったのはこの状態だと、心配不要だと言った彼自身が武器を持てないことだ。


 叫ぶような彼女に対して、彼は至って冷静だった。



「だから、大丈夫ですって。さっきはああ言いましたが、今回姫様にはリスクは殆どありませんから」

「ほ、本当よねっ!?」

「はい、安心してください……来ますよ」

「分かったわ!」



 数秒後、樹の枝を飛び移りながら異形が迫る。視界にそれを捉えた。

 見た目は、異常に首の長い猫というところだ。眼球は赤黒く染まり、口が左右に大きく裂けており、怪物であることは調べずとも分かる。



「長化け猫です。姫様、炎魔法です」

「燃えなさいっ!」


《疑神暗戯-終末的退廃理論-傲慢不遜-魔法》


―――中級炎魔法:ブラストファイア



 飛び掛かって来た化け猫を後方への跳躍で回避する内に、彼女の生み出した炸裂する炎が放たれ、化け猫の全身を焼いていく。



「これくらいなら、余裕ですね」

「ええ――ライトッ、後ろっ!」

「分かってます」


《黒剛彩王-回避錬術-怪力》



 背後から襲って来た無数の針の雨を、魔力を籠めた脚を強く振り、風圧で針を全て吹き飛ばす。


 新しく攻撃してきたのは、金属質の鱗で全身を覆った数十匹の蜥蜴達。

 因みに、針は全て口から吐き出している。毒は無い。



「ニードルリザードですか。然も数が多い、どうしますか?姫様」

「こういう時は、確かっ、これよっ!!」


―――上級毒魔法:ポイズニアスモッグ



 暗い紫色の魔方陣から、毒々しい煙が溢れだし針蜥蜴たちを包み込む。



「流石、正――ちっ、面倒臭いのが来ました」

「しっかり全部避けないさいよ」

「当然、です!」



 新たに現れたのは、無数の骨が無理矢理に固められたような怪物。

 ただの動く骨、スケルトンのようなものならば、あまり問題は無いかったのだが、此処のはそうも行かない。


 最早、それは骨の壁だった。

 名を骸々骨鬼(スケルトロス)と名付けられた、周囲の骨を集め纏め己が身体と化す怪物だ。

 骸々骨鬼は、攻撃が単純だがそれ故に厄介な存在である。

 その攻撃とは、



「――っと、はっ、よっ」

「ら、らいとっ、視界がグルグル回ってイメージが乱れるっ、もう少し優しく動きなさいっ」

「この避け方だとそうなりますか」



 自身の身体たる無数の骨を飛ばすというもの。

 速度と感覚が凄まじく、それらは銃の弾丸に引けを取らない。


 だからといって、ライトが避けられない道理はない。

 華麗に舞いながら、全てを回避する。のだが、ナイにとってそれはかなりの負荷だった。

 ジェットコースターなんかの比にならない程の可動具合なのだから仕方がないとも言える。


 しかしそれでは、いつまでも戦いが終わらないので、ナイが落ち着けて集中する時間を作ることにした。



「なら、こうしましょう」


―――(つつ)(まも)風蛇(ふうだ)



 風が渦を巻くように二人を球形に包む壁と化す。

 骨の弾丸は、風の壁の表面を滑るようにして全てが外れるていく。



「姫様、骸々骨鬼を倒すのに最適な魔法は何でしょうかね?」

「そうねぇ……多分、これかしら」


―――超級重力魔法:超常加過重力アル・グラヴィティエスト



 彼女が形成した灰色の魔法陣が霧散すると同時に、ポキポキポキ――と軽い骨の折れる様な音が重なって大量に響いた。

 骸々骨鬼の居た方を見ると、周囲の地面ごと粉々のペシャンコになっている。



「正解です。骸々骨鬼は別に耐久力自体は高くありませんからね」

「ふふっ、当然よ。これくらい簡単よ――っ!?ライト……――変な気配を感じたわ」

「僕もです。流石にこれは、姫様には荷が重そうですね」



 二人は、同時に先程までとは明確に違う、不快な気配を感じ取った。

 即座にライトはナイを降ろし、イグニティを虚空から取り出して構える。



「何が来ても、手助けはするわ。やりなさい、ライト」

「了解です、姫様」



 瞬間、木々を薙ぎ倒しながら、その怪物は現れた。



◆投稿

次の投稿は3/26(日)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

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その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

中級炎魔法:ブラストファイア 炎弾を放ち被弾した対象を爆発させる


上級毒魔法:ポイズニアスモッグ 指定した範囲に毒を含む煙を放ち留める 毒の効果は変更可能



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