4-8 どっちもどっちで壊滅的
要塞都市レギノーの西側に位置する平原にて。
「――くっ、僕の……力、不足だ」
ライトは膝を突いていた、その強敵に。
試行錯誤し何度も何度も挑んだが、全てに於いて失敗した。
尽くせる手は……もう、ない。
「ねぇ、ライト……」
そんな彼に影が落とされる。
影を落としたのは、最近知り合った少女。
だが、救いの手を差し伸べてくれることはない。
何故なら、彼女こそがこの惨状の元凶だからだ。
「どうして、どうしてなんだっ……何故こうも運命は残酷なんだっ」
嘆こうとも、現実は変わりはしない。
「全く分からないわ、しっかり教えなさいよ」
その、絶望を押し付ける言葉に、遂に彼の心は爆発してしまう。
「――ああっ!!無理だっ!!もう無理なんですっ!!姫様には戦闘の才能が"壊滅的"にありませんっ!!もう何度も何度も言ってるのに、何で出来ないんですかっ!!意味が分かりませんっ!!」
「貴方の教え方が悪いのよ、きっと……そんなに出来ない筈ないわ」
「何の根拠があってそんなこと言ってるんですかっ!?姫様の動きなんて、そこら辺の子供よりも劣ってるんですよ!!この運動神経カスッ!!」
「何よっ!!大体アンタの教え方雑なのよっ!!ここにバチッと電流が走るようなイメージとか、こうグッと力を籠めるとか馬鹿じゃないっ!?擬音と指示語が多くて分かりずらいったら仕方が無いのよっ!!感覚で出来るってなんなのっ!!」
レギノーに着いて一週間、文字を教え終わり常識や軽い知識を勉強し終わった二人は、今度は戦闘系の勉強に入った。
その結果がこの惨状を生み出した。最初のは、ちょっと大袈裟に言っただけである。
何があったかと言うと、武術系の技を試す前に軽く動いたのだが、ナイは壊滅的に運動神経が悪かった。
一応、無理矢理にスキル技を使う様に指導したのだが、それがまた最悪。
今度はライトが、壊滅的に指導力が無かった。
彼は元々天才肌なので何でもかんでも基本的には感覚で出来てしまう、その為教えるのが下手なのだ。戦闘系には、それが顕著に出たらしい。
指導をするという経験をしていないのもあるが、それを差し引いても酷いと言える。
今回の件は、どちらも悪かった、どちらも自身の非を認めようとしないからである。
数分間、言い合いは続いた。
「「はぁ、はぁ……」」
「…………」
「…………」
息を切らし、言葉が途切れると、一旦双方の思考が落ち着き冷静になる。
そのまま、数十秒沈黙が辺りを支配する。
「その、すみませんでした。言い過ぎました」
「ワタシも、少し熱くなってしまったわ。ごめんなさい」
「……でも、運動神経はありませんよね」
「……でも、教え方は下手よね」
「「ぷっ、くくっ」
互いに謝罪し、小言を言う。
そのやり取りに可笑しさを感じた二人は、思わず笑ってしまった。
「もう一回頑張ってみましょうか」
「ええ、そうね」
「……いえ、やっぱり魔法の方に入りましょう。近接系が単に向いていないだけかもしれませんので」
「確かに、そうした方が良いわね」
ナイが身体を動かすのが苦手な可能性、というか事実を受けて、運動の関係無い魔法の指導をすることにした。
それはきっと、良い判断だ。
(でも、確か姫様って武術スキル持ってませんでしたっけ?)
―――盗み見る探蛇
ライトは、確認の為に術を使う。
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名前-ナイ 性別-女 年齢-□□
種族-□□□ ジョブ-□□□□□□□
レベル-0 ランク-G,F
称号-『□□□□』
スキル-疑神暗戯,狂気恐悦,被害現実,傲慢不遜
-終末的退廃理論,蜜愛之果実
-魔法,武術
加護-□□□の加護
状態-正常
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(やっぱり、そうですね。けど、改めて見ると読めない以外にも変なとこ一杯ありますね、このステータス)
「ライト、どうかした?」
「頭がどうかしたか、という意味であれば違いますが、それ以外ならありましたよ」
「何それ?変なこと言ってないで、ハッキリ言って」
「では……」
そこでライトは、本当にステータスの異常について伝えても良いのか?と悩む。
彼女は、当然その異常に気付いている訳で、この行動のせいでまた新しく何か異常が起きてしまうのではないか、と嫌な想像が頭を巡る。
(やっぱり、伝えた方が良いですかね)
彼は、振り切って覚悟を決めた。
―――明かし見る探蛇
「きゃっ…これ、何?」
「姫様のステータスです」
「これが?」
怪訝な顔をして、彼女が現れたウィンドウを見る。
「ちょっと待って?ステータスってスキルか専用の魔道具がなきゃ見れないんじゃなかったの?」
「僕がそのスキルを持っているので」
「ああ、成程」
ライトがあっさりとステータスを見せて来たことを不思議に思ったらしいが、その後の言葉で直ぐに納得して、視線をウィンドウに戻した。
ナイからしてみても、それもそうかという感じだったのだろう。。
「全然見えない所ばかりなのだけれど」
「その時点で、既に異常なんですよ。参考までに、僕のステータスも」
―――晒し見る探蛇
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名前-ライト・ミドガルズ 性別-男 年齢-17
種族-黒魔 ジョブ-神罰代行者
レベル-1862 ランク-A
称号-『黒塗』『黒剛の王』
スキル-最純二択,黒剛彩王,神罰執行,蛇王蛇法
-世界開闢言語理論,悪逆非道,暴虐非道
-偽詐術策,回避錬術,天啓,怪力,聡明,会心
-虚の理,杖術:天級,剣術・蛇道:上級
加護-彩王の守護,蛇王の加護,死神の加護
状態-正常,契約×2
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「これがライト……」
「あれ、何かスキル増えてますね。有難いです」
比較対象が無ければ、どういう風に変なのかが説明できない為、彼は自身のステータスも出した。
相も変わらず、レベルの上りは少ないがスキルが増えていたので、喜んだ。
「こうして見ると、全然違うわね」
「率直に言うと、姫様のステータスは異常だらけです。先ず、レベルが0でしょう?」
「そうね」
「それは、『あり得ない』ことなんです」
「どういうこと?」
ライトの言葉に、首を傾げる彼女。この世界の女は首を傾げることが多い。
そんな彼女に見惚れることもなく、彼は告げる。
「通常どんな生物でも、生まれた瞬間からレベル1なんですよ」
「それは妙ね」
「いえ、妙なのは姫様です」
「そうだったわ……」
「記憶喪失だから、というだけな理由では僕は無いような気がしてます。まあ、勘ですが」
だが、その勘が馬鹿にならないことを、彼自身が知っている。
「次に、ランクの所ですGって書いてますよね。これ、僕も見たことが無いんです。横のFは征管局のランクだとすると、もっと不自然なんです。そもそも、生まれた時からはランクには何も通常書かれてませんし」
「G…何か思い出せそうな引っ掛かりを覚えたけど、分からないわ」
「無理をする必要はありませんよ」
「ありがと、ライト」
少しだけ、曇った顔をしたナイに、ライトは優しく声を掛ける。
彼女に無理はしてほしくない、という気持ちに嘘は無い。
「次、姫様の方に魔法と武術のスキルがありますよね」
「あるわね」
「じゃあ、僕の方を見て下さい、○級というのが付いてませんか?」
「付いてるわ、普通は付いているものなの?」
「その通りです。付いていないのは見たことがありませんでした」
「どういうことなのかしらね?」
「僕に聞かれても、です」
逆に聞かれた彼女の問いに、彼はお手上げという風な仕草をする。
別に専門家でもない彼に分かるわけも無いのだ。分かるのは、それが異常だということだけ。
「最後に、この見えない部分についてです」
「やっぱり普通は見えるのよね?」
「当然です。スキルなどで隠蔽されている場合にも、見えないことはあるんですけど、その場合は全体的に見えなくなります。特定の場所だけ完全に見えないのは、変です」
「そう……ワタシ、変なのね」
ナイは、大きく肩を落とす。
別に、批判されている訳では無いのだが、お前は変だと言われるのは、精神に来たようだ。
その様子を見たライトは、フォローをする。
「変じゃありませんよ、僕は今の姫様が好きです。それに、この程度気にする必要ありません。変さ加減なら僕も負けてませんしね」
「何よ、それ……でも、ありがと」
「いえいえ、これくらいしか言えませんから」
彼女が笑顔を取り戻す。それだけで、作戦は成功だった。
「さて、ステータスの話はこれくらいにして、魔法の指導に入りましょう。今度は、もっと分かりやすく教えます」
「期待しないで頑張るわ」
「そこは期待して下さいよ」
「ふふっ、嫌よ」
先程よりも楽し気な雰囲気で二人は、指導を再開することにした。
◆投稿
次の投稿は3/24(金)です。
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◆技解説
蛇王蛇法技録
明かし見る探蛇 対象のステータスを見る スキル-隠蔽または同効果の魔道具の影響をある程度貫通する 他者へ強制開示
◆蛇足
語り部「こういう言い合いをするのって、無かったよな」
蛇の王「仕方あるまい、我の場合はそもそもその状況にならぬし、ミスティの場合も性格や性質的に起きる訳が無い」
語り部「そういう意味では、ナイは貴重な要因だな」
蛇の王「属性の違い、という奴だ。色々な者が増えることは良いぞ。様々なプレイが出来るからな」
語り部(プレイ…?)




