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4-7 起きて誤解、始める学習





「……ん、んぅ……朝、ですかね……?」



 何ともライトにしては、スッキリしない目覚めだった。

 理由は、朧げな思考でも直ぐに理解し、思い出すことが出来た。



「ああ、そう言えば……この界には…朝、がない……んでした……」



 正確には、『太陽が存在しない』である。

 これは、昨日の内に出来る限り調べたことで、奇界の通常はずっと夜らしい。

 代わりに月が二つあり、若干サイズが違うそれらによって時間の経過を判断するらしい、まあ普通に時計はあるのだが。



「くぅ~起きますか……あっ」



 身体を起こして、伸びをし思考を晴らす。

 そうした後に、横に手を置くと髪に触れた、自身のではない。

 視線を横へと向ける。ナイが寝ていた。


 この部屋は、元々一人用の部屋だ。ベッドは大きめのが一つあるのみ、だから前話で言った通り一緒に寝ることになった。



「……ぁぇ、らいと?」



 彼が起きた振動か、髪に触れたせいか。彼女が起きてしまう。



「おはよ……」

「おはようございます、姫様」



 所々跳ねた髪、トロンとした焦点の合っていない瞳。

 如何やら、まだ目覚め切っていないようだ。

 ふらついて、ベッドに倒れてしまいそうな彼女をさり気なく支える。



「らいと…」

「何ですか?」

「ぎゅっとして」

「え?」



 やはり、頭が働いていないようで、変なことを言われる。



「だからぁ、ぎゅっとしてって、いってるの…めいれいよ、げぼく」

「え、あぁ、はい。まぁ、分かりました……失礼します」



 本当に良いのか?と思いつつ、まあ命令されたしいっか、ともしもの時はそれで言い逃れしようと決めて、ナイの背中に手を回して引き寄せた。

 ご注文通り、彼女の身体に痛みが走らない程度にギュッと強く抱き締めた。



「ふぁ~…あったかい、あんしんするわ、らいと」

「そう、ですか……」



 耳元で妙に艶めかしく感じる甘い声が聞こえ、ライトの身体が強張る。

 その間に、彼女からも手が回され、抱き締め返された為、離れられなくなった。


 ……そのまま数分が過ぎた。ライトの手も足も痺れて来たので、声を掛けることにした。



「姫様、もうそろそろ良いんじゃないですか?止めません?」

「ん?……――はぇぁっ!?ちょっと、何してるのライトッ!?」



 目が覚めたらしい。

 凄い批判的なナイは、彼に凄い批判的な目を向ける。


 勝手にも彼を突き飛ばし、ベットの上だが距離を取った。



「こっこのヘンタイッ!ほ、本性を現したわねっ!期待して信用した私が馬鹿みたいだわっ!」



 矢継ぎ早に罵倒をしてくる彼女に、ライトは呆れた目を向ける。

 その様子に、何かを感じたのか、一旦彼女は言葉を止めた。



《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明》


―――天級音魔法:絶対音響遮断結界サウンドリア・アブソリュート


「抱き締めろって言ったのは、姫様ですよ?何でそんなこと言われなきゃいけないんですか」

「そ、そんなことある訳ないじゃないっ、貴方が勝手にしたくてしたんでしょ!いくらワタシが可愛いからって、このヘンタイッ!」

「はぁ……姫様、ちょっと手を貸して下さい」

「嫌よ!今度こそは、何をされるか分からないわっ。くっ、力に物を言わせて、ワタシを犯す気なんでしょ、エロ同人みたいにっ!エロ同人みたいにっ!」

「エロ同人ってなんですか、然も何で二回……はぁ、さっさと手貸して下さいよ」



 ライトの要求を拒否しながら、先程とはまた別方向の変なことを言い出したナイ。

 彼女の声が大き過ぎて、他の宿泊客に迷惑になるだろうと考えた彼は、話をする前に結界を張っておいた。

 その選択は正しかった、もし結界を張っていなかったら、他の客に色々と誤解されて憲兵などを呼ばれてたかもしれない。


 埒が明かないので、ライトは傷付けないようにしつつも、少し強引に彼女の手を掴む。



「嫌、止めてっ」

「大丈夫です。すぐ終わりますから」


―――中級記憶魔法:ログ・トランスミット



 手の上に瞬間的に形成された黒い魔法陣が霧散する。

 すると、彼女の抵抗がピタリと止まった。



「あ、え……い、今のって」

「ええ、僕の"記憶"ですよ、正真正銘に真実の」



 彼が使った魔法は、自身の記憶を相手に伝える魔法。

 それを使い先程、抱擁を命令してきた彼女の様子を直接教えたのだ。


 彼女の口がわなわなと震え始める。



「えと、その……ごめんなさい、勘違いだったわ」

「分かってくれたなら、別にいいですよ」

「ありがとう、ライト」

「だから、気にすることありませんって。それよりも姫様」

「何かしら…」

「朝食を頂きに行きましょう」

「……ええ、そうね」



 二人は、そうして部屋を出て行った。



◆◇◆



 朝食を終えて、部屋に戻って来た。



「さて、どうしましょうか?」

「ライトの目的、この界から元の界に戻るを達成する為には、情報収集からかしら」

「確かにその通りです。図書館でも、あれば良いんですけど、それは探すとしましょう」



 今日の予定について現在話し合っている。


 実は、界間を移動するというのはそう簡単な話ではない。

 正規のルートで移動するのならば、各界に存在する開門都市エデンの『次元の門』を使用する必要がある。

 当然、使用が簡単な訳も無く、数々に審査や紹介状などが必須だ。


 それを理解しているライトは、ゆっくりとやっていくしかないと思っていた。



「そう言えば、姫様」

「何かしら?」

「姫様って字読めますけど、書くのはどうなんですか?」

「……」



 沈黙は、肯定である。

 ふと気になったことだが、聞いておいてよかったらしい。

 ナイは、顔を逸らした。



「駄目なんですね。では、姫様の目的、生きる術を学ぶの為に、先ずは姫様が出来ないことをリストアップしましょうか」

「……分かったわ」

「じゃ、始めましょう」






 小一時間程経った。


 目の前には、一面にびっしりと文字が書かれたA4サイズの紙が。



「ふぅ、これくらいですかね。……にしても、酷いですね」

「うぐっ、しっ仕方ないじゃない。記憶が無いんだもの、何にも分からないのよ」



 大まかに分けて知識系、戦闘系、家事系と纏めて数を出来る限り減らしたのだが、それでもまだかなり酷かった。量が多すぎる。

 まあ、こんなものだろうとライトは予想していた。

 何故なら、



(ミスティだって、同じような感じでしたし、文字が読めてある程度自分で動いてくれるだけ結構マシなんですよね)



 経験があったからだ。

 ミスティアナに関しては、どうやってあの歳まで生きて来たのか不思議に思うくらいに何も出来なかった。

 別に彼女を貶している訳ではなく、そうなってしまうだけの過去があったのだろうとしっかり彼は

理解し、受け止めている。

 だからこそ、全力で彼女を指導した。今では、何処に嫁に出しても問題無いくらいには成長した。

 全く嫁に出すつもりなど無く、権利的には所有物なので一生共に居るつもりだが。



「簡単に今日は文字を書くところから始めましょう。読めるなら、直ぐに覚えられて上手くなるので、初日には最適です」

「レギノーの探索は良いの?」

「はい、正直に言って僕の目的は一昼一夜で達成できるようなことじゃありません。姫様に色々と教えながら、片手間と息抜きに少しずつ進めて行くことにしました。協力、してくれるんですよね?」

「当然よ、ワタシに二言は無いわ」



 問い掛けに対して、鷹揚に頷くナイは頼もしい。

 そんな彼女に笑みを浮かべて返す。



「確認も取れたところで、やっていきますよ。頑張って下さい、姫様」

「ええ、やってやるわ!」



 尚、これからするのは唯の文字の書き練習である。



◆投稿

次の投稿は3/23(木)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

中級記憶魔法:ログ・トランスミット 使用者の持つ記憶を直接触れた対象に伝達する 記憶の伝達量や部分の指定可能 記憶の伝達量が対象の許容量を超えると対象は脳の機能が停止して死亡する



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