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4-6 未知の都市にて、何とかなりそうな感じ



 と、いうことで、要塞のような未知の都市の前に来た二人。


 近くまで来て、その大きさに圧倒される。

 入口たる門へと視線を向けた。



「ねぇ、ライト。あれ、入れるのかしら」

「はい、問題ありません。少し、止まって下さい」

「こう?何かする必要は?」

「特に何もしないでいてくれると助かります。じっとしていてください」

「分かったわ」


―――(いつわ)(かた)幻蛇(げんだ)

 


 ライトの手から生じた半透明の紫色の蛇が、ナイに触れると弾け、その服装を変えた。

 ワンピースから、ライトと同じようなロングコートになっている。



「何、これ?ライトみたいな……あれ?触れないわね?」

「まあ、幻ですし当然ですね。今から、姫様は、僕の妹を演じて下さい」

「へ?」

「僕と姫様の関係は薄いですし意味不明です。兄妹の方がまだ自然ですから。幸い、髪色は似てますし背丈も然程変わらない。多分行けると思います」



 彼が考えたのは、兄妹の旅人作戦である。

 正直に言って、この時点で出来るのは、催眠や洗脳などによる誤魔化しか、偽装のどちらかしかない。

 ならば、確実性の高い催眠系を残しておく方が得策だ。

 偽装でも不自然感さえなければ、大丈夫な筈で無理に強硬手段を取る必要も無い。


 偽装の中でも一番自然な偽装をすることにした、ということだ。

 しかし、門の警備がどのような者であり、どのような検査をするか分からない為、不安要素も多いが現状はこれが最善手だと彼は考えた。


 だが、最大の懸念が残っていた。

 それは、



「嫌よ、そんなの」



 ナイがその作戦に納得するかどうか。

 やっぱりか、とライトは予想していた言葉を聞いて、少しがっくりする。



「でも、これが一番です。他の案だと、ナイが僕の奴隷というのもありますけど、そっちの方が良いですか?」

「もっと嫌よ!ねぇ、何とかならないの?」

「なりません、危険を多少冒すことを加味してみてもこれ以上はありませんよ」

「くっ……」



 非常に苦々しい顔をした彼女が彼を見返す。

 彼としては、既に試行錯誤の結果なので、そんな「この、変態っ」とでも言いそうな羞恥と反抗を孕んだ目で見られても如何することも出来ない。

 逆に、そこまで嫌かと、若干傷ついた。



「し、かたないわねぇ……これだけ我慢するんだから、何かしら埋め合わせくらいしなさいよ?」

「良いですよ。あぁ、あと言葉遣い気を付けて下さいよ、今のままだと不自然ですから」

「が、頑張るわ……」



 ぎこちない笑みを浮かべたナイに、一瞥の不安を覚えながらも、一応は秘策も準備しているのでそこまで気にしないことにした。


 二人へ、入り口まで歩いて行く。

 これだけ大きな門にも関わらず、自分達以外に此処に来ている者が居ないのは不思議に思ったが、今は良いと目の前のことに集中する。


 門の前、深緑色の軍服を着た兵士が複数人見える。

 少し、空気に緊急が走り出す。



「……君たちは、旅人で良いかな」



 近付くと、そう優しく話しかけて来たのは、長身の男。

 他の者よりも、上等に見える軍服を身につけており、更には数個の勲章を胸に付けている。

 暗い青色の短髪、感情の読めない糸目が特徴的だ。


 敵意を感じないことを確かめた後に、ナイを少し自身の後ろに手で移動させてから、ライトは口を開いた。



「はい、そうです」

「あの森を抜けてきたのかい?」

「そうなります」

「じゃあ、何か身分証明になるような物はあるかい?」

「えーと、これって使えますかね」



 そう言いながら、ポケットから自身のAランクの(赤い)ギルドガードを出す。

 すると、男の顔に僅かに驚きが浮かぶ。


 ギルドカードが使えるかは一種の賭けだったが、買ったようだ。



「"レッド"、でしたか……でしたら、森を抜けて来たのも納得です」

(レッド?Aランクをそんな風に呼ぶのは聞いたことありませんが)

「一応の確認として、こちらに翳していただけますか」



 少しだけ改まった口調で、男は手の平サイズの水晶の板のようなものを向けてくる。

 一瞬何かと思ったが、ここで反対しても不自然なので、渋々その水晶にギルドカードを触れさせる。

 水晶が軽く輝き、表面に何やら文字が浮かぶがライトの頭の位置からは絶妙に見えない。


 

「はい、問題ありません。ご協力、ありがとうございます。それで、そちらの方は…」

「えっと、妹なんですけど、まだカードの方は無いので、どうしたら良いですかね?」

「でしたら、東部の征管局にこちらを持って行って下さい。受付にこちらを渡し、誰からの紹介かと聞かれましたら、トーラス防衛副官からと。そうすれば、対応してくれる筈です。」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとう……」

「いえいえ、これくらいならば」



 ナイの身分証明について話すと、手紙のようなものを手渡してきた。

 それを受け取り、感謝を伝える。


 少しの金属音が聞こえたかと思えば、門が真ん中から真横に開く。

 見たことの無い開閉の仕方に、ライトは驚いた。



「ようこそ、要塞都市レギノーへ」

「それでは……あっ」

「何かありましたか?」



 都市、レギノーに足を踏み入れようとしたところで、聞いておいたら良さそうなことを思い出した。

 トーラスの方を向く。



「すみません、お勧めの宿ってありますか?」

「それでしたら――」





◆◇◆





「――ふぅ、何とかなりましたね」

「狭いけど、悪くはないわ」



 都市に入ってから6時間程。

 トーラスの言った征管局へ行き、ナイの身分証明書の発行を済ませた。ギルドカードのようで、何処か違う白いカードを貰った。


 そこから判断するに征管局は、ギルドのような機関だということを知ることが出来た。

 受けた説明も、殆どライト自身が初めてギルドに受けたものと然程変わらない。

 唯一違ったのは、ランクを分ける時に○ランクというのではなく、下から、ホワイト、イエロー、グリーン、ブルー、パープル、レッド、ゴールド、ブラックと色で呼称していたくらいだ。



「このベッド、フカフカだわ。ワタシ、ここで寝るから、ライト貴方、床で寝なさい」



 目についた、真っ白なベッドに飛び乗ったナイが、そんなことを言う。


 此処は、トーラスが教えてくれた一推しの宿『ドローレ』。

 貨幣については、同様だったのでお金には困らなかった。



「宿の代金払ってるの、誰だと思ってるんですか?」

「うっ、そ、それは感謝しているわ」

「そんなこと言うなら、強制的にナイを床で寝させますよ。魔法で床に縫い付けます」

「ごめんなさい、それだけはご勘弁を……はぁ、仕方ないわね。一緒に寝ましょ」

「そうするしかありません。運が悪かったですね、空き部屋が一つしか無いなんて」

「でも、無いよりマシだわ」



 本当は二部屋取るつもりだったのだが、運悪く他の部屋が埋まっていた為に相部屋になってしまった。

 互いに別に嫌悪感を抱いている訳でも無いので、問題は無い……かもしれない。



「それで、これからどうするんですか?姫様、貴方には何か目的があるんですか?」

「無いわよ。だって記憶が無いもの、何で森を出ようとしたのか分かってないわ」

「お手上げですね」

「ライトには、目的があるの?」

「当然です」



 ナイに偶々森に飛ばされたこと、待っている人達がいるので早く戻る方法を探して、戻りたいということ、王についてなどを隠して伝えた。

 聞き終わると、珍しくも腕を組んで彼女は考え始める。


 数秒で終わった思考の後、彼女はライトの目を真っすぐ見た。

 その黄金の瞳には、覚悟が見える。



「ねぇ、ライト」

「何でしょうか、姫様」

「私は、今一人では何も出来ない。だから、私に生きる術を教えて欲しいの。そして、もし貴方が許してくれるのならで良いのだけど、私も貴方の旅に連れて行ってほしいのよ」

「どうしてですか?」

「正直、記憶が蘇る望みは薄いわ。私自身がそれを分かってる。何も無い私には、貴方を頼るしかないの。……それに」

「それに?」



 一通り言い終わった後に、口籠る彼女。

 何度もそれを言おうとしては、止めて、遂には覚悟を決める為か深く息を吸った。



「貴方と一緒に居ると、安心するの……そう、まるで"前にも会ったことがあるみたいに"」

「なんですかそれ、正真正銘に僕と姫様は今日会いましたよ」

「そうよね、でもそう感じるの。だから、お願いライト」

「……はぁ……会って一日経ってない男に、何を言っているんですか」

「…………」



 溜息を吐いて、冷たい物言いをする彼に、ナイの顔が不安に染まる。

 だが、それは要らぬものだった。



「別に、姫様が、命令して下されば、それで終了です。何たって、僕は姫様の"下僕"ですから」

「っ!」



 それは、実質的な承諾。

 満面の笑みを浮かべた彼女は、口を開く。



「じゃあライト、私に生きる術を教えて、貴方に付いて行かせなさい。これは命令よ」

「承りました、姫様。貴方の仰せのままに」

「ふふっ、ありがとう、ライト」

「別に気にする必要はありません。全部僕の意志ですか」



 笑う彼女を脇目に、ライトは隠れて苦笑いをする。



(全く、損な性格してますよね。でも……ナイは、良い笑顔で笑うんですよね。あれの為なら、何だか頑張れます)



 自身の行動に、後悔はしていないが呆れていたのだ。



(先ずは、ヨルとミスティに会った時に、ナイについての言い訳を考えるところからですね)



 そうして、新たな界での時間は過ぎて行く。



◆投稿

次の投稿は3/22(水)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

蛇王蛇法技録

(いつわ)(かた)幻蛇(げんだ) 指定した対象の見た目が想像した別人に見える幻影を掛ける 任意で解除するまで幻影の効果は持続する 唯の幻影なので触れられると違和感が分かってしまう


◆蛇足

語り部「これから、本格的にこの奇界での行動開始ってところだな」

蛇の王「実はまだ奇界に来てから一日経っていないという不思議じゃな」

語り部「仕方ない、導入は長くしなければ」

蛇の王「そんなもの、パパっと済ませてしまえ」

語り部「こっちの苦労も知らないで、これだから蛇王は」

蛇の王「鉄拳制裁!」

語り部「判断が早いっ!?」



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