4-4.5 一方その頃……何か凄いことしてる
すみません、執筆時間があまり無く、少し短いです。
一方その頃。
「――ミスティッ!ライトに何か……」
館の地下で秘密の作業をしていたヨルは、異常な魔力の高まりとライトとの繋がりの遮断を感じ、急いで様子を見に来た。
何やら、大きな音がしていた食堂へと足を運ぶ。
扉を開け、ミスティアナの気配を感じたので、名を呼ぶ途中でその惨状を目の当たりにする。
バラバラになっている家具、砕かれている床や壁、窓はガラスがほぼ全て無くなっている。
誰によって行われたかは明白だった。
ヨルは、部屋の中央で泣き崩れている彼女の下へ歩く。
「……ミスティ、大丈夫か」
「ヨ、ル様、マスターが、マスターの気配が……私、どうすれば……」
(不味いな、やはりライトが消えたせいで、精神状態が不安定になっている。全く、神々は何故こうも我らに嫌な宿命を与えるのか)
髪全体の色が『濁った水色』に変化しているミスティアナは、酷くボロボロで弱々しい。
それを見た彼女は、ギリッと歯軋りをして、天井を――天空を睨む。
ミスティアナに更に近付き、その身体を支える。
(仕方ない、ライトが帰って来るまでは、応急処置をするしかない)
彼女の顎に手を当て、自身の方へ向かせた。
「許せ、ミスティ――」
そして、唇を強引に重ねる。
―――神喰:悲哀之喰楽
それが終わると、驚いてはいるが少し落ち着きを取り戻した瞳がヨルを見ていた。
様子の確認を終えてから、口を開く。
「我では、完全にミスティの不安を取り除き、満たすことは出来ぬ。それはライトにしか出来ぬこと、お主はそういう宿命を持つ存在だ。しかし、何も出来ない訳ではない。一時しのぎではあるが、今のように悲しみを、動揺を、不安を喰らうことは出来るからな。だから、今は待て、耐えろ。我も何とかしてライトの行方を探る」
「ヨル様……ありがとうございます、何とか自分を保てそうです」
「ならば、一度部屋に戻って休むが良い。此処は我が直しておく」
「はい…そうします」
トボトボと歩いて部屋から出て行くミスティアナを見送ってから、彼女は部屋へ向き直る。
―――再事翼蛇=神級時空魔法・変異:非想天の逆巻時計
床全体に魔法陣が広がり霧散すると、部屋や家具が淡く輝き、独りでに動き出した。
それらは、元の場所に戻り、繋がり形へと戻っていく。
数十秒の間に、部屋は完全に修復された。
「さてと、ライトは一体何処に行ったのか、探すとしよう」
直った部屋をすたすたと歩き、ソファーに身体を預けたヨルは、一人そう呟く。
視線を宙に向け、口を開いた。
―――真察賢蛇=ライト・ミドガルズの現在地
彼女の目の前に、一つのウィンドウが現れる。
そこに表示された、彼女の求める情報を見て、額に手を当てた。
「"奇界"だと?一体どうやって……あそこは我でも常時では普通に行けぬ場所だぞ。益々面倒じゃな」
彼らにはあまり見せない態度(当然彼らに見られていないからこそだが)でハッキリと悪態を吐く。
「然も、奇界は他の界とは違い半隔離状態、念話も届かない。……よりにもよって、あの『神々の実験場』なのが最悪だ。あそこには、強さの調節などがされていない化け物が居る。今のライトならば余程でなければ、死なぬと高を括っていたが、あそこはその余程だ」
普段とは違い、今のヨルには少しの焦りが見えた。
そして、苦々しい顔をしている。
「……仕方あるまい、今回の件は我だけでは色々と問題が起きそうだ。手を借りるとするか」
ニヤリと笑みを浮かべた後に、大きく息を吸う。
「『七種覇王へ告げる、今手の空いている者は即座に我が前に現れよ、話がある』」
妙に響く言葉が室内に響く。
変化は直ぐに起きた。
目の前に、翡翠色の鏡のような楕円が出現し、砕け散った。
「――おや、私が一番でしたか。『七種覇王』第四席"精霊の王"ユーフラグリス・ユグドラシル、呼び掛けに応じました」
「ユグドラシルが一番か、まあ妥当じゃな」
「何となくですが、その反応は納得がいきませんね」
そこから現れたのは、中学生くらいの少女。緑が掛かった白髪に極彩色の瞳、自然を思わせる模様の入った民族衣装のようなものを着ている。
ヨルの言葉に、ユグドラシルは少し怒った風に見せるが、それは友人にやるような演技であった。
彼女は、ヨルの対角の位置に座る。
瞬間、閃光が部屋を満たす。
「――おんや?うちが一番かと思ったんやがなぁ。流石にこの手のことではユグはんには敵わんか」
「タマモ、忘れていますよ」
「何を?って、そう言うことかい。『七種覇王』第五席"狐の王"タマモノマエ、呼び掛けに応じました……やっぱりこんや言葉は慣れんなぁ」
「慣れる必要は無いと、我は思うが?タマモはそのままが良い」
「おえ?嬉しいこと言うてくれるやんな、ヨルはん」
新しく現れたのは、長身の女。煌めている金髪、綺麗に上に伸びている狐耳、紫色の豪華な着物は、宛ら花魁のように見える。
ヨルの言葉に、タマモノマエは嬉しそうにその九つの尻尾を揺らす。
彼女は、ヨルの正面、ユグドラシルとは少し間を空けた隣に座る。
「何だか、私の時と反応違いませんか?」
「ユグドラシルは肩肘を張りすぎなのじゃ、もっと気を抜け」
「そうですかね……」
「そう言うとこや、ユグはんは何でもしっかり考えすぎなんよ。うちみたいに、ふらふら~っと気を抜きぃな」
「頑張ってみます」
「こりゃ、重症やなぁ」
ヨルとタマモノマエは、苦笑いをしながら真剣に考え込んでしまったユグドラシルを見る。
そのやり取りは、互いを信用している友人同士のもので非常に温かい。
数秒の後、ヨルは空気を塗り替えた。
「済まぬが、今回は手を貸したもらう」
「そやった、ヨルはんの為に来たんやったな。このタマモノマエ、ヨルはんの頼みなら幾らでも働かせて貰います」
「私も、最善を尽くします」
「恩に着る」
そうして、人知れず館にて、王達の話し合いが始まる。
◆投稿
次の投稿は3/20(月)です。
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◆技解説
スキル技録
神喰:悲哀之喰楽 対象の悲哀に属する感情を喰らう 粘膜接触時効果上昇 捕食度合いは調節可能
蛇王蛇法技録
真察賢蛇 術名後に知りたいことや疑問を述べると即座にその情報を開示する 述べた内容が過去現在未来どのことであろうとも開示に影響はない どんな封印や隠蔽を施されていようと個人の秘密であろうとも開示される
◆蛇足
語り部「ミスティは本当に不安定だよな」
蛇の王「ライトの黒魔よりも、超例外的な存在だからな。そもそも神が直接干渉して、そうではないと定めたものをすり抜けて存在している異常じゃから、不安定な状態は避けることが出来ない」
語り部「つまりはあれってこと?黒魔とか蛇王は、プログラム上で起こり得る可能性のある異常だけど、ミスティは絶対に起きない筈のことが起きちゃってる異常ってこと?」
蛇の王「そういうことになるな。嫌な宿命をじゃよな」
語り部「今後、どう影響していくか楽しみだな!」
蛇の王(こやつはこやつで感性が、異常っておるよなぁ)




