3-25 効率的ナ情報ノ引キ出シ
帝都に帰還した翌日。
ライトは、何処に来ているかと言うと、
「よぉ、元気だったか?『勇者』御一行様方」
「…………」
クロムゾン宮殿の地下、牢屋だ。当然、ミスティアナも一緒である。
区切られ、前面が鉄格子になっている典型的な牢屋の中に、武装を解除され手枷足枷を嵌められた『勇者』達が居た。
その目の前に立ち、ライトは挑発的な言動をする。
「ミドガルズ殿、あまり刺激されては困りますぞ」
「って言ったってよコイツ等が口を割らねぇから困ってるって俺呼んだの、イグニさんじゃねぇか」
「そうなのですが……」
「大丈夫だ。別に壊しもしないし殺しもしない。何とかするさ」
「頼みますぞ」
何故このような場所に、来ているかと言えば、先の戦争で確保した聖国の重要人物たち、及びに『勇者』が全く口を割らない為、何とかしてくれと宰相のイグニ頼まれたからだ。
『勇者』がどうなったのかも気になっていたので、協力することにした。
戦争終了の時点で、ライトの依頼契約は終わっているということで、別途で報酬はくれるらしい。
取り敢えず、ライトはしゃがみ込み、俯いている『勇者』の剣士と視線を合わせようとした。
合わせられないと思ったのだが、意外にも目は合わせられ、その目からは静かな憤怒と嫌悪が浮かんでいた。
「うわぁお、この状況でよくそんな目を向けれるもんだ。いい度胸してるねぇ」
「……お前が、お前の」
「あ?何だって?」
「お前のせいで!多くの人が死んだ!罪の無い人々が!」
剣士が訴え叫ぶ、牢屋がある此処一帯は静かだったからか良く響いた。
その言葉を聞き、ライトは目を鋭くして剣士を睨み返す。
溢れるその覇気に、剣士が怯む。
「はぁ……平和ボケも大概にしろ、ガキが」
《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-偽詐術策-聡明-会心》
―――彩王の覇気・王蛇絢爛
―――彩王の覇気・冥蛇死想
ライトから威圧感が漏れ出し、空間を満たし再度静寂を齎した。
各牢屋の内から、震える様な音が聞こえる。
「この間も言ったよな?アレは戦争、戦争だったんだ。戦争という状況下に於いて、命の価値なんて皆無なんだよ。そもそも殺し合いをする場所なんだからな」
「…………」
「俺があの場で誰を殺したところで、文句も批判もされる謂れは無い。お前、気付いているのか?今お前がそうして居られるのは、俺があの殺してもいい場で、お前を殺さないでおいてやったからだってことを」
「…………」
「大体、お前ら俺一人にやられてるんだぜ?然も手を抜いてやった状態で。それでよくもまあそんな態度でいられるもんだ。お前に、命だ何だ言う資格なんて無いんだよ。だってお前程度じゃ、命を守る処か、奪うことも出来やしねぇんだから」
飽くまでも冷静に、手は出さず、諭すように言葉を紡ぐ。
剣士の勢いが、熱さが消えて行った。
「序でに教えておいてやるが、リソプレーズ聖国と言えば、人間至上主義で有名なんだよ。人間こそ、神々の寵愛の受けた存在だとか宣い、他種族を見下し虐げた。それによって、人間以外の種族は他の二国へ殆ど逃げた。この意味、分かるよな?」
「そんなことっ」
「聞いてない?だろうな、お前らはアイツ等の都合の良いことだけを吹き込まれてる。だが、俺の言ったことは事実だ。帝国や王国よりも、聖国の方がよっぽど悪だ」
「……そ、んな」
「それで罪のない人々が、だと?笑わせるな。アイツ等は罪人だ。お前の話はな、最初から最後まで何一つ筋が通って無いんだよ」
ライトは、己が持つ確かな知識を使い、徐々に剣士の精神を追い詰めて行った。
……筈だった。
「……それでも、そうだったとしても……俺は俺の信じると決めた人達を信じる」
「ちっ……下らない」
改めて見つめ返された瞳には、信念が籠っており、簡単に折れそうには無かった。
内心、ライトはクソ面倒臭いなコイツと、悪態を吐いた。
彼は、剣士のような実直過ぎる者が嫌いだ。
汚い世界を見ようとせず、自分の見える綺麗な世界だけで生き抜こうとする、そんな相手に虫唾が走る。
捻くれているのかも、歪んでいるのかもしれない、けれども彼が見ている暗い世界こそが、本物である。彼はそう信じて疑っていない。
だから、目の前の男が嫌いだ。
だからこそ、そんな精神を壊したくなる。
ライトの口が、酷く歪んだ笑みを浮かべた。
立ち上がり、剣士の直ぐ横の牢へと歩く。
そこに居たのは『勇者』の侍、硬い顔でこちらを見ている。
「……ふ~む、お前じゃ駄目だ」
「っ?」
意味深にそう言い、ライトはもう一つ横の牢へと歩き出す。
侍の顔には、疑問が浮かんでいた。
侍の横の牢には『勇者』の神官が居た。
酷く怯えた表情を向けて来ている。何となく、嗜虐心をくすぐられる表情をしていた。
「お前が適任だな」
「ひっ!?」
言葉と共に、凶悪な笑みを浮かべた彼を見た神官は、顔を恐怖一色に染める。
彼は、同時に空色の魔法陣を手に形成していた。
魔法陣が霧散する。
―――超級時空魔法:スナッチアポーツ
「はい、どうも」
「きゃぁ――う"っ!?」
ライトの手元に現れたのは、神官。
彼女が状況理解して声を上げるより先に、左手を彼女の口に突っ込み発声を塞ぐ。
そして、口に手を突っ込んだまま背後から抱き締めるようにして腕を回し、余計な身動きを取れないようにする。
既に相当ヤバい絵面である。
ライトは、ミスティアナの視線が僅かにだが険しくなったのに気付いていない。
因みにこの神官、結構胸がある。
空いている右手に魂喰剣を取り出す、選んだ理由は丁度良いサイズの刃物だから。
考えることは師弟同じようだ。
その状態になってから、改めてライトは剣士の前に立つ。
―――天級音魔法:絶対音響遮断結界
魔法を使い、他の牢屋の前と音を遮断する。
これは、この後のことの為に必要なことだ。
「お前、カナデに何をする気だっ!?」
「いやぁ、中々口を割らないからさ、別の方向で攻めてみようかと思って、さっ!」
そう言いながら、ライトは魂喰剣を大きな動作で、
「やめろっ!!」
「嫌だね!」
神官の腕に突き刺した。
流石神器と言ったもので、凄まじい切れ味を誇り、腕を容易に貫通する。
「ん"ん"っ"ーーー!!!」
「カナデッ!?」
手を突っ込まれているせいか、くぐもった叫び声を上げる神官。
暴れて逃げようとするが、支援職とバリバリの近接戦闘をするライトとでは、結果を聞かずとも分かるだろう。
ライトは、下衆染みた卑しく愉し気な笑みを、怒り心頭と言う様子の剣士に向ける。
「お前が、素直に口を開かないからだぜ?彼女も可哀そうだなぁ」
「このっ、下衆がっ!!」
「威勢だけは良い、なっ!」
腕から魂喰剣を引き抜き、今度は太腿へと刺す。
声とも言えない叫び声が、また漏れ出した。
剣士が「やめろ、やめろ」と静止を掛けるが、当然止まる訳もない。
愉快という感情が前面に押し出された顔をするライト。
絶対に主人公がしていいことではないし、していい顔でもない。
「早く口を割らないと、コイツが死んじまうかもしれないぜ?良いのかい?『勇者』さんよ」
「くっ、このっ」
「ああ可哀そうだな、お前が口を割らないせいで、お前が黙っているから、お前のせいで!コイツは痛い思いをしてしまう、さぞ怖いだろうなぁ、お前を恨んでいることだろう」
「そんな…ことは」
適当に響きそうなことを言っているだけだが、一気に剣士の熱が弱まり狼狽えている。
こんなもんか、とライトは拍子抜けだ。
この主人公、性格捻じ曲がり過ぎである。
「おいおい、どうした?何も言わないなら、次に行っちまうぜ?」
「……かった」
「あ?何だって?」
「分かった!俺が話せることは全部話すっ!だから、だからカナデを治してくれっ!」
「はぁ……軟弱だな、けど分かった。しっかり、真実を話せよ?今度は、一撃で殺しちまうからな?」
「わ、分かった。絶対にと約束する」
拍子抜け、あっさり折れてしまった剣士にライトは面白くないな、と思う。
ライトは魂喰剣を太腿から抜いて虚空に仕舞う。
―――癒し治す聖蛇
彼の手から生じた小さな輝く白い蛇が、神官に触れる。
すると、一瞬の内に彼が付けた刺し傷と切り傷が消えた。
「治してやった、これで良いか?」
「ああ、助かった……全部、話すよ」
「ちょっと待て」
「え?」
ライトが指を弾くと音を遮断してた結界が消える。
「イグニさん、この『勇者』が話をしてくれるってよ、全て正直に」
「そ、そうですか」
「そっからは俺の仕事じゃない、頼みましたよ」
「ありがとうございます、ミドガルズ殿」
別にライトは『勇者』がどんな状態か確認しに来ただけで、『勇者』の話を聞きに来たわけではない。
話を聞くのはイグニの仕事なので、先は任せた。
―――上級時空魔法:ゲート
転移魔法で神官を牢屋の中に戻す。
状況が理解出来ていないのか、視線をあちこちに彷徨わせている。
「ミスティ、戻るぞ」
「……はい、マスター」
「何かあったか?ミスティ」
「いえ、後で少しお話があります」
「ん?まあ、分かった」
地下から出る為に二人は歩き出した。
ライトは、この時の行動を後悔するだろう。何故なら、ミスティアナからのキツイ追求と非難が待っているのだから。
◆投稿
次の投稿は3/7(火)です。
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◆技解説
魔法技録
上級時空魔法:ゲート 指定した二か所にそれぞれの間を転移させる門を作り出す
◆蛇足
語り部「良いねぇ!流石、タイトルの行動を意識してくれる良い主人公だ」
蛇の王「いや、やっていること唯の悪役では無いか」
語り部「大丈夫、しっかり治してるから、そこらへんの悪役より優しいぞ」
蛇の王「悪役っぽいことは、否定せぬのな」
語り部「まあ、否定はできないだろ」




