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3-24 結果ノ話



 帰還を果たし、クリムゾン宮殿の謁見の間。

 初めて此処を訪れた時と同じ者達が集まっていた。


 クリムゾア帝国皇帝、フレグス・アールヴハイト・クリムゾア。

 宰相、イグ二・フライ。

 真紅騎士団総隊長、アーノルド・エラクト。

 同所属、第一師団長、ボイラック・ゲルクイナ

 第二師団長、キース・ラグット。

 第三師団長、ロット・スライド。

 第四師団長、ニナ・イーフェ。

 第五師団長、オリーブ・オルノ。

 第六師団長、ムルド・ミラー。


 ギルド協会・人界クリムゾア帝国・クリムラット支部ギルドマスター、トゥール・アクアランド。


 そして、Aランクパーティー〈黒蛇白塗(ケーリュケイオン)〉リーダー、ライト・ミドガルズ。

 同じく〈黒蛇白塗(ケーリュケイオン)〉所属、ミスティアナ。


 計12人。



「先ずは礼を言おう。ライトよ、お主の協力により我らは勝利を収めることが出来た。クロムゾア帝国の皇帝として、最大限の感謝を」



 玉座から立ち上がり、フレグスが深く頭を下げてくる。

 皇帝という立場にありながら、戸惑いも無く頭を下げる彼に、ライトは好感を持った。



「ま、依頼ですしね。別に感謝されるようなことじゃありませんよ。貰える物貰えるなら、何も問題はありません」



 この場に居た、ライトとミスティアナ以外誰もが「違う、そうじゃない」と心の中で呟いただろう。

 皇帝が頭を下げているのだ、見た目だけ、形式だけでも良いが敬う様な態度を取って欲しかった。

 ライトからすれば、既に契約は終了している為、フレグスに見た目だけでもそのような態度を取る気は全くなかった。

 ミスティアナにとっては、ライトは最上位の存在なので、そんなもの取る必要が無いと思っている。



「ふっ、その権力に左右されない胆力がお主の強さの秘訣なのかもしれんな」

「いえ、才能ですよ」

「…………」



 顔を上げ、一貫して権力を敬う気の無いライトに笑みを浮かべるフレグス。

 そこに透かさずライトは水を差す。とことんこの手のことの空気は読めない男である。

 微妙な空気が流れた。



「んん"っ!それでは、アーノルド。此度の戦争の大まかな流れの説明を頼みますぞ」

「はっ!これより、第48期対聖国戦争の説明させて頂きます。先ずは――」



 アーノルドの口から、戦争の流れが語られていく。

 如何やら、その殆どはライトの行動を客観的に説明しているだけだ。

 だが、所々にアーノルド達の動きも含まれており、別に退屈ではない。

 しかし、ライトはいつも粗雑な喋り方をする彼が、今に限っては丁寧な口調なのに、違和感を感じて仕方が無かった。



「――以上が、第48期対聖国戦争の流れになります」

「ふむ……」

「くくくっ、流石ライトだね」

「そんな笑わなくても良くないですか?」



 説明が終わった。

 話の初っ端から難しい顔をしていたフレグスは、考えるように視線を上げる。

 対して、話の初っ端からニコニコだったトゥールは、くつくつと笑いながらライトを見る。

 何となく、別に不快ではないが文句を言いたくなったので、彼は口を開いた。


 それに反応して更に笑みを深めたトゥール。



「たった一人で聖国軍の九割方を倒したなんて、これが笑わずにいられるかい?いやない。アーノルドが言ってなかったら、妄言だって切り捨てたけど、本当なんだろう。然も、問題視してた『勇者』も完封って、これでAランク?馬鹿言わないでよ。可笑し過ぎて困っちゃうね」

「はぁ、仕方ないんですよ。ソヨさんがSランクは明確な実績が無いと手続きが面倒だからって、Aランクまでに留めたんですよ」

「成程ね、それなら仕方が無い」



 何やら彼女の顔に企みが浮かんだのをライトは気付くことが出来なかった。

 

 思案を終えたのか、フレグスが顔を上げ、ライトを真っ直ぐと見る。

 どういう考えがあるのか分からないが、ライトも見返した。



「功績を考えれば、元の報酬では釣り合わん。追加で報酬を増やしておこう」

「それは助かりますね。金は幾らあっても困りませんから」

「そうか、ならば良い。捕らえた聖国の者達のことは気にするな。ここからは、我らの役目だ。今日はもう休むがよい」

「では、お言葉に甘えて、今日は休ませてもらいます。馬車にずっと乗ってて疲れたんで」



 言い切ると、ライトはミスティアナを連れて、謁見の間を出て行く。

 許可を貰ったからとはいえ、マイペースな男である。



◆◇◆



 ライトが居なくなった後の謁見の間は、静寂に包まれていた。


 それを破ったのは、この空間に居る中で唯一外部の者であるトゥールだ。

 彼女が見たのは、真紅騎士団の面々。



「ライトの戦闘力を正確に測りたい。使った魔法や技の規模、発動速度まで覚えている限り全て話してくれ」

「はい、それを担当していたのは、ニナとムルドなので、そちらから」

「じゃ、二人共頼むよ」

「分かったわ」

「了解です」



 トゥールは、元々帝国側の負けなんて想像していなかった。

 それだけのポテンシャルを彼から感じたからだ。


 だからこそ、アーノルドに掛け合い、ライトの強さを測るのに協力してもらった。

 殆どの敵軍はライトが倒す為、手が空くと予想した上での要求でもあり、実際にその予想は当たっている。


 ニナとムルドが選ばれた理由は、ライトの戦闘スタイルが魔法寄り且つ転移を使うからだ。

 魔法に知識の深いニナと広い視野と高度な察知能力を持つムルドが適任だった。



「先ず、あの大蛇の術は魔法じゃなかったわ。魔力は感じたけどそれ以外も感じたし、何より魔法陣が存在しなかった。でも、呪文のようなものは唱えていたわ」

「それはニャーも確認してます」

「扱えるのは、全属性。そしてどの属性も最低でも超級までは使えるわ」

「戦争開始時に使っていた魔法がそれらです。正確な魔法までは判断はできませんでした」



 二人の口から次々とライトの攻撃の詳細が大まかに語られていく。


 数分後。丁度、彼の使った魔法に関しての説明がし終わる。



「これで魔法に関しては終わり。それ以外だと時々、あたしじゃ判断出来ない力で技が使われていたわ。それもあの大蛇の術とは別のやつに感じたわ」

「それに関しては、ニャーから補足があります。彼からは複数の神器の気配がしました」

「複数の?彼が使ってる黒い剣やミスティアナのあの槍以外のってことかい?」

「はい、その通りです。気配が交じり過ぎて正確には測り切れませんでしたが、恐らく七から九個ほどでしょう」

「……いや、ちょっとま、え?」



 ムルドの言葉を聞いた、トゥールが明らかに動揺している。

 それもそうだ、一つ持っているだけでも奇跡と言って良い代物を、個人が複数所持していると言われ、然もその個人は、自身が今気にしている者なのだから。



「ムルド、神器の気配なんて分かるものなの?」

「当然、普通は分からない。ニャーはスキルのお蔭で、神器から漏れ出る僅かな神の力、"神気(ゼーレ)"を感じ取ることが出来るだけ」

「へぇ~、にしても神器をいっぱいとか、アイツ本当に化け物ね。一体どうやって――」

「――化け物どころじゃない!」

「うわっ!?」



 トゥールが突然大きな声を出して会話を遮る。ニナはそれに驚いて跳ねた。

 動揺していた彼女は、まだ動揺から抜け出せていないようだ。



「神器は、生物が本来扱うことの出来ない神々の力を内包する遺物(アーティファクト)なんだ!世界のバランスが崩れない様にする為に、個人に複数集まらないように管理されている筈なんだよ!それが、最低でも九個以上だって?問題大ありじゃないか!」

「あの、トゥール様、大丈夫ですか?」

「大丈夫な訳がないっ!!これは至急トアとソヨに確認が必要だ!今日はもう解散っ!仕事に戻っていいよ!」



 言い切るが早いか、トゥールは宙に浮きながら、速攻で部屋を出て行った。

 部屋に居た誰もが、呆然と開け放たれた扉を見ていた。


 彼らが状況をほんの少しでも理解し、動き出すまでに、後数十秒。



◆投稿

次の投稿は3/6(月)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆蛇足

語り部「現力って、普通は感じられないものなのか?」

蛇の王「魔力などの一般的な力は、神々が創り出した生物構造上個人差はあれどある程度知覚できるものだ。瘴気などの勝手に周囲に影響するものも、強制的に知覚させられるな」

語り部「神気はどうなる?」

蛇の王「神気はまた別で特異な力、才能がある又はその力に一定以上晒され変質しなければ知覚出来ない。基本的に強力な力はこの場合が多い」

語り部「ほ~、助かる」



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