3-21【黒塗】ライトVS『勇者』下
地を穿つ、巨大な岩の上に降り立つ。
『勇者』の姿が見えない。
「ま、不味いぞ。ミスティに殺すなとか言っておいて、俺が殺したら……いや、最悪蘇生で良いわ」
この男、何とかなる問題なら大雑把になるタイプである。
しかしながら、彼の心配は杞憂に終わった。
耳に風を切る音が響き、無数の斬撃が岩の中から放たれ、その軌跡が重なり合うと更なる斬撃と化し、巨大な岩を分かつ。
遂には、ガラガラと音を立て、岩が崩れ落ちた。
足場が崩れ、宙に浮く中、巻き込まれないように岩を蹴り飛ばして跳躍し離れる。
「生きてたか、いやぁ良かった」
遠目に見える『勇者』達は、ボロボロに見えるが思った程のダメージを受けていないようにも見える。
視線を彷徨わせ、何が起きたか、ライトが何処に居るか確認しているようだ。
(神官と魔法使いが魔法で結界を張って直撃を防ぎ、侍が岩を切ったって所か。剣士は何してたんだ?)
何をしたのか予想するが、やはり完全には分からない。
と、言うことで、ライトは追撃を開始することにした。
―――包み縛る水蛇
―――墜ち爆ぜる雷蛇
杖から出でた、圧縮された水の蛇が地を這って彼らに近付き、一瞬にして膨れて拘束する。
そこへ示し合わせたかのように、蛇を模した雷が墜ち、爆ぜた。
その属性の相性により、効果は何倍にも上がっている。
敵に見つかってから攻撃するなど、生易しいことはしない男なのだ。
《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明》
―――中級時空魔法:テレポート
「――サポートから落とすのが定石だ」
「はぐっ!?」
彼らの中で一番後ろ、且つ支援職である神官の直ぐ背後に転移し、腹に杖を叩き込み、吹き飛ばしながら意識を奪う。
流石に感づかれずには出来なかったようで、残りの三人がこちらを振り返る。
しかし、それだけの時間さえあれば、ライトは既に杖を向けられた。
―――吹き飛ばせ炎蛇
杖先から生じた炎が即座に炸裂し、否応なしに彼らの足を地から離させる。
―――上級杖術:型無き戦刃・薙流・三連
そして、ライトは彼らが地に足を着かせ、安定を取り戻す前に、魔力を籠めた一撃をそれぞれに与える。
水平方向に転がっていく、彼らを見るのは一種のスポーツのような楽しさがあった。
恐らく、命の価値感の違いだろうと思うが、流石に酷い。
「お、立ち上がるか……魔法使いは沈んだっぽいな」
遠くで立ち上がったのは、剣士と侍の二人だけ、魔法で防御する暇も無かったので、物理耐性の低い魔法使いは意識を失ったようだ。
立った二人は、満身創痍一歩手前という処で、身体の至る箇所から少量だが血が出ている。
武器を構えるのが、見えた。侍の斬撃が飛んでくる。
「牽制か、将又それしか出来ないか。違う――時間稼ぎか!」
―――天級刀剣術:波浪無双連刃
難無く斬撃を杖で打ち砕くが、続け様にドンドンと斬撃が飛んでくる。
圧倒的物量、転移魔法を準備する時間すら与えない程の斬撃の波。
対処するのに思考が持ってかれ、他の行動に移れない。
まんまと策に嵌っている。
何故、時間稼ぎと即座に判断できたかと言うと、斬撃を放つ侍の横で剣士が何やら剣を天に掲げているからである。
剣に光が灯り、徐々にそれが増していっていた。
(簡単には届かないことを理解して、一撃に全部乗せる気か。面白い!受けて立つぜ!)
手の出せない、危機的と言って良い状況でも、その笑みを彼は絶やさない。
思考をフルに稼働させ、無限とも思える斬撃を掻い潜る方法を探す。
けれども、余りにも、時間が足りない。
剣士がその神秘なる輝きを振ってしまった。
―――天級剣術・変異:希望が載りし太陽斬
「やばっ、想定よりも速いっ――」
黒き王を切り伏せんとする光が迫る。
《最純二択-黒剛彩王-世界開闢言語理論-偽詐術策-聡明》
刹那、視界が切り替わり、異空間へと引き摺りこまれた。
尤も、彼がそれを理解するのには数秒の時間を要したが。
強制的に頭がクールダウンされたかのように、高揚感は鳴りを潜め、安定した脳は正常な思考と行動を彼に要求してくる。
「此処、は……前にも来たことがありますね。なら、ある筈、アレが」
過去の記憶を頼り、辺りを見回す。
すると、直ぐに見つけることが出来た。
そこにあったのは、
「今回は……」
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最純二択―Q.2 貴方にとってはどちらが重要か?
結果 or 過程
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前回と同じように、二択を迫ってくる巨大なウィンドウ。
どういう意味があるのか、どうしてやらされているのか、どうして、どうしてと疑問は尽きない。
だが、そうならば考える意味は無いのだろうとライトは思う。
「分からないものは分からない、それで良い。にしてもやっぱ絡繰りは気になりますよね」
意味が無いと理解する程度では、彼の好奇心は抑えられないようだ。
彼自身、自分のスキルに原因があることは気付いている。
ウィンドウに普通に書いてあるからだ。
けれども、深くは分からない。何故なら、未だに権限が足りないらしく、詳細すら読めていないからである。
「前回もそうですけど。"良い"タイミングで発動しますよね」
スキル-最純二択の発動タイミングは、今回と合わせて二回しかないがどちらとも、ある意味ライトが危機的な状況下でなのだ。
そこから推測するに、所持者の危険なタイミングで発動するのではと考えた。
「でも、ソヨさんと戦った時とか、U.U.U.との時は発動してない……タナトス様とは例外だとしても、法則が掴めない。そもそもやっぱり例が足りませんか今度、ヨルに半殺しにしてもらいまますかね?…何となく失敗する気がします」
あれやこれやと考えるが、如何にも分かる気が全くしない。
その理由は、まだまだ情報が足りないから、当然とも言える。
一通り思考を終えたライトは、その二択へえと向き直る。
「結果か過程。ま、当然"結果"でしょうね。結果が全てとは言いませんが、大抵の結果には過程が付いて来るものですから。過程の果てに結果があるのではなく、結果を過ぎてこそ過程が生まれるんです。途中で折れたならばそれは過程とも言えない。結果があるからこそ、過程は過程たり得る」
ライトが自分の考えを言い終わると、ウィンドウの表示が変わる。
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最純二択―Q.2 貴方にとってはどちらが重要か?
Answer― 結果―Decision
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何かが、断ち切れるような音がする。
また、視界が切り替わり、元の場所に立っていた。
前回と同様に、ライトは自身の内から何かが溢れる様な感覚を覚えている。
光の刃が迫り来る。
《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明》
―――天級時空魔法:時間加速・光速超越域
反射で創り出した新たな魔法が霧散すると同時に、視界に映る世界が少し色褪せた。
迫っていた光の刃が静止――したかのように見えている。
実際には、ミリ単位で動いており、かなりの時間を掛けすらすればライトに当たる。
それは当然、ライトが"動かなかった"場合の話だが。
「咄嗟に使ったけど、この難度の魔法、よく感覚で作れたな、僕」
<ライト、何があった?一瞬だが、リンクが……繋がりが切れてお主を感じれなくなったぞ?>
「後で話します。戦争が終わってからです。今は目の前の敵に集中します」
二択のお蔭で冷めた思考を稼働させ、杖を構える。
どうにも目の前の光の刃は、単純に触れてしまうのが危険に感じたが故、ライトはある手を使う。
「第七頭、神器『堕落銃 アザエル』、《堕落降格》」
八岐大蛇の七つ目の頭、その鱗に紫色の光が灯り、瞳が同色に一瞬輝いた。
同時に、光の刃がその形を崩し、砕けてしまう。
想像以上の効果に、ライトは驚くが、悪影響ではないので問題無い。
脅威を退けたので、魔法を解除する。世界の色が正常に戻る。
「ふぅ、大丈夫っと。あ、倒れましたね」
正面に、剣を落とし地面へと倒れ伏す剣士が見えた。
侍の女は狼狽えていたようだが、直ぐにこちらを向き、刀を構える。
ピリピリと、肌を刺すような、殺意に近しいものが彼女から溢れ出す。
感情とは、知的生命体に与えられた最も原始的な原動力。
ある意味では強制されている本能とは全く別の、理性から生まれる力だ。
攻撃が来る、とライトは最大限の警戒を持って杖を構える。
「……来るっ――」
「『我、万象を貫く神々の矛ッ!!』」
《奪力の転換式》+《未来予知-槍術:神級-電光石火-絶技-天眼-神風-真愛》
―――神級槍術:獅子王の雷槍
「――あ、れ?」
瞬間、白光が走り、侍を弾丸のように吹き飛ばし白い軌跡が空に描かれる。
「マスターッ!!」
「――あがっ!?」
何故か心配した様子のミスティアナが、高速で接近しライトを力強く押し倒す
地面との接触の衝撃で、肺から空気が抜けて息苦しいどころでは無くなる。
状況を把握するには、ミスティアナを落ち着かせる必要がある、とライトは苦しむ最中考える。
しかしながら、回復までには結構な時間が掛かりそうだった。
◆投稿
次の投稿は3/3(金)です。
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◆技解説
スキル技録
天級刀剣術:波浪無双連刃 絶え間なく斬撃を指定した方向に反ち続ける 使用者の終了の意思又は外部からの攻撃が行われるまで使用者の攻撃は継続される
天級剣術・変異:希望が載りし太陽斬 勇気を収束させた光属性の巨大な斬撃を放つ 太陽の光を浴びた状態でしか使用できない 現力破壊・瘴気特攻あり
魔法技録
天級時空魔法:時間加速・光速超越域 自身の思考・身体全てを極端に加速させる 長時間の使用をすると思考と身体の加速に乖離が生じる 長時間の使用により使用終了時に感覚のズレが発生する確率あり




