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3-19 暴虐ト殺戮ノ限リ

諸事情により、再投稿です。



 戦争開始から数十分、現在膠着状態。



「『勇者』、中々来ないな」

「聖国も、私達を迂回する形で攻め始めました。マスター、どうしますか?」



 正に、暴虐という言葉が合う力で聖国軍を蹂躙したライトなのだが、平原の中心に陣取った為、左右に大きく迂回されてしまっている。

 当然、かなり聖国軍が削れているので、帝国軍だけで対応は十分可能なようだ。


 しかしながら、堂々と啖呵を切った割には働けていない、そして暇だと彼は感じた。

 手動制御すれば、迂回した敵にも当てられる。けれども面倒らしい。



「デカいのを本隊の方に放って、脅威が消えていないと知らしめるか」

「それが良いかと思います、マスター」

「……で、まだくっついているつもりか?」

「マスターは、私とくっついているのは嫌ですか?」

「うぐっ……さて、聖国軍に攻撃しようか」

「はい」



 何処までも好きな相手には弱い男である。


 思考を切り替え、悠々と左右に分かれ進む軍勢へ杖を構えた。



「第三・五頭、起動」

<ドレッドノートを使うということは、複製するのは分かるが、何を使う気じゃ?ニフルゲイトも使うならば、水系か?>

「キキッ、それはお楽しみだぜ、ヨル。直ぐに分かるさ」



 最高に意地の悪い笑みを浮かべた黒き王は、深く意識を集中させる。

 最初に標的にしたのは、定期的に強力な炎魔法が放たれる、あの筒状の巨大魔道具。


 三つ目と五つ目の頭の鱗に青と灰色の光が灯る。

 ゾクリ、と身体が跳ねてしまうような寒気が周囲に溢れ始めた。



―――再事翼蛇(リントヴルム)=神級氷魔法・古式:定命の者達よ、凍(シャーイコニス)てつき絶え終われ(・イイーキルス)



 幾重もの深青の魔法陣が第三頭の首に現れ、それらが弾けると同時に蛇の口から冷たき極光が平原(空間)を凍結させながら、聖国軍へと迫り狂う。



「《魔法戦列(マジックノート)()四重(カルテット)》」



 ライトが更に紡いだ言葉によって、聖国軍の中心を貫こうとしていた極光が左右に広がる様に四つ増えた。


 視界内の緑、生物、その他全てが凍っていき、氷原へと変わっていく。

 叫び声すら、彼の下には届かない。

 冷たい風が吹いて来る。


 流石に、効果範囲とその多さのせいで聖国軍全てを氷漬けには出来なかったが六、七割の戦力は削れただろう。



「凄いです。マスター」

<エグイことをするのう、あの蛆虫の魔法か>

「これは単純に見た目が派手だから使っただけだ。本命は――」


―――再事翼蛇=神級水魔法・蛇道:クタニド・サーペンタクル



 聖国軍の上空に巨大な水色の魔法陣が形成される。

 その魔法陣から、一瞬にして無数の巨大な水の大蛇が生まれ出で、その場にある"餌"を喰らい飲んでいく。


 遠目からでも、その脅威により軍勢がドンドン統制を失っていくのが見える。



「良い眺めだ。流石、広域殲滅用魔法、こういう時にこそ使うべきだ。というより、こういう時しか使い処ない」

<良い使い方じゃ。やはりこの魔法は、こうでなくては、以前は数匹しか出なかったからな>



 ライトは、ミスティアナに出会うきっかけになり、且つこの魔法の餌食になったマンティコアのことを思い出した。

 と言っても、唯あのマンティコアの素材まだ売っても無いし、使ってもないと思っただけである。


 素材の使い方を考え、軽く雑談をしながら、彼らは溺れ死んでいく者達を眺め続けた。




 過ぎること更に数分。


 上空に浮かんでいた魔法陣に水の大蛇が戻り、霧散した。

 地上には、水が無いにも関わらず大量の溺死体が落ちているのが見えている。


 ライトが今回クタニド・サーペンタクルの対象に設定したのは、聖国軍の一般兵士に当たる者達だ。

 つまり、『勇者』など特別な存在や指揮官、隊長、あと精鋭などは対象にしていない。

 それは単純に全員殺すと情報を得れなくなるから、と敵がいなくなって面白くなくなるからという理由で設定された。


 設定の結果、残りの聖国軍は、最初の二から一割程度になった。

 既に、帝国軍だけでも十分制圧できると考えられる。がしかし、油断は当然禁物。

 ライトは気を抜いてなど全くいない。

 そもそも全く直接戦えていないので、元気は有り余っている上に神経は研ぎ澄まされている。



「やり過ぎた――てないみたいだな」

<黄色味帯びた緑色の魔法陣、雷が来るぞ。ライト>

「良いねぇ、まだやる気があって何よりだ!」



 新しく視界に映るのは、三十個程の黄緑色の魔法陣。

 その色により、次の攻撃の属性が判断できた。

 全てが同時に形成されている所を見るに、全て一人によって作られていることが分かる。



「あの規模の魔法を複数且つ、同時に完全制御か。天才、だな」



 完全に形成された魔法陣群が輝きを増す。



「だが、惜しい。第六頭、神器『反逆書 レボルシオン』、《反逆の紙片(リフローページ)》」



 第六頭の鱗に白光が灯り出す。



―――天級雷魔法:ゼル・ミカーレ・三十連



 空に無数の筋を描きながら、雷光が八岐大蛇へと迫る。

 刹那、大蛇の目の前に張られた、紙のような四角い結界にそれらぶつかる。

 すると、



「俺じゃなきゃ、死んでたね」



 光が鏡に反射するように、綺麗に同じ軌道を通って、聖国軍へと返って行った。

 雷光が爆ぜ、平原が燃える。


 これは、相手が悪かったとしか言えない。



「ふむむ~『勇者』来ない。もしかして、巻き込まれて死んじまったか?」

<それは無いな、まだ『勇者』の気配がある>

「ヨルは、『勇者』の気配も分かるのか?」

<昔に何度か会ったことがあるからな。不思議な奴らじゃ>

「そう言うなら『勇者』は殺す気無いし、確保したら話でも聞くかね」



 暢気な話の最中に、聖国軍側から複数の気配が急速に近付いて来るのを感じた。

 だがやはり、『勇者』ではないように思える。

 実力はあるよう、しかし脅威にならない。



「第四頭、神器『乱流刀 荒霧(あらぎり)』、《大気絶壁(アトモスフォート)》」



 八岐大蛇を完璧に囲む、球体の風の壁が張られる。

 本能で危険と察知したのか、王気の領域を踏まないように跳躍してきた豪華な白い鎧の騎士が、風の壁に完全に阻まれて落ち、その深い黒へと沈む。


 叫び声が響き、ほんの少しだけだが、身体が崩れて行って死に絶えるのが見えた。

 自分でやったことながら、かなりエグイ殺し方だなと、ライトは騎士の冥福を祈っておいた。


 その後も誰一人として、ライトに危害すら加えることなく黒へ沈み、死んでいく。



「はぁ、これは神器が強すぎるのか、聖国が弱いのか」

「恐らく、神器が強いのかと」

<そもそもの話、神器は複数同時に扱う様に作られておらぬ。一つ一つが戦況を大きく変える、神々が創り出した兵器だ。そんなもの、同時に使えば当然の結果というものよ。開放していないにしてもな>

「開放?それって何だ?」



 攻撃が収まってしまったので、ライトは本格的にヨル達と会話をすることにした。

 神器を扱っているものの、知識はそこまで無いライトは神器の開放について聞く。



<開放とは、全ての神器に備わっている一時的強化・進化機能というところだな。開放すると、神器の元の能力を基に更に強力な能力が付与され、形状が変わることもある、一時的なもので、戦闘が終わると大抵元に戻る>

「ほ~」

<開放はかなりの適性がないと使えぬ。神器を扱えても、開放が出来ないというのはよくあることじゃ>

「ミスティ、それが出来るくらいの適性があるのか?」

<うむ、寧ろ我の見たこと無いくらい適性が高い。流石天才という処じゃな>

「流石、ミスティ」



 照れるミスティアナはくっ付いている為見えないので、ライトは神器の入っているだろう蛇の頭を見ている。



<更に面白いのは、開放は同じ神器であろうと使用者によって――ライト、警戒じゃ>

「……成程、漸くお出ましか」



 神々しく眩い光が、戦場へと落ちて来た。


 黒き王は、それが何かを理解し、口を愉し気に歪めた。



◆投稿

次の投稿は3/1(水)です。

急用により、執筆と整理時間が取れない為、一日投稿が遅れます。

申し訳ございません。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

天級雷魔法:ゼル・ミカーレ 任意の方向に強力な雷光を放つ 特にこれと言った特異性はなく単純に速度と威力に特化にしている 着弾時爆発あり


◆蛇足

語り部「知ってるか?この作品、未だに風魔法だけは出て無いんだぜ?」

蛇の王「うむ、風属性の中の雷魔法は出ているが、風魔法は出ていないな」

語り部「蛇王蛇法では風蛇結構使うから、魔法の方で出ないんだよ」

蛇の王「そもそもライトは初級以上は虚属性しか使えぬから仕方ない」

語り部「ならさ、魔術で出しても良くないか?」

蛇の王「魔術は詠唱が必要になる、実戦ではあまり使えぬ」

語り部「じゃあどうすれば良いんだよ!」

蛇の王「知るかっ!そのうち作者が出すわ!」



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