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3-15 進行ノ道中



 帝国を訪れ、三週間が経った。

 ライトは今、馬車に揺られている。



「あと、何日くらいで着くんでしたっけ」

「あと一週間です、マスター。この頃、毎日聞かれてますよ?大丈夫ですか」

「いやぁ、だって、退屈なんですよ。戦争用の新しい術は開発し終わりましたし、僕が出る幕も無く魔物は狩られてしまいます。それでいて行動は制限される、堪ったもんじゃありません」



 現在、聖国との戦争を行う、『死者の平原』という場所へ向かっている最中。

 聖国では『聖者の平原』と呼ばれている場所でもある。


 だだっ広い平原で、森や山など遮るものが無く戦争などの大規模戦闘に持って来いの場所なのだ。

 実際、歴史に残る聖国と帝国の戦争は必ず、『死者の平原』で行われている。

 此度もその例に漏れないらしい。



「仕方ありません、マスター。マスターは戦争での主戦力と聞きました。情報秘匿ということでしょう。それに今動けない分、戦争では全力を出せますから、頑張ってください」

「理解はしているんですけど……それでも、うぅ……ここは、もうミスティに癒してもらうしか」



 馬車で平原へ向かっているのだが、その重要性が故にライトは行動がかなり制限されていた。

 当然、やることはあった。けれども、有り余る時間で全てが終わってしまった。

 今のライトは、退屈に殺されそうになっている。


 隣に座る、ミスティアナへともたれかかる。

 頭に手が添えられ、ゆっくりと撫でられた。



「全く、マスターは」

「不甲斐ないのは分かってるんですけどね。この温もりには抗えません」

「そんなマスターも好きですから」

(なんか、最近ミスティよく笑う様になりましたよね……それに、よく喋る様にも。前は、何というか、人形っぽいって言うとアレですけど、感情が抜けた感じでしたし)



 少しだけ口の端を上げ、自らを見る彼女に、明確な変化を感じたライト。

 実際、その変化はこの頃感じていたのである。

 クッキーから始まり、ライトやヨルが言わなくても色々とするようになった。

 あと、ライトに対してのスキンシップが多くなったのも大きな変化だ。


 前は、別に嫌がっている訳でも無かったが、率先しては来なかったので、彼はかなり嬉しく思っていた。

 他の変化に関しても悪い方向に進んでいないので、小躍りしてしまいそうなくらい嬉しい。



(この際ハッキリ聞いてしまいましょうか)

「ミスティ、少し聞きたいことがあるんですけど、いいですか」

「何ですか?マスター」

「最近、ミスティが変わった気がするんですけど、何かありましたか?」

「そう、ですか?自分ではよく分かりません」

「ふうむ、明らかに人間味が増したというか、生きてる感じになったんですよ」



 ミスティアナは人間ではないので人間味という言葉は正しくない。


 首を傾げる彼女の挙動に、違和感を覚え、何か隠しているように見える。

 今まで彼女がそのようなことをしなかったからこそ、不思議に思う。

 


(これも変化ですかね?ミスティに限って悪いことではないと思います。……なら、僕が知ることで僕に何らかの不利益がある?……何でしょうか……ヨルは知ってます?)

<うむ、何故ミスティが変わったかも、何を隠しているかも知っておるぞ>

「本当ですかっ!?」

「マスター?」

「ああ、いえ、あのヨルがですね」

「ヨル様でしたか、ならばゆっくりと」



 突然大きな声を出したライトに驚いたようだが、簡潔な言葉を言い切る前に、彼女にそれらを理解される。

 少々その速さに圧倒されながらも、ライトはヨルとの会話に戻ることにした。



(それで、何があったんですか?)

<端的に言えば、とある神から接触があったようじゃな>

(成程、ミスティにですか……)

<それに伴い、あるスキルを手に入れたようで、それを隠したいようじゃ>

(ん?じゃあ、何でミスティ変わったんですか?)



 先に言った、どうしてミスティが見変わったのかという質問に答えてくれているかと思ったら、後の何を隠しているかに答えていたようで、ライトは驚いた。

 即座にもう片方を聞く。


 分からないことは、聞ける時にしっかり聞くのが、ライトのスタイルである。



<本当に分からぬのか?>

(はい)

<本当の本当に分からぬのか?自らの奴隷のなのに、好いている者なのに>

(うぐっ)

<はぁ……これだから鈍感男はいけぬ>

(耳が痛いですね、念話なので頭でしょうか?)

<お主、本当に聞く気あるか?>

(ありますあります!メッチャあります!)



 先程よりも確かな不甲斐なさを感じながらも、答えは本当に分からない。

 だからこそ、恥も外聞も捨て、全力で念話を送る。

 そのくらいで、ヨルから嫌われるようなことも無いと分かっているからでもある。

 


<ふっ、まあ話してやるとするか>

(ありがとう、ヨル)

<これでもお主の婚約者じゃからな。では、話を始めようか>

(お願いします)

<ミスティが、視覚と聴覚以外の感覚が機能していないというのは、前に話したな?>

(はい、あと何故か僕との触れ合いの時のみ、他の感覚が戻ることも確認済みです)



 先祖返りのような隔世遺伝のような突然変異のような、よく分からん『天羅(てんら)忌子(いむこ)』であるミスティアナ。

 中途半端に昔の天羅の特性が出ており、感覚も中途半端に無い。

 そして、何故か本当に何故かライトやライトの製作物と触れ合っている時だけ完全に感覚が戻る。

 原因は不明だが、特に問題はないので今のところ放置している。


 その自分達の間では分かり切っていることを言うヨルに、ライトは疑問を抱く。



(それが、どう関係していくんですか?)

<そう焦るな……感覚が無い、ということはお主と出会うまで、ミスティは温もりや美味しいさなど感じたことになる。自分では得ることが出来ない不思議な何かを与えてくれる相手、そんな相手に惹かれるのは当然だろう>

(…………)

<別に、それだけの理由でお主にミスティが共にいるのではない。しっかりとお主のことを好いておるぞ、本人から直接聞いたしのう>

(言って大丈夫なんですか?それ)

<口止めはされているが、この際ハッキリ言ってしまった方が良いだろう>

(僕としては良いんですけど、事情を訊くと何とも言えませんね)

<細かいことは気にするでない>



 確かに気になっていることではあった、しかしながらそれを本人以外から聞くというのは微妙な心境だ。

 もう一度そのことを考えていると、ライトはとあることをヨルに聞きたくなった。


 ミスティアナが、頭を撫でながらライトの様子を注意深く見ていることに彼は気付いていない。



(ミスティは、よくヨルに相談とかするんですか?)

<ああ、よくして来るぞ。お主が知らぬことも色々とな……まあこれが、今回のことに繋がってくるんじゃ>

(ほうほう)

<最近、ミスティはお主に必要とされているのか不安だったそうじゃぞ>

(え?本当ですか?)

<本当じゃ、それで相談されたからのう。当然我はお主が必要としている、好いていることを知ってるから、言ったがどうもかなり心が不安定になっていたようでな。中々収まらんかった。恐らく、昔の天羅の要素の影響だろう。一度お主はミスティに明確な命令をし、支配者として認識された。けれども、アレ以降命令が無いからか、存在意義の認識が揺らいだようじゃ>



 支配者として認識された、というのは『Unlimite(無限を冠す)d Undea(失命なる)d Unknown(名も無き怪物)』の時のことだ。

 アレの後に、ライトは一度も同じような形式で命令をしていない。

 あの状態になったミスティアナが強すぎて、命令するような場面が無かったというのもあるが、そもそもライトは彼女に命令することを嫌っている。

 仲間、と思っているからだ。だが、それが悪影響を及ぼしていると言う。



(そういうことですか……気は進まないですけど、それなら定期的にした方が良いんでしょうかね?)

<その方が良いだろうと我は思うぞ。別に戦闘以外でも、大丈夫な筈だからな。慎重に検証を重ねながらやっていくとしよう>

(はい、そうしましょう。続きをお願いします)

<うむ。それでだ、余りにも不安定だったから、確かめれば良いのではと言ったのじゃ。しかし、不安な癖に恥ずかしかったようでな。そこで、考えたのがあの菓子じゃ>

(あの、見た目だけクッキーですか?)



 石のような砂利のような、クッキーの形をした兵器を思い出すライト。

 あの時は、冷静でいられて、ミスティアナに格好良く言えたが、あの後クッキーを食べるのが少し怖くなってた。

 改めて思い返せば、何故普通に飲み込めたのか意味が分からなくなったのである。



<出来上がりは、良くなかったがそうじゃ。自らで菓子を作り、それを渡した反応で必要とされているか判断してみてはどうか?とな>

(何か、微妙じゃないですか?それじゃあ判断できないような気がしますけど)

<我もそう思うぞ。ミスティが作った物をお主に渡せば絶対に喜ぶから、その時点で恐らく不安定は解消されるだろうと、適当なことを言ったのは認めよう>

(やっぱり……いや、ん?もしかしてヨル……あの夜に三人でするまで予測して行動してたんじゃないでしょうね)

<さ、さあ何のことか、我には分からんのう……>



 思念である念話にも関わらず、声が震えていることから明らかに動揺しているのが分かる。

 瞬間、全てがヨルによって仕組まれていたのだとライトは理解した。



(ヨル……本当に……)

<い、いやっ!別に無意味という訳ではないっ!>

(ふ~ん)

<ほ、本当だぞっ!ミスティは、感覚が無い分ある意味では温もり、触れ合いというものを求めていてだなっ、それを満たすのとお主から求められることでの不安の解消、更には実益を兼ねた最高のっ――>

(今、実益って言いましたよね?)

<おっ、おっと~そんなことは~無いと~我は思うぞ~>



 口を滑らしたヨル、それを聞き逃さないライト。

 焦ると思考が回らないとは言ったもので、自分で言ってしまうとは本当に滑稽なお―う"っ!?

 ああ、済まない、少しあるものが飛んできただけだ、気にする必要は無い。



(本当のところは?)

<いやぁ、流石に最近出来ていなかったこともあって、抑えきれなくてな、自分で慰めるのも限界があって、新しい刺激が欲しくっ――しまった>

(そんなベラベラ喋っておいて引っ掛かったとか言わないで下さいね?自分で言いましたよね。あと、ヨルお仕置き決定で)

<情状酌量の余地は>

(無い)

<くなぁっ!?>



 変な声が脳に響くのを無視して、ライトは身体を起こした。



◆投稿

次の投稿は2/20(月)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆蛇足

語り部「本当に蛇王って何でも知ってるよな。実は盗聴とかしてるんじゃない?」

蛇の王「どうだろうな?おっと、こんなところに昨日にお主が寝言で我を呼ぶ音声が」

語り部「がっつりしてるな、お前。僕の寝言なんて聞いてどうするんだよ」

蛇の王「唯可愛いな~と聞くだけじゃ」

語り部「あっそ」(盗撮もしてそうなんだよなぁ……)



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