3-7 黒剛ノ王VS不滅ノ王 下
ヨルを構えてから数分、何度目か分からない攻撃を繰り返す。
《黒剛彩王-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-回避錬術-怪力》
―――中級杖術:閃突牙
跳躍し、トゥールへと突きを放つ。先程よりもかなり動きは良い。
だが、その攻撃はライトの腕のように身体をすり抜けた。
「だから効かないって」
《不滅之王-魔録神記-魔法:神級-水の極致-魔導深淵-超域魔力操作-叡智-天啓》
―――中級水魔法・変異:超圧縮水刃
―――喰らい尽くせ風蛇
至近距離で放たれた小さくも鋭利過ぎる水の刃を、手の平から出た風の渦がつぶす。
それと同時にトゥールを蹴り、杖を無理矢理に引き抜いて床へと降りる。
「近接攻撃が効かない。けどなぁ……」
―――再事翼蛇=超級地魔法・蛇道:大地の蛇剣槍
床が急激に膨れ上がり、巨大な捻じ曲がった槍へと変化してトゥールを貫かんと伸びる。
地の槍が水の身体をへと近づく、突如彼女が青く薄い壁のようなものに包まれた。
その壁に当たった瞬間、槍がバラバラになる。
(魔法だと、あの硬すぎる魔力障壁が抜けない。近接なら王の外套のお蔭で抜けるけど、肝心の攻撃がすり抜ける)
「難儀だ…」
「いつまで同じことを続けるつもりだい?そろそろ飽きてきたんだけど」
「ふ~ん」
―――再事翼蛇・事実改変=神級水魔法・変異:クタニド・サーペンタクル・クレイジ
「なら、少し趣向を変えて行こうか」
単体の物理攻撃だと、精霊故に全てが透過して効かない。
単体の魔法攻撃だと、強固な魔力障壁に拒まれやはり効かない。
それならば、当然合わせるしかない。
ライトが分かっていて、それしなかったのは偏に面倒だからだ。
物理と魔法を連続で使うのは簡単だが、二つを並列して使うのは難易度が高い。
行う作業に関連性が無い為、上手く合わせられないのである。
そこでライトが取ったのは、
「僕相手に水魔法?舐めてるんじゃ……無いみたいだね。よくあんなのポンっと使えるよ」
「アンタに言われたくないな」
天井ギリギリに形成された魔法陣から、人の胴よりも大きい水の蛇が無数に現れる。
全ての蛇が、トゥールへと急速で喰らい付かんと迫り出す。
今更だが再事翼蛇、がライトがヨルに新たに教えられた術だ。
既に何度か本編で使用されているので、どんな術かは皆様ご存じだろう。
けど、一応説明しなければならない。
再事翼蛇は、実際に目にした事象を絶対に再現する術。
例え、そこに魔力が無くても魔法を再現しようとすれば、再現できるし、対応したスキルが無くても技を再現できる。
ハッキリ言って、チートなのだ。
然も、再現する事象自体も実際とは違う様に少し改変できるという、化け物っぷり。
誰がこんな阿保みたいな術考えたんだろうな?
そんな解説をしている最中には、既に水の蛇たちが、トゥールの魔力障壁に喰らい付いている。
「その状態で障壁を砕いたら、アンタはまだ無事で居られるかねぇ!!」
《黒剛彩王-蛇王蛇法-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-回避錬術-怪力》
―――天級杖術・変異:天喰ラウ禍ツ蛇ノ絶牙
杖から溢れ出した黒き王気を纏い、ライトは漆黒の蛇と化す。
空を駆け上がり、水の塊と化しているトゥールへと喰らい付く。
「そんな馬鹿げた量の王気っ、化け物がっ!?」
蛇の牙が水球に接触した瞬間、バリッと音を立てて魔力障壁が弾け、爆発する。
「それでも、簡単には負けるわけがない。だって、僕だから」
元々存在していたライトの魔法の水、それを遥かに超える水が爆発と共にぶちまけられ、蛇が大きく吹き飛ばされた。
「――ぶはっ!ふざっけんな!あの魔力馬鹿が!これが"初級魔法"だって、冗談も大概にしろ……」
蛇がドロリと溶け、その中から現れたライトが叫ぶ。
彼は、吹き飛ばされる最中見ていた、トゥールが手に浮かべた魔法陣それが初級水魔法:クリエイトウォーターであるのを。
「凍りつけ」
《不滅之王-魔録神記-魔法:神級-氷の極致-魔導深淵-超域魔力操作-法師-叡智》
―――上級氷魔法:アイスエイジ
空間が凍りつく。
凍ってしまったせいで動くことの出来ないが辛うじて、意識を保てているライトは、魔法の効果の高さに驚いている。
(だから上級魔法の威力じゃねぇって……動けない)
「結構やったよ、君」
《不滅之王-魔録神記-魔法:神級-水の極致-魔導深淵-超域魔力操作-法師-叡智》
―――天級水魔法:激流の海崩鎚
水で造られた鎚のような形の激流の塊が、静止するライトへと振り下ろされようとしていた。
だがこの男、ここで何もせずにやられるような主人公ではない。
「終わり」
(いや、違う)
《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-偽詐術策-聡明-会心》
―――天級音魔法:超振動崩壊音波
「うっ!?なにっ」
キーン、と空間に嫌な音が響くと共に凍結したものが砕け散り、鎚は形を崩して唯の水へと変わる。
それが動けるようになったライトへと降り注ぐ、
―――再事翼蛇=上級氷魔法:アイスエイジ
前に凍りつく。
直近の事象を再現し、ライトは被害を防いだ。
次々と起こる現状の変化に、付いて行けていないトゥールへと杖を繰り出す。
《黒剛彩王-杖術:天級-剣術・蛇道:上級-回避錬術-怪力》
「ハッ!!」
「くっ!諦めが悪いっ!」
(あれ?今、普通に腕で受けなかったか?)
薙ぎ払いは腕で受けてられ、弾かれた。普段ならば何でもないことだが、彼女の行動に於いてそれは異常だ。
物理攻撃が透過する筈なのに、何故か普通に受ける、ということは?
(何時でも攻撃が透過する訳じゃない)
「まだまだ行くぞ」
「流石に近接戦は分が悪いねっ」
連続して杖で攻撃するが、上手く短杖と腕で受け流される。
得意では無い様だが、続けざまに高速で放たれるライトの攻撃を流せる位は出来るようだ。
つまり、一般的に言えば全然強い。
(思えば当然のことだった。何でも透過するなら、そもそもあの短杖だって持てない筈だ。透過する時としない時があり、透過してる部位としてない部位がある。完璧な状態はないってことになる。なら、全然勝機はある)
「僕もやられてばっかじゃいられない」
―――中級水魔法・変異:超圧縮水刃・十連
「この程度なら、問題ねぇ」
十の水刃を杖を回転させながら全てはたきを落とし、流れるように振り下ろす。
今度は受けるのではなく、背後に跳ぶことで回避された。
跳躍と同時に再度水刃が放たれ、それをまた落とし、避けられ、放たれ、繰り返される。
「流れ溺れろ」
《不滅之王-魔録神記-魔法:神級-水の極致-魔導深淵-超域魔力操作-叡智-天啓》
―――上級水魔法・変異:罪流しの大瀑布
「だから、多いって」
―――再事翼蛇=上級氷魔法:アイスエイジ
「あれ?」
「何度も同じ手で攻撃する訳無いに決まってるよね」
「なっに――これ、息が持たねぇぞ!?)
何故か凍らない水で、広間が埋め尽くされた。
魔法で生み出されているからか、視界はかなり良い。
一瞬、ミスティアナのことが心配になったが、気にしている暇はない。
何故なら、何事もないかのような速度でトゥールが近付いて来ているからだ。
(早くなんとかしないと、溺れて負ける……それだけは避けないと)
別にライトは魚でも何でもないので、水中で長時間行動することは出来ない。
大きく動けば、それだけ息も持たなくなる。
(く、この水凍らないし……量が多すぎて吹き飛ばせない)
トゥールが、迫っているにも関わらず動けない。焦りが思考を鈍らす、考えが纏まらない。
(――ああもうっ!これでなんとかなれっ!!)
《黒剛彩王-虚の理-悪逆非道-偽詐術策-聡明-会心》
―――超級音魔法:無制限の拡声器
―――天級音魔法・変異:意識剥奪の黒天楽奏
良い作戦が思いつかなかったライトは打一か八か、魔法を使うことにした。
そうして、魔力で形成された灰色と妙に黒々とした二つの魔法陣が杖に重なった瞬間、空間に灰色の波動が広がる。
溢れていた水が色を失い、急に消えて無くなってしまった。身体が落ちて行く。
「オォー!!――危なかったぁ!!」
何とか受け身を取って衝撃を床へと流し、事なきを得た。
はぁ、はぁ、と大きく息を吸いながら頭と心を落ち着かせる。
何が起きたのか、まだ理解できていない。
すると、耳にバタバタと、何かが落ちる様な音が入ってくる。
「な、何だ?……これは」
重い身体を起こすし、周囲を見回すと。
広間に居たライト以外の全員が床に倒れていた。
トゥールにミスティアナまでもが、だ。
「これは、やってしまったかもしれないな……」
口を突いて出たその言葉は、よく広間に響いた。
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次の投稿は1/25(水)です。
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◆技解説
魔法技録
中級水魔法・変異:超圧縮水刃 圧縮された水を刃状にして飛ばす 大抵の単純な金属は切断可能
上級氷魔法:アイスエイジ 使用者を中心とした範囲を凍結させる 周囲に水分が多い場合効果上昇
上級水魔法・変異:罪流しの大瀑布 液体から変化することの無い大量の水を指定した場所から生成する 長時間は生成できないが瞬間的に生成される量が多い
天級水魔法:激流の海崩鎚 水で作られた巨大な鎚で対象を叩き潰す 質量が大きい為潰すのもあるが流動していることによる削る効果の方が高い
超級地魔法・蛇道:大地の蛇剣槍 指定した土・砂・石を使用して巨大な槍を生成し対象を貫くように攻撃する
天級音魔法・変異:意識剥奪の黒天楽奏 波動を受けた対象の意識を一時的に奪う 媒介が音ではない為物体に効果範囲が制限されない 耐性・スキル貫通効果あり




