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3-4 速過ギル転移



 ドンッ!と勢い良く扉が開かれた。

 中に居た彼女――ソヨは、耳をピンと伸ばして驚いている。

 ライトとミスティアナ、〈黒蛇白塗(ケーリュケイオン)〉が執務室へと入って来た。



「――来ましたよ!ソヨさん」

「……ライくん、元気だね」

「そうですか?自分じゃよく分かりませんね」

「いや、確実に元気だよ。何かあった?」



 明らかに、昨日よりもテンションが高く見えるライトに、彼女は思わず問いかける。

 それに対して、ライトは笑みを浮かべて返す。



「う~ん、戦闘用に新しい術を覚えたくらいですかね。早く使ってみたくて浮き立ってるのかもしれません」

「まーた戦闘かぁ、ライくん本当に好きだよね」

「好きですよ!戦争なんか今から楽しみで仕方ありません」



 報道とかで言っていたら大炎上しそうなことをハキハキと口に出す彼に、ソヨは微妙な目を向けた。

 自分からしたらこんな面倒なことを、喜んでするとは、若者って良いな~的な、思いが伝わってくる。


 でもそんな血生臭そうな時代、嫌だけどね。



「物好きだねぇ……それより、もう来たってことは、準備OKってことで良い?」

「OKとはどういう意味か分かりませんが、はい大丈夫ですよ!」

「私も、出来ています。ソヨ様」



 その確かな返答を聞いてから、ソヨは二人の肩に手を当てる。

 謎の行動に、二人は疑問を抱くが振り払うことはしない。



「じゃ、早速向かおうか。クリムゾア帝国の中心、帝都『クリムラット』へ」



 頬を、風が撫でる。

 視界に晴れ渡った、青い空が映る。



「はい、ようこそ。帝都『クリムラット』に」

「…………え?」

「マスター、状況が理解出来ません」

「大丈夫です。僕も理解出来てませんから」



 肩から手が離される。

 その急さ加減に、ライトの思考は適応できていない。

 唖然とした様子で辺りを見ている二人が面白かったのか、ソヨが吹き出す。



「二人共、面白い顔してるね。転移なんて慣れてるでしょ?」

「規模感が違い過ぎます。まあ、やれば出来ないことも無いですけど……。通常時にノータイムで国家間で転移するなんて芸当、正直僕には、暫くは出来そうにありません」



 正しく国家間を転移したのかは判断できるような情報は無いが、ライトは勘でソヨの言っていることは本当なのだろうと思った。

 そう判断したからこそ、あり得ない技術に心の底から驚いている。



「暫くってことは、いつか出来るようになるの?」

「当然です。僕が目指してるのは、世界最強ですから。それくらいは出来るようになってみせますよ」

「目標が高くて良いねぇ、ライくん」



 ソヨと話しながらも、ライトは周囲を見回す。

 正確に此処が何処なのか分からないが、吹く風からかなりの高所であることと、立っているのが人工物の上であることは理解出来た。

 足を進め、立っている何かの端まで移動する。

 眼下に、都市が見えた。

 全体的に白に統一されたラビルとは全く異なり、全体的に赤みを帯びているというか、赤褐色とでも言えばいいのか、見慣れていないライトは少し違和感を感じた。



「此処がクリムゾア帝国、何だか少し乾燥気味ですかね?」

「結構暑いよ?よくライくん達涼しい顔してられるよね」

「そう言うソヨさんも汗一つ掻いてませんけど」

「私、神獣だからさ」

「ソヨさん、神獣って言えば、僕が何でも納得すると思ってません?」

「ソ、ソンナコトナイヨー」



 ソヨは、露骨に目を逸らした。

 やっぱりか、とライトは彼女を見つめ続けていたが、疲れたのか、再度帝都へと視線を向ける。



「此処は、クリムラットの本当に中央、一般的には時刻塔って言われてる、セントラルガーネットって建物の屋上だね。一時間ごとに鐘が慣らして、民に時間を知らせるの。因みに国営」

「てことはコレ、国のものなんですよね?勝手に上ってて良いですか?」

「私の権限があれば大丈夫!でね、あっちの宮殿が、この後ライくん達が行く場所」



 肩をグイッと動かされて身体を引き寄せられ、指さしている方向を見させられる。


 あったのは、薄黄色を基本に上部が赤い装飾のされた宮殿。

 明らかに権力者、というか皇帝が住んでいそうな建物だ。

 ライトの顔が強張る。



「もしかして、あそこってクリムゾア帝国の皇帝陛下がいらっしゃるところでは?」

「うん、クリムゾン宮殿、皇居だね」

「ギルドの依頼、じゃ」

「でもトゥールが、あそこに来させてって言ってたんだもん。仕方ないよね」



 笑みをライトに向け、あっけらかんとしてソヨは言う。

 殴りたい、この笑顔。

 だが精神力お化けのライトは、何とか拳を握りしめるに留めた。



「トゥールは私と違って、国の中心、つまりは此処のギルドマスターをしてるんだけど、その関係で皇帝ともよく合うらしいから、それでじゃないかなって私は思ってる。実は、ギルドは内政干渉厳禁だから、グレーな行動なんだけどね」

「聞けば聞く程、その方真面には思えないんですけど……」



 彼女は楽しそうに言っているが、ライトの解釈では要は規則スレスレのことを普通にやっているヤバい奴という風になっている。

 そして、その解釈は間違っていない。



「私達のパーティーの中では結構真面な方だよ」

「ソヨさん達のパーティー?」

「アレ?まだライくんには話してなかったっけ?」



 気になることをソヨが言ったので、興味が帝都から彼女に映ってしまう。

 彼女と親しくはあるが、過去については、全く知らないのでもうキラキラな瞳で見るライト。



「私達が各々別のギルドで働くようになる前は〈四大元素(ワイルドエレメント)〉って四人パーティーで活動してたの。実は史上初のUランクパーティーだったりする。当時の高難易度未踏破ダンジョンを両手で足りるくらいは踏破したし、特災も100体近く倒した。ギルドの歴史に残る凄いパーティーだったんだよ?」

「へぇ~、全然知りませんでした」

「ま、昔のことだしね。で、そんなパーティーのリーダーだった私なんだけど。あのパーティー、正直よく続けられたなってくらい、混沌としてたよ」



 遠い目をするソヨの顔には、いつもとは打って変わって何の感情も出ておらず、壮絶な苦労が伺えた。

 そのような彼女の変化にも目もくれず、ライトは話を聞いている。



「トアは、しっかりしてる風に見えてズボラだから、お願いしていることでもやってくれなかったりしたし、勝手にお金を使ったりした。トゥールは反対に、少し尊大でふざけてるように見えて、言ったことは完璧にこなして、自分で言ったことも絶対にやり遂げる。まあそのやりとげるってことに固辞しすぎて面倒なとこはあったけど、トアよりはしっかりしてた」

「意外です。トアさんは、しっかりしてるかと思ってました……で、最後の方は?」



 ライトがそう言うと、ソヨはもの凄く顔を歪める。

 如何やら、嫌なことを思い出したようだ。



「スターはなぁ、悪い子じゃないんだけど……一番の問題児だった」

「最後の方はスターさんって言うんですね」

「スターは今、聖国の方でギルドマスターしてるんだけど……あの子は、一言で言えば"天然"。空気が先ず読めなくて、数える程に依頼主を怒らせたし、危険な場所へは無策で突っ込んでは、私達に助けを求める。それで報酬が増えたりもしたけど、大体は悪い方向にいって、無駄な苦労をしてばかり。何度注意しても、問題を起こす……心が折れかけたよ」



 少し身体を震わせて顔を青くするソヨ。

 やはり嫌な過去を思い出してしまったらしい。



「それでもまあ、あの天然さ、底抜けの明るさに救われた時もあった。もう一緒に冒険はしたくないけど、スターも確かな親友だよ」

「ふむ……ありがとうございます、ソヨさん」

「これくらい全然だよ……けど、何もしてない筈なのに疲れたから、私戻るね。はいコレ」



 ライトは、巻かれた一枚の紙を手渡される。

 妙に手触りが良く、ただの紙ではないというのは直ぐに分かった。



「コレは?」

「トゥールちゃんが送ってくれた紹介状、何もなしに宮殿入れないから。それを警備に見せれば通してくれるってさ」

「成程、コレを無くすと宮殿に入れなくなるってことですね」

「そういうこと、それじゃあまたね」



 ソヨが一瞬にして消える。また、転移したのだろう。



―――収納(シュウノウ)()巳蚓魑(ミヅチ)


「時間指定も無い処ですし、早いところ向かいましょう。面倒事は先に済ませるに限ります」

「はい、マスター……」

「ん?何かありました、ミスティ?」

「別に、です」



 ミスティアナの方へと視線を向けると、少し頬を膨らませていた。

 その様子は、珍しくも可愛くもあったが、明確に不機嫌を表している。



「あの、やっぱり何かしました?」

「いえ、何も」

(何も、ですか。これは何もしてないから、駄目だったんでしょうか……何にせよ、宮殿に着くまでに頑張って何とかしましょう)



 ライトは、宮殿でのことよりも先に頭を使わなければいけなくなった。



◆投稿

次の投稿は1/17(火)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

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