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3-3 突然ノ派遣依頼



 少し時進み。迷宮都市ラビル、ギルドマスターの執務室。



「朝早くに呼び出してごめんね、ライくん、ミスティアナちゃん」

「いえいえ、それでどんな用で?」



 いつも通り執務机に手をつけて座っているソヨは、少し疲れているように見える。

 だが、先に要件を済ませてからにすることにした。



「うんとね、ライくん、じゃなかった〈黒蛇白塗(ケーリュケイオン)〉にある依頼が来てるんだよ」

「僕達にですか?」

「正確には私のとこで、強くて良い子居ない?って感じで来てるんだけど、ベストはライくん達かなって思ったから呼んだの」

「ふーむ、どういう内容で?」

「ライくんは、派遣依頼って知ってるかな」



 聞いたことのないが、大体内容は予想がつく言葉にライトは、一応首を傾げる。

 ミスティアナも首を振っているようで、知らないようだ。



「派遣依頼?何ですか、それ。ギルドの基本依頼に書かれてませんよね」

「そうだね。ま、出されること滅多に無いからね。どんな依頼かと言えば、名前の通り、派遣されたとこで活動する依頼だよ」



 鷹揚に頷いて言っているが、情報が増えていない。

 言葉から予測できる以上の情報ではなく、ライトは少しソヨを呆れた目で見た。



「それ、普通の依頼なのでは?」

「内容はそうだね。でも場所が違うの。派遣依頼は活動場所が国、又は界を跨ぐ場合に使われるんだよ」

「ではやはり、内容自体は普通のものと変わらないんですか?」

「基本そうだね」



 何だ、とライトは溜息を吐く。

 何かしら特殊な高難易度の依頼かと思えば、普通だと言うのだから、拍子抜けと思うのも仕方ない。

 けれども、話は最後まで聞いてから判断すべきだろう。



「ま、今回の依頼『戦争で使える戦力の派遣』なんだけどね」

「ん?戦争?」

「そう、戦争だよ。帝国と聖国の間で、今度起こるらしくてさ。帝国に居る親友から、良い戦力ないかって依頼が来たの」

「…………」



 ライトの動きが止まる。

 全くそういうことは先に言えという熱い視線をソヨに黙って送った。

 しかしそこは流石ソヨ、動じずに見つめ返す。



「それ、一般に広がってる情報ですか?」

「その内こっちでも広がると思う。帝国と聖国でも確か明後日公表だった気がする」

「ふ~む、戦争ですか……面白そうではあるんですよね」



 戦闘好きのライトとしては、まだ経験したことのない戦争という名の大規模戦闘は、非常に興味をそそられた。

 のだが、手放しに受けることは出来ない。当然、不安要素があるからだ。



「けど、『戦争で使える戦力の派遣』ということは、誰かの、というか帝国の指揮下で行動することになりませんか?流石に行動制限とかは面倒なんですよね。そんなことするくらいなら、戦争に横槍入れた方が楽しそうです」

「そんなことしたら、指名手配されちゃうと思うけど?」

「ですよねぇ……この世界は面倒です」

「面倒なのはライくんのその戦闘への執着だよ」



 依頼についての不安要素を述べると、一転してライトがソヨに呆れた目を向けられることになった。

 何物にも縛られない単独・独断行動が好きなライトにとって、今回の依頼は性に合わないと言う他にないだろう。

 どうしようかと唸るライトに、ソヨが笑みを浮かべて言葉を投げる。



「実は、今ライくんの言ってた行動制限とかは気にしなくても良いよ」

「そうなんですか?」

「ライくんは依頼を受けて、戦争に参加するって形になるから、権限はギルドの方にあるの。あっちのギルドマスター、トゥールっていう私の親友なんだけど。私が色々頼んで、あっちで自由に出来るようにして貰ってるからさ。全然気にしなくて良いよ」

「へぇ~それは良いこと聞きまし……ん?待って下さい……もしかして僕が了承することを前提にして、先に結構準備してくれてたりしますか?」



 ソヨの言葉から、先々な配慮が感じ取れ、もしかしたらと思いライトは尋ねる。

 配慮をしっかりと明言して聞く。場合によってはかなり難しいことだが、この精神力お化けには関係ないように思える。



「まあね。私とライくんだって、もうそこそこの関係でしょ?大体どんなことを言うくらいは分からるからね。先回りしといたよ」

「ありがとうございます」

「でも、あくまでもこれは依頼。準備したけど、別に蹴っても問題無いからね。私、強制はしたくないからさ」

 


 と、真っ直ぐライトの目を見て言うソヨなのだが、全身から「頼むから受けてくれぇ~」というオーラが出ている。

 ソヨの言う通り、そこそこの関係のなので、大体どんなことが言いたいか分かるようだ。


 難色を示していたように見えるが、元々行く気満々だったライトは、不安も消えたことだし改めて行くことを内心で決めた。

 ヨルにも行かないという選択をすれば小言を言われそう、という理由もあったりする。


 ソヨに依頼承諾を伝えようとして、ふと思い出し、ライトはミスティアナの方を向く。



「一応聞くんですけどミスティ、依頼、受けますか?」

「マスターが受けるならば」

「やっぱりそうですよね……」



 〈黒蛇白塗〉への依頼なので、ミスティアナに聞くが、想像通り過ぎる答えが返って来た。

 ならば問題は無い、とライトは、



「じゃあ、ソヨさん。その派遣依頼、受けます」



 依頼を承諾する。



「本当ッ!いやぁ~ありがと、ライくん!実はさっさとしてくれって親友が五月蠅くてさ……最近よく眠れてないんだ……」

「その人、本当に親友ですか?」

「うん、昔から変わってない、しっかり区切りがつくまでずっと言ってくるんだよ。全く困っちゃう」



 そう言うソヨは笑顔であり、何となく「仕方ないなぁ」という雰囲気感じさせた。

 あまり見たことのないその顔に、微かに驚く。



「今日は此処まで、手続きはしておくから、また明日来てくれる?私が帝国まで送ってあげるから」

「どうやってですか?」

「神獣の力的なアレでだよ」

「何でもありですね……」

「そりゃ、伊達に長生きしてないってこと」

「はぁ、まあでは今日は帰らせて貰います。また明日、ソヨさん」

「失礼しました、ソヨ様」

「うん、またねー」



 気の抜けた優しい声を背に、ライト達は部屋を出た。



◆◇◆



 ヨルの残っていた、食堂へと戻って来た。



「と、いうことで戦争をする為に帝国に行きます。良いですよね?ヨル」

「戦争か……久しいな」



 話をした後のヨルの顔には、獰猛な笑みが貼り付いている。

 その様子にライトは若干引いていた。



「あの血生臭い雰囲気、我は大好きじゃ。然も、自由行動が出来るとなれば暴れ放題。我が力の誇示が存分に行えるという訳か……良い判断じゃライト」

「そこ褒められても反応に困ります」



 評価して欲しくない所を褒められるのは、非常に微妙である。

 そこで、ヨルの視線がライトを射抜く。



「ところでライトよ。お主から神の気配がする、何かあったか?」

「――それは私も思っていました。マスターから少し神聖な気配を感じます。ソヨ様ほど強くはありませんが、確かに感じます」



 ヨルの言葉が聞こえたのか、ミスティアナも反応してライトに近付いて来る。

 そんな匂いみたいに漏れてるものなのかと、ライトは驚いた。

 思わず自分の身体を見てしまう。



「目には見えぬぞ、ライトよ」

「むむぅ、僕も感じれるようになりたいですね」

「必要ありません。私の仕事が減りますので……それで、何かあったのですか?マスター」

「ま、まあ」



 やけに近くで話してくるミスティアナは、やたらとスキンシップが激しく、後ろから首元に抱き着いて来た。

 首に彼女の髪が触れ、くすぐったくなると同時に、身体が強張る。

 ヨルの影響が悪い方向に向かっているのではと、不安になるライト。


 だからといって、口に出してヨルを否定することも、ミスティアナを引き剝がすことも出来ない。

 ライトは、タナトスとのことを話すことにした。



「夢で神様に会ったんですよ――」

「――何ッ!?一体どの神に会った!」

「――マスターッ!その神様は女性でしたかっ!」

「ぐはっ!?ヨ、ル飛び込んでこな――ミス、ティ、首…が、しまっ」



 言葉に反応して、腹にヨルが飛び込み、ミスティアナの腕に力が入る。

 結果として、ライトの腹が抉られ、首が絞められた。


 二人を朦朧としていく意識の中、軽く叩いて行動を止めさせる。



「けほっ、こほっ、まったく、きをつけて、ください、ぼくが、しにます……」

「す、済まぬ…流石に驚いてしまってのう」

「済みません、マスター。少し動揺してしまいました」



 深く息を吐いてから、また深く息を吸い、身体の調子を整える。

 身体が持たないので、本当に気を付けて欲しいと思う。



「ふぅ……怖いので、さっさと言いますけど、会ったのは死神、タナトス様です。女性でしたよ」

「死神か、確かライトに祝福を与えていた神か?」

「ふうむ、死神様ですか……警戒対象に入れておきます」

「そうですね、もう祝福じゃなくて加護になりましたけどね。あとミスティ、顔が少し怖いです」



 またやられると困るので、聞かれたことを先に答えるライト。

 影のある顔をしたミスティアナには、反応せざるを得ず、口を出した。

 これに関しては、女性との関わりが多すぎるライトが悪いとも言える。



「それで、死神様とは何を?」

(無視していくんですね)

「少し戦闘して、新しいスキルを貰いましたね。良い神様(ひと)でした」

「なら、私からはこれ以上言うことはありません、ヨル様、どうぞ」

(いや、どういうこと……)

「そうか、ならばライトよ。死神について詳しく教えよ。我は神の情報は集めておく主義じゃ」

「はぁ、そうですか。別に良いですけど」



 ライトは知らない、この後のヨルの追及が余りにも長いという未来を。

 情報提供で、この日の時間は過ぎて行った。



◆投稿

次の投稿は1/15(日)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆蛇足

語り部「蛇王って、神々に封印さえたくせに、積極的に神を嫌ってる描写少ないよね」

蛇の王「まあの。実際のところどうなのかは、我には分からぬがな」

語り部「何で?本人じゃん」

蛇の王「何を言っておる。作中の我と後書きの我は、別人ならぬ別蛇じゃ。分かる訳なかろう」

語り部「いや我って言ってるじゃん。矛盾してるぞ」

蛇の王「でも違うのじゃ!違うったら違うのじゃ!」

語り部「圧すげーなおい」



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