第92話 華武羅番衆VSごぎょう②
「……」
今のライトの姿を確認したゲンゾウ。ヘラヘラとしていた面差しが鋭いものに変わる。
(こりゃ……ちょっとマジいな……待たなきゃ良かったぜ)
ゲンゾウですら警戒する、何らかの術をライトは使おうとしているようだ。
「おいゲンゾウ」
「……あん?」
すでに全身ボロボロのライトの筈だが、強い語気でゲンゾウに話し掛ける。
「俺の秘密兵器だ。……もちろん喰らってくれるよな?」
「……へっ! ……そいつぁ……放ってからのお楽しみだろ」
どことなく自信のない口調。ゲンゾウにそうさせるほどの雰囲気を匂わせる。
「はっ! ……さっきまでの威勢はどこ行ったよ? 行くぜ……雷霆忍術奥義!!」
そして、極細の雷が無数に生えた光弾が放たれる!
―雷天震綵花車!!―
「!!!!」
瞬時のその威力を察知。ゲンゾウは即、その場から離脱しようとする。
その場に術で土を盛り、逃げる時間を稼ごうとする。
しかし……
バチィィ――――!!!
「チッ!」
光弾から無数に生えている極細の雷に触れるだけで、盛ったであろう土は霧散する。
さらに目前に魔術で岩を作り出すも、雷が触れれば柔らかいものを手で掬うかのように削られていく。
「これは……!! やべえ!!!」
高く飛び上がり、無尽蔵の如く大岩を魔術で作り出し障壁にする。
やがて光弾はゲンゾウを通り過ぎ、極細の雷の射程距離からも外れていく。
「へ、へへ……危ねえ危ねえ。さすがにアレはヤベーわ。まあ、これでお前の気は空……」
「テッペぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
ゲンゾウが言葉を言い切る前に、ライトがテッペイの名を呼ぶ。
その意図が分からないが、まもなくゲンゾウはそれを身を以って知ることになる。
「うお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」
なんと、半死半生であったテッペイが立ち上がる。
だが光弾はゲンゾウが回避し、その直線状にテッペイが居るという状況。このままではライトの奥義がテッペイに当たることになるだろう。
「バーカ! 同士討ちしてんじゃ……」
ここでゲンゾウ、同士討ちを期待して煽るのだが、テッペイを視線に置いてから何かに気付く。だがもう遅い。
「受げどれ゛!!!!!! 忍法!!」
―鋼錬拳!!―
テッペイは術を使い、自らを腕……いや、腕だけではなく肩から鎖骨、首の下を通って鎖骨、肩と一本の棒のような形で鉄に変える。
そして間もなく着弾。テッペイは右手で光弾に触れるのだが、まもなく左手から光弾が現れる。
「ごぼっ……!」
つまり自身の体を使い雷を通し、光弾を反転させたのである。
もちろん体内に電撃が走ったことにより、テッペイにも大きなダメージとなる。しかもライトの奥義であることから、もはや彼は死に体となっているだろう。
しかし、窮鼠猫を咬む。
「……ゲェェェ――――!?」
気が付けば、間近に迫る光弾。ゲンゾウは姿勢を整えようとするも……
カッ!!!!!!!
間に合わない!
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
ゲンゾウに触れた瞬間、パッと火花が飛び散ったように見えた後、光弾が彼を包みあらん限りの電撃を加える。
ゲンゾウを中心した放電。極細の雷が周囲に放たる様は、美しくすらあるだろう。それを、すでにうつ伏せに倒れたまま眺めるライト。
「……これが……意地ってヤツだぜ……」
彼はそのまま、よろよろとテッペイの下へ向かう。
「大丈夫……か?」
「……………………お゛…………う゛」
体は全く動かないようだが返事はする。番衆の中でも、彼打たれ強さは別格か。
ホッとしたような面差しを見せる二人。
だがこれで終わるごぎょうの者ではない。
ズッドォォォォォ!!!!!
「っしゃっらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「!!!!」
苛立ちか、地面を叩く轟音と共に立ち上がるゲンゾウ。
「……今のは……死ぬかと思ったぜ!! ……テメーらぁぁぁ……もう、殺すだけじゃ気が晴れねぇ……」
「……」
まだまだ体力が残っている様子のゲンゾウ。
立ち上がりに驚きを見せたものの、すでに諦めた雰囲気のあるライト。
(……これまでか……)
万策尽きた。後は嬲られるだけ。するとライトは最後の力を振り絞り、ゲンゾウへ向かっていく。
「あ、ああ?」
「ラ、ライド……」
とは言え、足元はおぼつかない。走るとはほど遠い、歩みとも言える速さで向かっていく。ゲンゾウはそんな有様で自身に向かってくる彼に油断したのか、不可解さが見える眼差しで立ち尽くしている。
「よお……どうだった? 俺の雷の味は……よ……」
「ケッ! しつこすぎて吐き気がすらぁ! テメー、普通に死ねると思うなよ?」
「そうか……それじゃ仕方ねーや……」
するとライト、ゲンゾウにゆっくりと抱きつく。
「あ゛あ゛!? なんだよテメーは!!!!!」
「気付かねーのかよ。万策尽きたヤツがすることなんてひとつだぜ」
「!!」
ゲンゾウ、ハッとなる。
「は、はあ!? 雷霆忍術にそんなのねえだろ!!」
ここでようやく焦りを見せる。
あくまで格下と侮り、隙だらけであったことの代償だ。実際、ゆっくりと抱きつくライトにすら警戒していない辺り、何も考えていないことが分かる。
「無いものは……作りゃいいだろ。なーに、ちょいと……ありったけの雷……暴発させりゃいいだけだ……防いでみな」
「や、やめ、やめろ!!! ふざけんなテメー!! 離せよコラ!!!!」
ゲンゾウは術を使おうとしない。おそらく、身を守る鎧などを作り出したとしても、密着したライトごと包み込んでしまうことが予想出来るからだ。
そのためか、そのままライトを殴り続ける。
「どけよ!! どけ!! どけぇぇぇぇぇ!!!」
「ぬあああああああああ!!!!!!!」
ライトの全身から雷がほとばしる!
「ライドォォォォォ! やめろ……やめろォォォォ!!!!」
テッペイが叫ぶ。ゲンゾウはいよいよ涙目となる。
「う、うああああ!!!!! やめろぉ……や、やめろぉぉぉ……うあああ……」
そして、ライトの全身が輝きに包まれ、彼の姿すら隠してしまう。
その時。
ボコッ……バチィッ
「?」
「がぼっ……?」
二人が突如現れた巨大な水の玉に包まれる。
一瞬、水玉の周囲が放電したところを見ると、ライトが放とうとした雷が水に触れたことで霧散したのだろう。現に、輝いていた彼の姿が視認出来ている。
「だから行くなって言ったのよ!!」
怒り口調で現れたのは……
「ミ゛ナモ゛!?」
テッペイ、現れたミナモに気付く。
時を置かずライトも気付くのだが、その面差しは驚きというよりも怒り。
ミナモは術を解く。
すると水玉は弾け地面に落ち、大地に染み込む。
「バカ……野郎……絶好……の…………潰…………が……って……」
抱きついた手が自然と離れ、そのままゲンゾウの前で倒れてしまうライト。
「……はぁ、はぁ……」
暫し呆然とするゲンゾウ。よほど焦りがあったのだろう。だがやがて……
ドガッ!!
倒れたライトを蹴飛ばす。
大木に直撃し掛かるが、テッペイが無理矢理体を動かし受け止める。もちろん彼も限界だ。二人共、もう戦闘は不可能だろう。
「は、ははは! バカが!! 最後のチャンスをテメーらでオシャカにしてやがる!」
気を取り直せたのか、悪態をつくゲンゾウ。それを見たミナモは冷めた視線を彼に置く。
「はぁ? さっきまでビビり倒してたヤツが何言ってんの? かっこわるー」
「あ゛あ゛!? テメー如きが俺に向かって……」
無様な姿を晒した彼。それを誤魔化すかのように大声を張り上げるが、それがまた情けなさを強調している。
一人で捲し立てているゲンゾウを後目に、ミナモは倒れたライトとテッペイをジッと見つめる。
「ライト……テッペイ……頑張ったわね。最初から私も付いて行けば良かったのかな……ごめんね……」
「何ブツブツ言ってやがる! 一瞬でぶっ殺してやるから来やがれ!!」
さらに激高するゲンゾウ。
だが怒りが満ち溢れているのは彼だけではない。
「うっさいわねぇ、小物」
「あ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「私もとっくにブチ切れてんのよ! 覚悟しなさい!!!」




