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第91話 華武羅番衆VSごぎょう①

―すずな町~せり町 道中の外れ―



「オラオラオラオラぁぁぁぁぁ――――!」



一方でライトとテッペイ。

今まさにゲンゾウとの戦闘が始まっているのだが……防戦一方の様子。



ドドドドドドド!!!



「ぐ……ぐ……ぐぅぅぅ……」



両拳に岩を纏わせてテッペイを連続で殴り付けるゲンゾウ。

テッペイ自身は全身を術にて鉄化しているのだが、岩であるにも関わらずダメージを負っているようだ。



「チィ! だから離れろよお前!!! 忍法!」



雷襲牙(らいしゅうが)!!―



ゲンゾウに向かって、一直線に伸びる雷を纏った気砲。人の身長以上ある気の塊が唸りを上げて襲い掛かる。

と、ここで手をピタリと止め、ライトの放った術に視線を置きニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。



ドォォォ――――ン!!!!



そして術はそのまま直撃。ゲンゾウの居た場所を中心に、その奥の地形が削り取られる。一文字と二文字の差がよく分かる威力である。



「そう慌てなさんなって。コイツぶっ殺してから遊んでやるよ」



だがゲンゾウ、岩を纏った手でそのまま受け止める。手から肩にかけて焦げ付いているものの、ダメージらしいダメージはない様子。



「嘘だろ……?」



嫌な汗が止まらないライト。この時点で、テッペイはすでに這う這うの体。今のところ勝ち筋が見当たらない。



「よぉーし! まずは一匹終わらせるぜ。俺は姉ちゃんみてえに出し惜しみはしねえからな!」



―ストーンフォール!!―


―ストーンフォール!!―



魔術を二度使用するゲンゾウ。突如上空に現れた大岩がテッペイを襲う。



「く、くそ!! テッペイ避けろ――――!!」


「う、ぐぅ……」



ダメージの所為で上手く体を動かせないのか、見上げたままのテッペイ。

そのまま岩に沈められるのか……と思いきや?



「オッラぁぁぁぁ――――!!」


「……な、何を!?」



どういう訳かゲンゾウがその大岩に向かって飛び上がる。

もちろん傍目からは直撃。大岩は割れ、そのまま落下してゆく。



「なんだアイツ!? バカか!? ……いや、でも助かっ……?」



自滅したかのように見えたゲンゾウ。

だがよく見ると、割れた大岩が彼の下に集まっていくような印象である。



「ぐ……う……今のうぢに……」



ゲンゾウが何かをやっている間に、距離を取ろうとするテッペイ。

だが岩が割れた際に発生した砂煙のようなものも晴れ、彼が何をしようとしたのかその全貌が明らかになる。



「なんだよアレ……」


「あ……ああ……」



それは二人にとっての絶望。何故なら、現れた大岩を砕き自身の手に改めて纏わせ、両手それぞれが自身の体の数倍もある巨大な手に変化していたからだ。



「逃げろテッペイ! そんなもん振り回せやしねえよ!!」



ライトの言うことは的確だろう。そのような岩で出来たような巨大な何かを、振り回せるなど到底考えられない。だがゲンゾウはその醜悪な笑みをさらに色濃くする。



「ば~~~~か! 自分で操れねえ術を使うかよ」



そう言うと片手をブンブンと振り回す。



「……」

「……」



二人は絶句。そしてそのままゲンゾウは、テッペイ目掛けて落下する!



「死ねよ!!!! 土々(どど)煉術……」



―ダブル岩呑掌(がんのんしょう)!!!!―



ズドォォォォォォォ――――ン!!!!



「テッペぇぇぇぇ――――!!!」



地面に穴を空けるような破壊力。テッペイごと穿つ。

その後は両手の岩がバラバラと崩れ、素手に戻るゲンゾウ。



「へー、やっぱ番衆だけあるわ。鋼錬拳で受け止めて、牢将鎧(ろうしょうがい)で守ったか。これで死なねえなんてちょっと傷付くぜ」



またしても発生した砂煙。それが晴れた頃には、ゲンゾウが穿った穴の中心で倒れているテッペイが確認出来る。

ゲンゾウの言うとおり、差し出したままの両腕は鉄色となり、さらに全身が金属のような様相となっている。しかし与えられたダメージは深刻のようで、すでに意識はないようだ。



「テッペイ………………クソ!」



目を瞑り、悔しさを滲ませるライト。

そしてゲンゾウは倒れるテッペイを確認した後、ゆっくりとライトに視線を置く。



「へへへ……とりあえずコイツはもういいな。後でじっくりぶっ殺すとして、今はてめえを始末するぜ」


「……!」



すると右手で印、左手に褐色をまとわせるゲンゾウ。



「遠距離だってお手のものだぜ? 土々煉術ぅぅぅ~」



―砂塵ブラスト!!―



もはや遊びのつもりなのだろう。わざわざ煉術を強調するかのような言い回し。

だがその威力は冗談ではなく、ライトに向かって夥しい砂が襲い掛かる。



「くっ……忍法!」



雷気泡(らいきほう)!!―



術の発動と同時に、ライトの周囲に薄い黄金色の膜が現れる。時折放電していることから、雷で生成したものなのだろう。



ビシュ! ビシュビシュ!



「ぐあああああああ!!」



だがゲンゾウが放った砂がそれを容易に貫通。ライトに無数の細かな傷を与える。

彼は全身から血液が噴き出し、片膝を付いてしまう。



(砂の一粒も防げねーのかよ……俺ってこんな弱かったっけ……?)



出血のためか、少しよろめくライト。

ゲンゾウにまるで歯が立たない自身に疑問を投げ掛ける。



「まあ、こんなんじゃ死なねえよな?」


「……!!」



しかしそんな事を考えている暇はない。

すでにゲンゾウは目前にまで迫り、再び両拳に岩をまとわせそれを前で組み、大きく真上に振りかぶる。



ドゴッッォォォ!!



「~~~~~!!!!!」



ライトは避けようとするも時間が足りず背に直撃、声にならない痛みが彼を襲う。



ゴッッ!!!



「がはっ!」



そして、前かがみになった彼の顎を、ゲンゾウは膝で跳ね上げる。



「ッシャァァァァ!!!!」



ドガッッ!!!



「……!!」



さらに跳ね上がった顎に狙いを定めて、拳を打ち付ける。



「そんでもってぇぇぇぇ~……忍法!」



壁斯楼(へきしたかどの)!!―


轟岩吼(ごうがんこう)!!―



拳を打ちつけられたライトが奥へ、水平に吹き飛ばされる。

だがその向かう先に突如現れる、そびえたつ石の壁に衝突してしまう。


その衝撃には何とか耐えた様子の彼だが、その眼を見開くと自身に向かう厖大(ぼうだい)な岩が視界に入る。



ドッ……メキメキメキ……



「あ……が……がが……」



石の壁と大岩に挟まれ、全身の骨という骨が軋む……と言うより、すでに多くの骨折が見られる。

その衝撃で石の壁は割れ、ライトは力なく地面に倒れ鬱屈する。



(……無茶苦茶な……強さじゃねーか……なんだよコレ……こんなに差があるのかよ……)



心が折れ掛かる。立ち上がる気力も出ず、そのまま倒れ込むがゲンゾウはそれを許そうとせず歩み寄ってくる。



(駄目だ……殺される……ミナモの言った通りだぜ……けどよ……)


「お?」



ライトは振り絞り、立ち上がろうとする。興味を惹かれたのか、ゲンゾウはその場で立ち止まる。



「へっへー、やっぱ番衆となると、これでも立ち上がって来るのな。ま、あっさり沈まれてもつまんねえから助かるけどよ」


「……」



ゲンゾウは舌なめずりをしながら軽い口調で話すが、ライトの耳には入っていない。



「テッペぇぇぇぇぇぇ!!! いつまで寝てやがる!!」


「!!」



突然の叫び。意識のないテッペイの指が微かに動いたように見える。



「おおおおおおおおおおおおお!!」


「へー、まだ何かやってくれんのか? いいじゃんいいじゃん!」



掛け声と共にライトの体が雷に包まれる。



(……そういや一揆に入ったのも才能があるとか、二文字になるのが早かったとか、あんまり自分の意思は無かったよな……流されるままだった)



バチバチと音を立て、時間経過と共にますます増強していく。



(その後は平凡な日々だ……妖怪ぶっ倒して持て(はや)され金貰って豪遊して……好き放題生きてきた……)



やがて雷はまとまりを見せ、ライトの周囲で安定し始める。



(毎日結構忙しかった気がするのに、何もすることが無かった……訳分かんねえな。目標もありゃしねえし……ほんとつまんねー人生だぜ)



そして美しい球体となり、ライトを中央に置く形となる。



(ただひとつだけ言えんのは……そんな俺を受け入れてくれたあの町が結構好きだったことだ。能面にも話したが、これは俺の本音なんだよ……)



彼はそこで気勢を高める。



(理由……それだけじゃ駄目か? 結構好きな町を守る……結構が余計だが、番衆の答えとしちゃ悪くねえだろ……へへへ)



膨大な雷と気勢を纏ったライト。その眼差しは……とても熱いものであった。

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