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第70話 ごぎょう出陣

―ごぎょう町 ごぎょう神社―



「ごめんなさい兄ちゃん……」



場所は変わり、ここはごぎょう神社。

ハクフがスザクに対し、平身低頭となっている様子。



「ったく、バカだねー。まだ一揆に手を出すのは早かったんじゃね? しかも倒したヤツをそのままにしとくとか、ほーんと何も考えてねーな」


「う、うっさいわねぇ! ケンカ売ってんの!?」


「うへー怖ぇ怖ぇ。つーか前から思ってたんだけど、そもそも一揆の中枢へ買い物に出掛けるとか一体何考えてんのって感じ? 兄上もそう思わない?」



それを傍から見ているゲンゾウが、彼女を茶化すように駄目出しをする。ハクフは少々涙目となっているのだが……



「構わん。少なくとも今回の件についてはな」


「へ?」



特にスザクは、ハクフを責める気もないようだ。ゲンゾウは拍子抜けか。

それどころか彼はニヤリと口角を吊り上げ、嫌らしい笑みを浮かべる。



「煉術の試験は前回分ですべて終えている。後は実戦でのデータ収集を残すのみだったのだが……丁度いいタイミングだった。しかも番衆が相手ならそのデータに不足はない」


「ど、どーゆーこと?」


「ハクフ。番衆との戦いを詳しく教えてくれ」


「う、うん。いーけど……」



ハクフは当時の戦いを、スザクへ詳細に伝える。




※※※




「ふむ。土のタイガとやらは名前しか知らんが……圧勝と言っていいだろう。番衆相手でも煉術の使い勝手は変わらんか?」


「そりゃもうバッチリ! あたいの猟獣忍術にピッタシだわ! てゆーか相手土属性だし、ゲンゾウで慣れてるしー」



さらにスザクはハフクへ質問を繰り返す。彼女は()()()()()()()()()感じの返答をしていくものの、そこはきょうだいなのか理解出来ているようだ。

ハクフのインスピレーション的な返答をスザクがかみ砕き、彼の側に置かれている数名がその言葉を書き記していく。


その後、スザクの質問が止まる。彼が手を上げたと同時に、側近の者たちは潮が引くように散る。



「うむ。もうこれだけでも十分だな」


「え? じゃあ……」


「現時点で我々は、一揆の戦力を大きく上回ると断定する。フウマだけは少々厄介ではあるが、ヤツさえ抑えてしまえば取るに足らん」



さらに嫌らしい笑みが色濃くなるスザク。

だがここで、ゲンゾウが何から疑問を抱いたようだ。



「でもさ兄上、ウチは兵が雑魚過ぎるんじゃない? まさか俺たちだけでやるっての?」


「兵など最初から当てにしていない。使えるまでに至るのはまだ数年は掛かるだろう。……ということで、ここで白豚共に働いてもらおうじゃないか」


「お? てことはジェネラル……だっけ? そいつらが来るんだ? よくあの豚頭が承諾したね」



豚頭……おそらくプレジデントのことだろう。



「私にもよく分からんが、話の流れで白豚の連中はとある東国人を探していることが分かってな。話を聞いてみればどうだ、あのクズの連れ合いと言うではないか」


「リュウシロウの? てか、連れ合いって女?」


「そのようだが……ゲンゾウ、余計なことをするなよ? 下手なことをして、我々が行動を起こす前に白豚共から攻めてくるようなことになれば面倒だ」


「あ、あははは! 分かってるよ兄上」



女性に対して『余計なこと』。ゲンゾウがどういう人物なのかはあまり考えたくないところだ。



「でもさ、その女が一体何なの? 何か目的があるんでしょ?」


「そこについては口を割らなかった。まあどのみち我々には関係がないことだ。女を捕まえるついでにヤツも白豚共に捕まえさせればいいだろう。報告では西国人も居るようだが、どういう関係なのかは不明だ」



やはり、イズミ一行はある程度調べられている様子。

リュウシロウが居ることから、それはやむを得ないことだが。



「あ、そういやタメノスケから報告あったね。アイツ何処行ったの?」


「気脈を破壊した後に放り出した。後は知らん」


「器用だねー。さっすが兄上! それにしても、その場で燃やさなかったなんて優しいじゃん」


「情報そのものは有益だったからな。三文字の件は信用に値しなかったが……。私も慈悲の心はあるさ……クク」



かつてイズミが苦戦した相手、タメノスケはすでにお祓い箱となっていたようだ。スザクを信じていた彼の心境は如何に。



「とりあえずクズの話はここまでだ。さて、これより一揆と合間見えてもらうとするか」


「さんせーい! 腕が鳴るぅー!」


「姉ちゃんやっぱ反省してねーな」



軽口を叩きながら、ハクフとゲンゾウは装備を整え始める。


ごぎょう神社長女、ハクフ。

髪は黒と黄のツートンカラーのセミロング。肌は浅黒くツヤがあり、小顔の丸目で一見健康的な美少女に見えるのだが、口を閉じても僅かに伺える牙のような八重歯が肉食獣を思わせる。

紅葉色を基調とした忍者服を纏うが、その上から胸部や背中、肩、肘、膝等に薄手のプロテクターのようなものを装着しているという一風変わった出立ち。


ごぎょう神社次男、ゲンゾウ。

茶褐色の髪が無造作に、うなじと額を覆うほどに伸びている。そのため基本的には隠されているものの、時折覗かせる片目が鋭く怪しく輝く。

薄花色を基調とした忍者服を纏うが、返り血なのか至るところに黒いシミが見られ、衣類のデザインのように見える。



「よし。ハクフとゲンゾウはすずな町へ向かい、番衆を殲滅しろ。雑兵は向かって来る者だけでいい。フウマの所在地が不明だが、少なくとも周辺に居ないことは確認済みだ」


「はーい! 町ごとやっちゃうの?」


「町そのものも町人たちも、我々にとって貴重な今後の財産だ。極力手を出すな。一揆も、番衆以外は痛め付けるだけでいい」


「じゃあ始末するのは番衆だけだね。皆殺しでいいの? 頭領は?」



ゲンゾウの問いに、少し考える素振りを見せるスザク。



「……番衆はそれで構わん。頭領は、可能なら生捕りしろ」


「可能って……アイツなーんも術使えないじゃん。楽勝じゃない?」


「ここ最近、姿をくらましているようだ。現地でもお前たちの忍術の特性上、発見は難しいだろう。ついでくらいに考えておけ。放っておいても、ヤツには求心力もなければ人望もない。捨て置いて……ああ、そうだ」



指示をする最中、自身の言葉により何かを思い付いた様子のスザク。



「ゴウダイだけは必ず殺せ。人目に付かんところでな。ヤツだけは、生かしておくと後々大きな障害となる」



会話の流れから、ゴウダイの求心力と人望を危惧したか。

実際、民から慕われる者を公に殺害した場合のデメリットは大きいだろう。今後ごぎょう神社が東国を治めたところで、彼らにとっての不穏分子に悩まされる可能性も十分に考えられる。

この事からごぎょう……いやスザクは、今のところ東国を力のみで支配する気はないようだ。



「リュウシロウについては、白豚共が到着し次第向かわせる。報告のとおり数はあのクズと女、西国人の三人。しかも女は力忍術、西国人は風の一文字だ。お前たちは必要ないだろう」


「力忍術ぅ? そんなの数に入らないじゃん」


「たしかにな。そんな女、履き捨てるほど居る筈だが……白豚は本当に何を考えているのか分からん」


「でもほんとにいいの? リュウシロウの方を優先しなくてさ」



どうやらごぎょう神社の方針としては、番衆の殲滅よりもリュウシロウの確保の方が優先されるようだ。もっともそれは、リュウシロウの胸先三寸でごぎょうの築き上げたものが崩壊することから仕方がないのだろうが。

なお時系列上、情報が古い。現在のイズミたち一行は……



「本来はそちらを優先したいところだが、今回は連中に直に手を出させ()()()()()。あのクズも我々を恐れて特に動く気配もないしな。……借りというのは重要なのだ……ククク」


「ほーんと兄上は策士だなぁ。リュウシロウに、その一割でも頭があったらここでも居場所あったのに」



ここに居る者たちは、家出をした以降の彼をまったく知らない。

そして話が終わったのか、ハクフとゲンゾウはごぎょう神社を出るべく歩を進める。



「ゲンゾウ、いっくよー!」


「分かってるって。さーて、ぶち殺しに行くとしますかね」



たった数年で、東国を束ねる天津国忍一揆と同等の立場を確立し、東国一の戦闘集団と呼ばれた華武羅番衆をすでに二名撃破したごぎょうの者たち。


長男、長女、次男で構成されるきょうだい達の内、それを直に成し遂げた長女と次男が……ついに出る。

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