表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/518

第46話 ごぎょう神社の目的

重く沈んだ宿の一室。イズミ、リュウシロウ、トム、フウマの間に沈黙が続く。

ぽん吉はイズミの傍らで、今にも嘶きそうだ。ムリョウの話が主題だからか。



「……般若の能面……とな……」


「ああ。悪尉じゃなく、般若なんだけど……そんなとんでもない奴がムリョウの他にも居るのか? いや……ムリョウが悪尉の能面を被っているだけかも……」


「たぶんそれは無えな」



ムリョウについてイズミは話したのか、腕を組み考える素振りを見せるフウマ。

そこにリュウシロウが、『たぶん』と頭に付けるものの何か確信があるかのような雰囲気で会話に入る。



「もし能面が複数人居るって思わせたいってんなら、すでに俺らが……主にイズミとトムが、もう何人かの能面と戦ってる時点でそれは分かってんだ。あえて演出する意味は無えと思うぜ? そこに気付かねえタマじゃ無えだろ。


んで複数ってだけじゃなく、強え奴がたくさん居るって思わせたい可能性も考えられるが、ムリョウ自身がアホみたいな強さの時点でぶっちゃけこれもやる意味が無え。一人で、誰が何人居ても勝てるんだからな。実際、ゴウダイと居た時にゃ一人でやって来た。


てか、何をやるにしてもムリョウとして……つまり般若として動いた方がいいだろ。あの野郎は居るだけでバカみてえに説得力があるからな。いちいち姿を偽る理由が無えよ」


「ツマリ悪尉の能面は、ムリョウサンとは違う誰かノ可能性が極めて高い、ト?」


「極めてっつうか、完全に別人と考えていいだろうな」



皆、リュウシロウの考察に対して特に意見がないようだ。要は納得している印象である。

そんな彼を見たフウマは、感心したように口を開く。



「頭の回る小僧じゃのう……ごぎょうの小倅(こせがれ)とは言え、他の阿呆共とはまた違った毛並みだの」


「…………」



少し間を置くリュウシロウ。



「あん!? 何で俺のことも知ってんだよ!!??」


「空を飛んで行ったごぎょうの阿呆、その足あとにお主ら、数年前に突如行方不明になったごぎょうの三男、さらにその三男は忍術がからっきし……ここに来てすぐに確信を得たわい」


「さすがによく調べてんな。……腐れ神社絡みだからしゃーないけどさ。だけどよ、何で俺が弱いことまで分かるんだよ……」


「お主を探ってみたが気脈がてんでバラバラ、まともに通っとる場所の方が少ないわい。それで満足に気など練れんじゃろ」


「が――――!! 勝手に人の中身見んな!!」


「その、この世の忍を全て見渡してもまず見当たらん傷だらけの手は……せめてもの抵抗か。苦労しとるのう、お主は」



リュウシロウが、ごぎょう神社の管理者たちの身内だとフウマにはバレている模様。

少々怒りを滲ませる彼だが、それはあまり掘り返されたくないからなのかもしれない。



「まあどうでもいいよ。そんな昔のこと今更……てかよじいさん、華武羅番衆ともあろう方が俺たちに何もかもペラペラ話していいのかよ?」


「別に構わん。言う言わんはワシの勝手じゃい。むしろお主らの方が有益な情報を持ってそうだしの。取引としておけばいいじゃろ」


「……ったく……自由過ぎるだろ。好き放題しゃべるし腕章もして無ねし、勝手の人の飯は食うわ茶は飲むわ……もう半分ボケてんじゃねえのか?」


「無礼なことを言うではないわ小僧!! ……ちなみにワシ、腕章は免除されとる。立場上動きが独立しておるし、わざわざ一揆の関係者とバラしておったら仕事にならん任務も抱えておるでの」



つまり、フウマにはそれだけの権限がある、また特殊な扱いということだろう。

まもなく彼は、何かを思い出したかのように口を開く。



「あー、そういや肝心な事言うの忘れとった。お前さんたち、ごぎょうの阿呆共と関わっとるじゃろ? ……んまあ、この枯れネギ坊主が居るのでは仕方がないがの……」


「妙な名前付けるんじゃねえよ!」


「での、あの連中……近頃不穏な動きをしていると探ってみれば……」


「西国と関わってるって話だろ? んで、魔術の普及に躍起だ」



間髪入れず答えを述べるリュウシロウ。

これまでの流れから、自信と確信を持っている様子だ。



「まー、知っておるわの……」


「いろいろ話してくれた礼だ。今のところ分かっている範囲だが全部言っておく。あのクソカス共の目的は、東国にお手軽な魔術を普及して忍術、忍たちを世間から自然淘汰すること、且つ自分たちだけで忍術を抱え込もうって算段だ」



イズミとトムにも改めて把握して欲しいのか、皆を見渡してからさらに彼は言葉を続ける。



「だが強くなりたいとか、仕事以外に忍術の価値を見い出しているヤツまで淘汰することは出来ねえよな。しかもクソカス共からすれば、そんなヤツらは今後の支配に対して脅威になる可能性がある。


そこで、自分たちだけで忍術を抱えようとするだけじゃなくて、そこに魔術を融合して新たな力を手に入れようとしてやがる。タメノスケがやってたろ? 同じ忍術でも、魔術が加算されりゃ同等の相手にも上回るって寸法だ。


となりゃ、ただでさえ化物揃いの腐れ神社だ。もう手に負えねえし、東国の支配は待った無しだ。西国の支配も視野に入ってんだろうな」



リュウシロウはこれまでの流れの中で、ごぎょう神社の真の目的辿り着く。

フウマは黙って頷いている。納得した様子が見られることから、リュウシロウの答えはある程度想像出来たのだろう。



「ナルホド……タメノスケサンが使ったアノ技は、ごぎょう神社の研究の成果、ト。煉術……デシタカ。驚きマシタよ、忍術と魔術を混ぜてくるナンテ」



魔術を良く知る西国人のトムだからこそ、余計に驚きが大きいのだろう。

しかし未だに残る疑問がひとつあり、イズミはそれが気になったようで口を挟む。



「あのさ……そんな状態ってことは、ごぎょうの連中ってめちゃ忙しいよな? 何で今頃リュウシロウを付け狙うんだ? そんな事やってる場合じゃなくないか?」


「今だからこそ、俺を狙うんだよ」


「?」



この質問が出ることが、予め分かっていたかのよう答えるリュウシロウ。

呆れ返った感じを示しながら、彼女の質問に応答する。



「今ごぎょうのカス共は大変な時期だ。魔術の普及に研究、そんで西国のヤツと能動的に関わって行かなきゃならねえ。少数精鋭が仇になってるって言ってもいいだろ」


「元はたったの三人だもんな」



たった三名で、ごぎょうの名を売ったその実力は賞賛に値するのかもしれないが、組織としての力は皆無と言えるだろう。



「そう。だからそんな重要な時期に、俺にあれこれ吹聴(ふいちょう)されると困る訳だ。……特に過去の所業とかはな……」


「口封じ……デスネ。ですが、リュウシロウサンが一人で騒ぎ立てたトコロで、影響なんて大したコトは無いのデハ?」


「ところがぎっちょん、俺にはコレがある」



そう言うと、リュウシロウは懐から何かを取り出し木机の上に置く。



「コレは?」



彼が木机に置いたのは、握れば見えなくなる程度の大きさの、ガラス玉のような何か。



「……あれ? これって、そこの神社の神主さんが持ってたやつ……」


「お? イズミ知ってんのか?」


「神主さんが、神社の管理者の証明みたいなものだって……」


「そのとーり。これは宝玉っつーんだけど、コイツがあれば民衆に俺が神社の関係者って思わせるのに苦労が無え。そんで神社ってのは神聖な場所で、その関係者も一定の敬意を払われる。つまり俺が一人騒ぎ立てただけでも民衆は信じ込んじまうし、それがカス共にとって致命傷になる可能性もあるんだよ」



リュウシロウ以外、『なるほど』といった表情。

ごぎょう神社の身内が極めて忙しい中、戦闘に不慣れな兵隊を使い町をいくつか跨いでまで彼を探していた理由が判明した。

だがイズミには疑問が残るようだ。



「この玉にそんなすごい意味があるのは分かったし、めちゃくちゃ綺麗だけど……このくらいなら偽物を作れそうだぞ? ガラスだろ?」


「そーかな?」


「……え?」



宝玉に対して疑念を抱く彼女だが、リュウシロウはにんまり。手で宝玉を握り少しだけ力を込める。

すると僅かに輝き出し、明るい室内でもぼんやり光っているのが分かる。



「は、はあ? 何をしたんだ? ガラスじゃない……? 何で出来てるんだコレ!?」


「あー……アレだ。ロストテクノロジーってヤツだ。俺の〇ンカスみてえな気でもこうやって反応すんだよ。神社に宝玉自体はいくつかあるんだが、何時の時代に誰が、どうやって作ったかなんて分かりゃしねえ。素材についても謎が多い。()()()()()()()()とは言われているけどな。言い伝えでは本殿にある……あ、今は関係ねえからやめとくか」



少なくとも、ガラス玉ではない特殊な鉱石のようだ。彼の言い方からすると、とても偽物など作れないといった印象。彼はこの宝玉についてもっと何かを知っているようだが?


そんな中、トムが別の疑問を抱いた様子。



「ソレハ……必死にもなりますネ。築き上げてきたモノが、たちまち崩れ去る可能性がアルんですから。デスがリュウシロウサンは、特にごぎょうの方々の所業を吹聴スルようなコトしてませんよネ?」


「そこから足が付いちまう可能性があるし、そもそもからして告げ口みたいでヤなんだよ。それに……下手すると、俺の話を聞いちまったヤツが危険な目に遭うかもしれねえ……」



後半の発言が本音なのだろう。

自身の危険もそうだが、誰かが巻き込まれることをひどく恐れているように見える。



「連中は、今のところはこべらのような観光地に用は無い筈じゃからのう。小僧を見てピーンと来たわい。そして魔術か……面倒なものを仕入れてくれたもんだわい……」



ごぎょう神社にとってのリスク。それはリュウシロウそのものだった訳である。

フウマもごぎょうの動きに納得した印象だが、鋭い目付きに変わり言葉を続ける。



「それにしても、魔術についてもお主らの方がよく知っとのう。ワシからはもう提供出来る情報がない。……じゃが、枯れネギ坊主を守りきるには……」



そう言いつつ、イズミに視線を送るフウマ。



「いささか戦力不足じゃの」


「!!」



彼女は即座に怒りの形相となるが、それは瞬く間でありまもなく沈下。今現在の、自身の実力については先ほど思い知らされたばかりだ。



「……ボクが……弱いのか……」


「お、おい! クソジジイいきなり何言いやがる!!」



意気消沈のイズミ。リュウシロウが食い下がる。

その瞬間、鋭い筈だったフウマの目付きが穏やかなものに変化し、ずいっと彼女に顔を近づけてさらに話を続ける。



「ほっほっほ。こういう場合、何をするかは決まっておろう?」


「???」



皆を見渡すフウマ。

数秒後、頃合良しとばかりに一言……



「修行じゃよ修行」


「しゅ、ぎょ、う…………修行!?」



自分で勝手にやる分には当たり前のようにやっているが、誰かから言われる分には不慣れなイズミであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ