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第427話 野望潰えるとき

拳を振り回し。アスモデウスに近付くルーク。



「うう!? ぐ、ぐうう……」



その歩幅に合わせるかのように距離を取る……いや、取らざるを得ないこの悪魔。

正体の分からない力を当てられ復元、再生しない自身の身体を一瞥しながらずりずりと後ろに下がる。



「どーした? まだ引き出しがあんだろ。それを出してみろよ」



そんなアスモデウスに挑発をする彼。

全てを上回ってぶん殴る……そんな姿勢が見られる。



「ち、調子に乗りおって……!! 今や私は……本体を得た今、同胞の中で最も強者なのだ!! 貴様……如きに……!!」


「へー……ならデヴィルっつーのは大したことねぇんだな。テメー如きが最強? 笑わせんじゃねえよ」



歯ぎしりをする自称最強の悪魔。いや、確かにこの者の地獄では最強なのかもしれない。現に、この状況に陥るまでルークを軽く見ていた。それは奢りであり、その奢りとなる背景がある筈なのだ。


つまり、この地に訪れるまでは無敵だったのだろう。


だが東国へ来てからと言うもの、イズミたちからは逃走し本体ではないとは言えムリョウに完敗している。どうにも敗北を認めない性格のようだが。


そしてこの度のルーク。

自身の力が、最強を自負する自身の能力がまるで通用しない。所詮は井の中の蛙でしかなかったのである。



「……」



だがその悪しき眼差しの中に光るもの……そう、切り札を予感させる何かがある。



「いいだろう……クク、プレジデントのものと同じに見ているなら、貴様はその身が砕け散ることになるぞ?」


「……」



そう言うと、これまでの中で最も強い気勢、瘴気を上げるアスモデウス。



「ククク……サタン様の腕は1本ではないのだ!! そして今や私の手は四本……そこに居る者共ごと消えてしまえぇぇぇ――――――――――――――――!!!」



悪魔王の(サタナイル)両腕(ダブルクロー)!!―


悪魔王の(サタナイル)崩攻(デストロイ)!!―



なんと、自身の両腕とその胴体から生えている……つまり、これまでプレジデントが両腕として扱っていたもの、計四本の腕を黒光りさせる。


たちまち周囲は、黒い炎に包まれてたちまち灰となって消えてしまう。さらに上部に立ち上りとてつもない威力を予想させる。



「ハ――――――――ハッハッハ――――――――!!!!!!」



そして、その恐るべき凶器が襲い掛かる。

拳が大き過ぎるため、その全てがルークに当たる訳ではないのだが、そもそもそれを目的としていない。この周辺を消し去る、まとめて始末する、そんな意図を感じる……


のだが?



「……?」



命中した際の音がしない。ただ四本の腕を出しただけ……そのように見える。


だが時を置かず気付く。


もうこの悪魔の実力で対処出来る相手ではないことを、無理矢理認識させられる。



「な……な……なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――――!?!?」



四本の腕を引き、首を右往左往させるアスモデウス。

それも当然だろう。放った拳が……腕まで消え去っているのだから。



「な、何故!? 何故消える!? 何をしたのだ貴様!!!」


「何もしてねーよ。俺に近付いた時に消えたんだろ?」


「……あ……ん?」



つまり、ルークの輝きに触れた瞬間、アスモデウスの最高の攻撃は何を放つこともなく腕ごと消えてしまったということ。



「ひ、ひ、ひぃぃぃ……」


「し、し、しょ……しょんな……ア、アスモ……デウス……」



よだれを垂らし、消えた手をバタつかせ情けない面差しをする無敵を自称する悪魔。そして主導権を手渡したプレジデントも鼻水を垂らしつつ、何度もアスモデウスに視線を置く。


『圧倒』。これに尽きる。

ルークはもうその程度のレベルではないのだ。気持ちを力に変えるこの男のそれが、最高に高まっている今……もはや悪魔最強など敵ではない。


悪魔の力を得て、傍若無人に振る舞ってたプレジデント。

そして、人間を侮り地上を支配しようと目論んだアスモデウス。





この二人に、鉄槌が下る時が訪れる。





世界(ここ)に……テメーらの居場所なんてねぇんだよ……」





その一言を放つと、両腕を交差させ集中するルーク。


するとその虹色の気勢が天高く上り、あらゆる場所から見えるほどの規模となる。





「おおおおおぉぉぉ――――……………!」






※※※




―東国の町々―



ほとけのざ町だけではない、すずな町、せり町、ごぎょう町……さらには最東端であるすずしろ町の住民にもそれが見えるようだ。



「……なんだアレは……?」

「虹……」

「真っ直ぐ上ってるぞ!?」

「綺麗……」

「なんという美しさだ……」

「うわー! キレー!」

「ほへぇぇぇ……」



皆、各々で所感を述べる。見る者全てを魅了するその美しさは形容し難い。


さらに、戦いの場から離れた洞窟の入口では……



「……」



ムリョウだ。

いつの間にか外へ出ていた彼女。凄まじい気勢に反応したか。



「どうだ? ムリョウ。あれがルークだぜ?」


「……」



リュウシロウも隣へやって来る。

笑顔を見せ、仲間を自慢するような素振り。ムリョウは暫し間を置いた後に口を開く。



「……得体の知れん男だとは思っていた。……一体、何を力に変えているのだ……」


「アイツの場合、テンション上がらねえとダメダメだからな。大方実ったんだろ?」



実った……それは白丸とルークの恋事情。



「実った……? よく分からんな……」


「お前もその内分かるっつーの。ぜーんぶ片が付いた後でな」



その言葉を途中まで聞き、ムリョウは洞窟へ戻っていく。



「くだらん……何もかもが終わろうとするこの折に……」



そう呟きながら暗闇に消えていく彼女。

その際にもう一度気勢が上がる方向に振り向き、思う。



(なんという時代だ……オフィサートマスといいゴウダイといい……私と並ぶ、超えるものが続出している)





(ルーク……この男に至っては……もう()()()()()()()()へ……)





※※※




「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



場所は戻りルーク。

まだ上がる。恐ろしい勢いで気勢が上がり続ける。


そして、放たれた気勢が彼に集約するように戻る様相を見せた後、虹色の炎を纏うような姿となる彼。



「な、何故だ……何故だ……こんな男が……ジェネラルの末端だったルークが……」


「あ、ああ……あ……あ……」



共々動けないプレジデントとアスモデウス。

巨体が揺れ……いや、震えているか。



「覚悟はいいか?」



揺らめく虹色が彼の両拳に宿る。とてつもない輝きを放つため、その拳が見えない。



「アンナ=メリアをクソみたいにしやがって……」



そしてジリジリと近付く。





「町の連中の多くは死んだ。子どもも何人も巻き込まれた……」





「俺のダチだってひでー目に遭った。そいつらが大切にしていたヤツらもな」





「大切な人をぶっ殺されたトムさん……そして、それで悩み続けたアメリア」





「それらは全部、テメーらが居なけりゃ起こらなかったことなんだよ」





「許せねぇ……ぜってーに許せねぇ……」





やがて間近に至るルーク。



「ル、ルーク!! わ、儂を討つのか!? お前を迎え入れた……わ、儂を!! お、おい!! アメリア!! こいつを止めろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


「ひ!? く、来るな……来るなぁぁぁぁぁ――――――――!!!」



下がろうにも動けないプレジデントとアスモデウス。目の前の男が恐ろし過ぎることで震え、思うように身体が動かない印象。



「俺の両拳には、白丸ちゃんへの気持ちだけじゃねえ。アンナ=メリアのみんなの無念も宿ってんだよ。それを……全部受け止めてもらうぜ?」



そう言いつつ、軽くトムとアメリアを一瞥する。確認的な意味か。

二人はそれに気付き、声を出す。



「ルーク……君の願い、確かに聞き入れた!! 私は……必ず西国を建て直す!!」


「貴方の言葉、響きました!! お父様がおられなくても私は前に進んでみせます!!!」



そして最後に視線を置くは……白丸。

彼女はそれに気付いたのか、少し前に出てもちろん満面の笑顔で……片手を大きく上げて声を張り上げる!





「やってしまえぇぇぇぇ!! ルークぅぅぅぅ!!!」





「おう――――――――――――――――!!!!」





―ジュエル・オブ・アーツ・ディスパーション!!!!!―

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