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第301話 対面するアメリア

ごぎょうに居た筈のアメリア。

どういう訳かほとけのざ町に現れる。



「貴様は……」


「貴女は……トマスと一緒におられた……」



彼女に対して白丸が反応する。

アメリアにとって、かつての討伐対象である。もっとも最後はあしらわれたのだが。


ああいう状況であったことから、再戦も視野に入るものと思いきや……



「その節は大変ご無礼を致しました。あの時の……貴女の最後のお言葉、この胸に沁みました」


「……む」



いきなり下手に出て来た為か、白丸は予想外といった感じである。



「へ? 二人共知り合いなのかよ」


「知り合いというより敵同士だな。よりにもよって、妾を討伐しようとは……」


「!!!!!!」



『討伐』。この言葉がいけなかった。



「ル、ルーク……?」



突如空気が張り詰める。付近の建物がカタカタと揺れる。白丸が思わず後退りしてしまう。

気勢を発している訳ではないのだが、ルークから放たれる強いプレッシャー。



(これが……ルークの圧力……? あ、ありえません……)


「おいアメリア……誰に手ぇ出してんだコラ……」



アメリアのルークへの評価はこれまで通りである。だからこそひどく驚く。手練ればかりが集う中でも、主戦力である彼の圧力に。

だがアメリア、驚いたもののすぐに柔らかな面差しへと変わる。



「……ご心配なく。あの時は確かに倒すべき敵として認識しておりましたが、今では……心から感謝しております。貴女もまた、私を変えてくれた一人でもありますから……」


「?」



そう言いつつ白丸を一瞥する彼女。ルークの頭に疑問符が付く。

白丸自身も身に覚えがあるのか、今の発言をすんなりと受け入れたようだ。



「いいんだルーク。もう過ぎたことだ。……アメリアと言ったか……随分と雰囲気が変わったようだが?」


「ん? ……そ、そっか」



たちまち怒りが霧散する彼。

アメリアは白丸の一言でハッとなる。



「あ、そ、その……そうです! 皆様に会わせていただけませんか!? 大切なお話しがあるのです! ……それで私の経過もご理解いただけると思いますから……」


「いーけどよ……余計なことすんなよ? オメーはすぐ暴走すっからよぉ」


「貴方に言われたくありません。……それにしても……」



―トムとタメ張るぜ―



(今の圧力……信じられません。リュウシロウ様のお言葉だけに事実なのでしょうが……何時の間に……)



アメリアもまた、これまでのルークの経緯を知らない。




※※※




その後、ほとけのざ町の宿。

アメリアは自身の身分を明かした上で、皆に受け入れられたようだ。



「トマス……」



顔色は戻ったものの、悪魔に敗北し未だ眠り続けるトムを見て、信じられないといった様子の彼女。


そんなアメリアを見て……



「トムはじきに目を覚ますみたいだぞ? あんまり心配するな。ボクはイズミ、力忍術の使い手だ」


「あ、は、初めまして! アメリアと申します。……私が、プレジデントの娘であることをご承知の上でお集まりいただき、本当にありがとうございます」


「いいじゃないか、そんなの気にしなくて。お前はアメリアであってプレジデントじゃないんだろ? よろしくな!」



イズミからぐいっと手を引き、笑みを見せながら無理矢理握手をする。アメリアは少し緊張しているようだ。



「……なるほど、君がジェネラルを率いる、西国最強とまで言われた……ああ、申し遅れた。俺の名はゴウダイ。天津国忍一揆、華武羅番衆を務めている」


「えええ!? あ、あの東国の英雄様なのですか!? あ、挨拶が遅れ大変申し訳ありません! すみませんすみませんすみません……」


「い、いや、構わんし、そんなに謝らなくていい。それに英雄はやめてくれ。そんな大層な扱いをされる程、何かを成した訳じゃない」



平身低頭のアメリア。ゴウダイの見た目に少し驚いた様子。大きくていかついのだから仕方がないところがあるのかもしれない。

なお彼、極端な美少女相手に普通に話せている。ミナモとの関わりも影響しているか。


もっともミナモ、この辺りはまるで成長していない様子。



(あばばばばばばばばばばば……な、何よこのプッツン美少女! ねえ三人? 三人になるの!? イズミと白丸とこの子、トライアングルで私を責め立てるの!? 私一人で三人も引き立てなきゃいけないの!? お願いだから普通の子に会わせてぇぇぇ……)



と、このような感じである。

その後はペコリと一礼をし、アメリアも返すといった光景が繰り広げられた。


そして次は、身体を休めてある程度回復したサイゾウがアメリアに歩み寄る。



「サイゾウです。よろしくお願いします、アメリアさん」


「はい! よろしくお願い致します」



人当たりの良い彼だけに、彼女はそこまでぎこちなく話すような感じはない。ゴウダイだけがその肩書き、風貌で威圧感が強過ぎるだけなのである。



「ぽーん!」


「え? え?」



最後はぽん吉。目が白黒するアメリア。だがそれは、とてもポジティブな意味のようだ。



「……な、なんて……」


「ぽん?」



ぽん吉をすかさず抱っこ。



「可愛い生き物なのでしょう!!! ……す、少しだけモフモフさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「ぽん――――――――!?」



断りを入れている段階であるにも関わらず、既にモフモフするアメリア。

とりあえず一同、彼女を『悪い人間ではない』と判断したような面差しである。


その後、ぽん吉を抱っこしつつイズミを一瞥する。



(……この人……なのですね。リュウシロウ様の心に残る女性……なんてお美しい……それに、屈託のない笑顔。近頃まで敵だったジェネラルの、そのまとめ役ですらこれほど簡単に受け入れるその度量……懐も大きい方です……)



アメリアは、彼女がリュウシロウの意中の女性であると気付く。

そして同時に、申し訳ない気持ちを抱く。



(そしてお父様……否、デヴィルが狙っている女性でもある……しかし企みに気付いた今、好きにはさせません……!)



しかし凛とした面差し。今や彼女は、責任転嫁をしたり後ろ向きに考えるような人物ではない。リュウシロウとの出会いを経て、アメリアもまた大きく成長した者の一人なのである。


なおリュウシロウの考察が正しいのであれば、イズミもまたムリョウを始末する為の口実。何故なら攫うという指示が、能面を絡めた理由で出されたからだ。

もしかして悪魔たちはその一部がムリョウの実力を把握していて、そのムリョウが固執するのであれば……と、イズミを保険として考えたのかもしれない。



「……ったく……で、何しに来たんだよ。てかオメー、ほとけのざに居たんじゃなかったのか? なんで内陸からこっち向かって走って来るんだよ」


「あ……」



考えの最中、ふとルークが質問をする。

それによりアメリア、ここで伝えなければならないことを思い出したのか……



「あ――――――――!!!!」



叫ぶ。甲高い声が部屋中に鳴り響く。



「なんといううるさい女だ……」


「み、耳が……」



白丸もルークも、手に耳を当て参ったといった様子。



「す、すみません。……モフモフさんもびっくりしてしまいましたね。また後で……」



※モフモフさん=ぽん吉

『また後で』は、また後でモフモフするつもりなのだろう。

ぽん吉は急いで部屋の外へ逃げる。


なおアメリア。何を思い出したのか……

それはとても大切なこと。東国に居る者であれば、それはイコールで絶望的なこと。

だが彼女からそのような悲壮感は漂っていないように見える。


だからなのだろう。

アメリアは特に溜めることなく、ごく自然にあっさりとそれを言ってしまう。



「リュウシロウ様が、スザク様の手により地獄? とやらへ落とされてしまいました」

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