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第22話 リュウシロウの現状

「お前たちの目的だ。どうしてボクを付け狙う?」



凛とした面差しのイズミ。

能面の者たちとの戦いの理由において、根幹となるものだからこそ必死なのだろう。



「目的か……端的に言うなら、貴様に強くなって欲しい……それだけなのだがな」


「ボクが強くなる事に、どうしてお前たちが関係あるんだ!」


「我々の創造主は全く才能が無くてな。貴様が強くならねばならんのだ」


「分かるように説明しろ! お前と言いチョウジと言い……」


「すまないが、これ以上の踏み込んだ話について我々は権限を持たない。西へ向かうんだな」



息が整った以降は、チョウジと同じく饒舌になるガイト。



「何だそれは!? 結局何も分からないじゃないか! ふざけるな!」


「そうだな……何も分からないというのは……先が分からないというのは……怖いものだな……」


「な、何を突然……」



突き放したかと思いきや同情。イズミは戸惑う。



「あ゛……あ゛……」


「ケイユン……」



目を覚ましたのか、か細い唸り声を発するケイユン。ガイトはこれまでと打って変わって、優しげな声だ。



「そんなに不安がらなくていい……」


「あ、あ、あ……」


「……」



イズミは、やはりという顔をする。

何故ならチョウジと同じく、ガイトとケイユンの身体が消え掛かっているのだから。



「こ、コレハ!? どういうことデスカ?」


「ボクもまだ何も分かっていないんだ。ただコイツらは『役割が終わった』って……」


「……」



ありえない光景に、事情を知らないトムは絶句。イズミは物悲しそうに見つめている。



「大丈夫だケイユン……お前の場合は、後百年程経てば……また……()()出来る……」


「あ、あ、あああ……」


「……ひとつ……の属性……だが……属性に……非ず……からこそ……」



落ち着いた声のまま、ガイトが消える。

ケイユンもまもなく消えようとしているが、イズミの方を向き何かを訴えているように見える。



「…………て……」


「!!!」



イズミは、驚愕と迷いの表情を浮かべる。

声が非常に小さいが、何とか聞き取れたようだ。



「な、何でそんな事をお前が……分からないよ……」



しかし、ただ俯くだけ。

やがてケイユンもガイトと同じように消え去り、後には二人が身に付けていた物だけが残っていた。



「……イズミサン……」


「トム。今回はありがとう。お前が来てくれなかったら負けていたかもしれない……」


「イエ……貴女の危機ダッタのデスから。ただ、イズミサンの置カレタ状況を……話せる範囲でマタお話イタダケませんカ?」


「分かった。明日、道中で話すよ。まぁボクもほとんど分かってないんだけど。ははは」



戦い終わり、またしても多くの謎を残したまま旅が続く。

帰り際、イズミはケイユンの言葉を思い出してしまうのか、時々俯くのであった。





ー強くなって……ー





※※※




明くる日の朝。



〜はこべら町へ続く道中〜



「ふ〜ん、そんな事がねえ……」



一行は宿を出て、朝から既に街道を西に歩く。

今回の件に全く携わっていないリュウシロウは、鼻をほじりながらイズミとトムの話を聞いていた模様。



「何でそんなに他人事なんだ!」


「だってよー……もうシバいたんだろ? 万々歳じゃねえか。ふぁ〜」



まだ眠そうな彼。朝までぐっすりだった筈なのだが、どうにも眠りが足らないようだ。

イズミは、やる気のないリュウシロウに怒り心頭である。



「ソウデシタか。因縁がアルと……。まさかイズミサンたちが、既にマスクマンと出会ってイタとは」


「アイツらが一方的に因縁を付けてくるだけだけどな!! ……で、ますくまんって何だ?」


「ア、あ、ア……アレですよ! マスクは仮面という意味デシテ……いやー、一人じゃなかったんですね!」



イズミの疑問に、過剰に反応してしまうトム。

しかし、焦ったのか墓穴を掘ってしまっている。



「?? お前が見た時は最初から二人だったろう? 何言ってんだ?」


「あ、あー! そうでしたね! 何を言ってんだか……ははは」



焦り極まり、もはやキャラもブレてしまっている。

ここでリュウシロウが流れを切る。



「トム……」


「は、はい! 何でしょう?」



まだキャラが直らないトムに、リュウシロウは右手を口元に持って行きグーパーを繰り返す。要は『話し方、話し方!』のジェスチャーだ。



「……あ。 ナーンデスカー? 吾輩にアンサー出来るコトならオールオッケーぴょん! でんがなまんがな!」


「だから極端なんだよお前は!! あと最後の東国(こっち)でも聞いた事のねえ言葉は何処で習得したんだよ!?」



とりあえずいつもの光景。

何故リュウシロウが、トムのキャラ作りを把握しているのかは置いておいて。トムも焦った後だからか、スルーしてしまっている。



「本題な? お前は西に何の用事があるんだ?」


「えーっト……何と言いマスカ……」



リュウシロウの問いに口ごもるトム。

その表情にいつもの軽い印象はなく、どちらかと言えば悲痛な、申し訳なさそうな感じが見受けられる。



「決着……ですかネ……」


「決着?」


「ハイ。今目の前にアル大きな問題に対シテ、吾輩は決着をツケなければナラナイのです」


「……」



青い目を大きく見開き、これまでにない真剣な面差しのトム。

その言葉に、『祖国を敵に回しても』と付け足しても何ら違和感が無い程の熱意、気迫が静かに伝わる。



「デスので、皆さんノ戦いニ巻き込まれるノハ何ら問題アリマセーン。もしかスルト、私の戦いニモ巻き込んでシマウかもしれマセンから。ハッハー!」



ただ、この口ぶりからすると詳細は語らない、または語れない様子。



「ま、何でもいいけどよ、俺の安全だけは確約してくれよな」


「まったく……トムの勇ましさに比べて、リュウシロウの情けなさと来たら……」



もっとも、イズミとリュウシロウはさほど詳細に興味は無いようだ。



(あれ? もう少し根掘り葉掘り聞かれると思ったのですが……)



なので、トムは少し拍子抜け。

ここで、今度はイズミがリュウシロウにずいっとその美しい顔を近付ける。



「な、何だよ」


「さあ、次はリュウシロウの番だぞ! どうして親兄姉(きょうだい)に狙われてるんだ?」


「あー……」



近付いたイズミから目を逸らし、悩み始めるリュウシロウ。



「また今度な」


「何だそれ!? 道中で言うって言ったじゃないか!! 嘘は抜け忍の始まりだぞ!」


「聞いた事ねえよ!? 別に今の時代、抜け忍が始まっても何ら支障ないだろ!! そもそも抜ける抜けないの性質を持ってねえよ!!!」


「ぶー」



余程言いたくないのが、リュウシロウはかなり渋る。イズミは不満顔だ。



「それに嘘はついてねえ。道中で話すって言っても、はこべら町までは道中だろ?」


「そんな屁理屈あるか!! どうせはこべら町に着いたって、『へっへっへ、次の町の間も道中だろ? ほふふー』なんて誤魔化すんだ!!」


「『ほふふー』なんて、生まれてこの方一度も口にしたことねえよ!! あと、お前の中で俺の評価はどうなってんだよ!? そこそこクズじゃねえか!!」



いつもの言い争いを、トムは微笑ましく見つめている。



「ホントにお二人は仲がいいんデスネ。恋人同士……というワケではナイのデスカ?」


「誰が!!」

「誰が!!」



同時に否定。



「トムは見る目が無いぞ! どうしてこんな屁理屈ばかりですぐに人を煙に巻く口先男と、ボクのような腕利きの忍が恋人同士に見えるんだ!」


「まったくだ。見る目無いぜトム。俺はよ、こんな腐れ無乳、貧乳、零乳のガサツ女じゃなくてよ、ばいんばいんで家庭的でもっと小柄な子が好みなんだよ」



ブチッ



「だ、だ、だ、だ、誰が無乳だあああああぁぁぁぁ――――!!!」



ずどむっ



「えりんぎっ!!」



トムは若干引き気味だ。

内心、無乳も貧乳も零乳も意味合いとしては大差ないと思っているが、決して口には出さない。


その後、場も落ち着き。



「ま、まあ何だ」



どうでもいいところで負傷するリュウシロウ。またしても目がパンダだ。



「そんなに聞きたいか? ……てか、もう巻き込んじまってるもんな。聞く権利あるよな」


「何だ、分かってるじゃないか」



既にイズミとトムは、リュウシロウの家庭内と思われるいざこざに巻き込まれている。

よって聞く権利は十分にあり、それを彼自身も理解をしている……が、やはり言い辛いところがあるようだ。


しかし観念したのか、少し間を置いてからゆっくりと口を開く。



「俺さ……」


「……」



ピタリと黙りこくるイズミとトム。

多少重い話でも、今の二人なら受け止められるだろう。



「肉親に命狙われてんだ」


「え゛」



訂正。受け止められなかった。

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