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第146話 ミナモ再登場

次の日の朝。

一行は身支度をし、茶屋から出る準備をする。



「い~い朝じゃねーか! こいつぁカワイ子ちゃんとの出会いがあるよかーーん!」


「お前、そればっかなのな……あとカワイ子ちゃんって今時言わねえぞ……」



ルーク、爽快な気分の様子。呆れるリュウシロウ。



「ほっほっほ。予感ではないぞい? もう来とるし」


「……は?」



フウマの一言に皆が注目し、すぐに茶屋の外へ出る。すると……



「出てくるの遅いよ!!!! 早く来いって言われたから、早朝から居たのにぃぃぃぃ!!!」



そこには少し青みがかったセミロングにウェーブが掛かった髪形、そして今度はオフショルダーのグレーのトップスにハイウエストのショートパンツ、ロングブールという相変わらずの忍とは思えない風貌。そしてアヒル口、まん丸の眼、ソバカスが少々見られる愛嬌のある面差し……



「ミナモ!?」


「あ! マイダーリン……じゃなかった、ゴウダイくぅーん!!」



ミナモ、再登場である。なお、ふと出た言葉は小さかったためかゴウダイには聞こえていない。

ここでフウマが前に出る。



「と言うことでミナモ、ワシの代わりを頼んだぞい?」


「……え? ……は? ……フウマさんの代わりぃぃぃ――――!? 聞いてないよ!? 無理無理無理無理無理!!!!」



朝から騒々しい彼女。引き続き、他の皆がその場に集まってくる。



「誰だ?」

「ふむ。代わりというのは女か」


「!!!!!!!!!!!!!!!」



ミナモ、イズミと白丸と邂逅。たちまち顔面蒼白と化す。



「……………………………………」



そして沈黙してしまう。



(なんスかこのプッツン美女二人……この世が生み出せる造形じゃないんですけど……? それにすんごい脚線美……すんごい胸……)



正直言って、イズミと白丸の容姿は極上である。

自然と顔が引きつるミナモ。



(え? え? え? 何なの!? この人たちも仲間って事!? ゴウダイ君いっつもこの二人と旅してんの!? そ、そ、そ、そんなぁぁぁぁ!?)



二人の容姿を見た結果、即刻臆してしまう。

ミナモも決して悪いとは言えない……いや、むしろ可愛い印象がある見た目なのだが、さすがにイズミと白丸相手では分が悪いのである。



「は、初めまして……ミナモ……です。……くすん」


「なんで泣いてるんだ!?」



だから泣く。イズミからすればよく分からない。

だがそこは初対面。きちんと前を向き、挨拶を頑張るミナモ。



「そっか! じいちゃんの代わりってお前の事か! ボクはイズミ! よろしくな!」


「白丸だ。妾を前にして緊張するのは分かるが、楽にしてよいぞ」


(ボク!? 妾!? キャラも濃い!!!!!!!)



勝手に辛い思いをする彼女を後目に、少し離れた距離でリュウシロウがそれを眺めつつ思う。



(たしか……番衆のミナモ……だったか? じいさんの代わりって言うが、そんな手練れだったっけ?)



情報通の彼は、彼女のことを知っているようだ。もっとも華武羅番衆であり、一般的な認知度が高いことから自然なことか。


そしてトムも現れるのだが……



「アラ? アララララ? ミナモサンじゃないですか!」


「え!? トムさん!? この一味の人だったの!? あ、そういやその節はありがとうございました!」



ハクフ、ゲンゾウ戦でこの二人は見知った間柄である。

いつものように軽い感じでミナモに寄っていく彼。



「あー、この子さっきの話であった、トムさんたちが別動隊で動いていた時の協力者かー」



昨日の話でいろいろ聞いたのだろう、ルークがミナモを見て反応する。


と、それぞれ自己紹介を終え、一区切りが付くのだが……



(はっきり言って、この二人に勝ち目無いよぉ……)



ミナモ、イズミと白丸を見て敗北感。と、ここで何かを思い出す。



「じゃなくて!!」


「さっきからどうしたんだ!? 大丈夫か!?」



二人に会ったことで胸中穏やかではない彼女。イズミが突っ込む。


このように騒がしい彼女であるが、そこはそれなりに理由があるのだ。



「その前に、新しい任務が来てんの! まずはこっちを片付けてからだよ!」


「!!」



任務という言葉にゴウダイが反応する。

と、ここでミナモが近付き声のトーンを落として引き続き話を続ける、



「で、今のところの情報だけど……『(かささぎ)』が動いてる可能性があるわ」


「鵲……? 馬鹿な。すでに解体し、散り散りになっている筈だ」


「!」



初めて聞く単語。だがこの二人は既知のようだ。リュウシロウが僅かに反応する。



「間違いであって欲しいけどね……場所は、すずな町から南へ伸びる街道の最初の山間。そこで妖怪たちと、見間違える筈もないあの鳥の腕巻き……」


「もしや騙り……いや、今更鵲を騙る意味もないな。……何故この折に……」



少し重い空気となる。と、ここで近くに居たフウマが口を出す。



「そんなところでボソボソと話しておらんで、皆と共有したらどうかの?」


「え? で、でもこれは一揆内の……」



つまり機密事項なのだが、ボソボソと話しているものの周囲に皆が居ることを把握している上で行っている時点で、彼女自身も別に聞かれても構わないという気持ちがあったのかもしれない。


いや、むしろ聞いて欲しいという印象だ。


その理由は彼女自身理解している。



「お困りデスか? ミナモサンとはすでにスーパー仲良しデス。我輩でよければ、チュドーンとおっしゃってクダサイな!」


「トムさん……」


「チュドーンって爆発してんじゃねえかコラ。そこはドーンでいいんだよ」



単身で、番衆複数人を上回る戦力であるトムがそこに居るのだから。リュウシロウの突っ込みもセットだ。


そしてミナモ、さらに周囲を見渡す。そこにはイズミ、ぽん吉、白丸、ルークが興味深そうにしている。



「なんだ? 戦いか? ようやくボクも役立てそうだからな! 遠慮なく言ってくれ!」

「ぽぽぽーん!」

「イズミ、調子に乗るなよ。妾はまだ変身を三度残して……」

「白丸ちゃんそんな能力あんの!? それで、も、もっと巨乳……ほごべっ!」


「…………」



たぬき付きの、何とも不思議な面子に呆然とするミナモ。



「あ、そうそういい忘れておった」


「……ほえ?」



フウマがここでにんまり。



「スザクはこの者たちが倒しておるからの? まもなくヤツが、兵に連れられすずな町に到着しよる」


「えええええええええええ!? ス、スザクを!? ま、ま、まさかトムさん!?」


「ノーノー、違いマスよ。まあ皆で戦ったは戦ったのデスけど、決着はイズミサンですから」



ギギギとでも言いそうな首の回し方をしつつ、イズミを一瞥するミナモ。



「……………………マジ? スザクって言ったら、一揆の中で能面の次に超危険人物として手配書まで回ってんのよ……?」


「皆が居なかったらどうなってたか分からないよ。ボクも三文字になってまだ日が浅いし、長丁場になってたら付け込まれていたかもしれないしな」



能面の次……どれだけスザクが問題人物であったかがよく分かる。だが神社の管理者レベルがお尋ね者というのも不思議である。尋ねも何もごぎょう神社の筆頭であり、顔は割れている。つまり、その凄まじい戦闘力の為に手を出せなかったのだろう。ハクフ、ゲンゾウでアレなのだから。長兄であるスザクに対して慎重になるのは当然である。

手配書まで回っているにも関わらず、いくら地獄門の管理があるとは言えのうのうと七つ町神社の一角に居座る……あのような唯我独尊な思考になってもやむを得ないのかもしれない。もっとも彼のあの性格は()()()()によるところも強そうだが。


なお三文字という言葉を聞いたからか、ミナモの時が止まる。



「さ……」



「さ………………」



「三文字――――――――!?」



くらくらして来たのか、彼女は空を仰ぎ始める。矢継ぎ早に不測の事態が起こっているようで、まとまらない印象だ。

それを見るに見かねてか……と言うより、話が進まないと思ったのかリュウシロウがここで口を出す。



「とりあえず落ち着けって。そんで鵲だっけ? たしか数年前に解体してたよな? 元は反一揆組織だったって聞いたことがあるが……」


「反一揆ではあるものの穏健派揃いで、基本的には関わりと言えば定期の話し合いのみだ。要件を一揆側が呑むこともしばしばあった」


「だよな。正直、そこまで目立った活動なんてしてなかった印象だぜ」



ゴウダイの返答に納得した様子。

東国は一揆がまとめ上げているのはこれまでのとおりである。だが、ごぎょうのように一揆のやり方に対して不満を持つものは他にも居るわけだ。ごぎょうのような過激派ではないにしても。



暮七忍(くれしちにん)だったか。頭は……そうだ、カケスって野郎だ。さすがに他のメンバーまでは覚えてねえな」


「そこまで知っているのか……いつもお前には驚かされるな。指導者であるカケス、その補佐であるモズ、後は戦闘員であるショウジョウ、ヒタキ、セッカ、コト、スズメの五人。……小さな組織だ」


「戦闘力はどの程度だ? たしか、数人二文字が居たろ?」


「ごぎょう程ではない……としか言いようがないな。何せ戦ったことがないのだから」



つまり現状のイズミ一行なら、戦闘に入ったところで取るに足らないという結論になるのだが……



(な――――んかキナ臭えなぁ……腐れ神社没落後に新勢力。しかも、もともと箸にも棒にも掛からねえ連中。さらに散り散りになったって話だから、このタイミングを狙ったっつっても早すぎるぜ……)



リュウシロウは懸念を抱くのであった。

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