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第127話 トムVSスザク①

鳥居の上で何をする人ぞ。

金髪碧眼に忍者服という、東国では明らかに違和感のある出で立ち。



「あぁん? ……白豚か。何者か知らんが、クズが一人増えただけだろう」


「フム……」



一言発したトム。そのまま飛び上がり、倒れているリュウシロウと白丸の前に躍り出る。つまりスザクは目前。



「アナタが、問題児だらけで知れたゴギョウのオカシラさんデスか」


「……」



ため息をつくスザク。するといきなり炎の弾を放つ……のだが?



バシィィィッ!



「!?」



トムは片手でそれを弾く。



「……驚きマシタ……ココまでの流れ、ハクフサンとゲンゾウサンと一緒じゃナイですか。ホントに似ているきょうだいデスねぇ」


「……な……に?」



彼に興味が無さそうだったスザクだったが、ハクフとゲンゾウというキーワードが現れたからか反応する。



「もしや……貴様が!?」


「アララ、もう情報が入ってるんデスね。まあ我輩ダケじゃないんデスが」



自分の術を容易に弾く、そしてきょうだいを倒した張本人。さすがのスザクも驚きを隠せない様子。


だが、もっと驚いている者がそこに居た。



「ト、ト、ト、ト、ト、ト、トムさん!!!?????」


「……ルーク……? なるほど、君が派遣されたのか……いや、そんなことよりひどい傷だ……」


「だ、大丈夫だって! 全然生きてるからよ!」


「そうか……詳しい話は後にしよう」



そこでトム、くるりとリュウシロウを一瞥する。



「すでにルークと会ってるってことは……もう聞いチャイました?」


「聞いチャイましたぜこの野郎。……それにしても、助かったぜほんと……」



まだ戦闘中であるにも関わらず、そして敵がスザクであるにも関わらず、リュウシロウ一行に安堵の空気。つまり、それほどの信頼がトムにはあるのだ。

もっとも、その空気が気に入らない者が目前に居る訳で、それが腹立たしくないなどありえない。



「私を前にして余所見とはいい度胸だ!!!!!!!」



―炎王拳!!―



怒りのスザク。拳に伴わせた高火力の炎で、連打を浴びせようとする。



「紅火忍術……! しかも、相当な使い手デスね……シカシ!」


「な、何!?」



全て受け止める。

しかし、受けた手が炭化しかねない火力なのだが、何故か受け止めている手がスザクの拳に触れていない。触れたと同時に押し戻されている印象だ。



「軽く纏わせた風のみで対処とは……トム、お主一体……数日前とはまるで違うではないか……」



目が白黒するフウマ。

どの術も、自身の術を使いあらん限りの力を出さなければ対処出来なかったスザクの術を、彼はいとも簡単に捌く。



「フウマサン、お話は後です。ヒトツだけ言うなら、友の力が……ここに生きているんデスよ!」



そう言いつつ、かつてサイオウが触れた手を握り拳にして見せ付ける。スザクは動きを止め、観察を続けている。異様な雰囲気を感じ取ったのだろう。


と、ここで白丸が這いずりながら彼に近付く。



「トム……」


「白丸サン……おいたわしい。……よく、頑張ってくれマシタ。後は我輩に……」



そう言い切ろうとする前に、彼女がトムの胸倉を掴む。



「奴は……あの男だけは殺してくれ!!! リュウシロウを……あそこまでコケにするなんて……許せない!! 許せ……ない……でも妾じゃ……すまない……」


「白丸サン……」



全身ボロボロとなり、悔し涙を流す白丸。

さらには傷だらけのフウマにルーク。そして何があったのか、何を言われたのかおおよそ見当が付くリュウシロウ。



「……経緯は大体ワカっています。何せあのきょうだいの長兄みたいデスしね……」



トム、ゆらりと気を放つ。明らかに怒気も含まれている。



「好き放題やってくれたみたいですね。これは、キツいお仕置きが必要なようです」


「あ? 誰に物を言っているか分かっているのか? 白豚が!!」



スザクも気勢を上げる。そして印を結びつつトムに迫る。



「今すぐ炭にしてやる!!」


「では、その炎を吹き飛ばして差し上げましょう」



まずは突きや蹴りの連打がトムに襲い掛かる。しかし彼はゆらりとした動きで躱す。



「!?」



だが、視界に違和感。スザクの背後にチラチラと火の玉が見え隠れする。攻撃前に設置したか。

するとその火の玉も彼の背後をブラインドにして、弧を描くように放たれる。さらには足元からも縦に伸びる炎。周囲にも炎が巻かれる。



「光栄ですね。ここまで炎を大盤振る舞いをしていただけるとは……」


「そうだろう? 遠慮はいらん。たらふく召し上がってくれ……ククク……」



あくまでも軽口を叩くトム。スザクもそれに応じるが、やはり目は笑っていない。



「さあ、焼き豚の出来上がり……。 ……?」



疑念。目前の西国人の面差しに変化がない。むしろ僅かな笑みすら伺える。



「さあ、イッツアショータイム! まもなく炎は消えますよ!」


「何!?」



トムの発言からすぐ、スザクの放った炎がみるみる弱まり、やがて消えてしまう。



「馬鹿な!? い、いや……これは……」


「もうお気付きですか。さすがは長兄、他のお二人とは訳が違いますね」



周囲を見渡すと、神社敷地の境界線に何かが見える。



「膜……? もしや……包洞か!? ありえん!!! 一文字とは言え、これほど巨大な包洞など!!!」



トムの十八番、攻勢・包洞。サイオウから力を受け取り、さらに強化されているようだ。



「く……う……」



スザクからすればこれは致命的。

火属性の彼が、火を放てない環境に置かれてしまうことの不利は、言わずとも分かるだろう。



「あなたは()の仲間を傷付けました。身も心も……」


「仲間? ふん! そんなものは力の無い者同士が、己の足りない力を補うだけの存在に過ぎん!」



ここでトムは呆れたように言い放つ。



「それの何がいけないんですか? あなた、一人で何でも出来ると思っているのでしょうか? そうだとしたらとんだ愚か者ですよ」


「な……ん……だ……と……?」



腸が煮えくり返る、という表現が適切か。



「き、貴様……この私に説教などと――――!!!」



自身にとって、癇に障る発言をすべて怒りで返し、封殺しようとする心の未熟さをトムに見抜かれてしまう。

スザクは即座に印を結び、術を放つ。



―暁火天!!―



上空からレーザーのような熱線が降り注ぐ。

フウマの凰翼刺を、たちどころに霧散させた強力な術だ。



「ふはははは! これなら包洞の影響は出まい! 己の術を過信したな!!!」


「……忍法」



スザクの行動を予測していたのか、すでに印を結び術を放つ準備が出来ているトム。まもなくその傲慢な笑いは、戦慄へと変わることになる。



―風円旋!!―



「は!?」



包洞ほどではないが、スザクをしっかりと射程距離に収める円状の風……いや、嵐か。



「ぐあああああああああああああ!!!」



全身が悲鳴を上げる。メキメキと音を立てて、この傲慢な男の骨という骨をへし折ろうとする。ここでトム、もう一度印を結ぶ。



「白丸さんの痛みを、ほんの少しでも知りなさい」


「ぐぐぐ……がが……うううううう!!」



スザクは抗う。だが、トムの術の方が力で上回る。まもなく腕があらぬ方向へ曲がりそうになったその時。



爆砕掌(ばくさいしょう)



ドォォォォォ――――ン!!



「なんと!?」



拳に気を纏い、その場で大きく爆発させる。その勢いで風円旋の射程から逃れる。



「はあ、はあ……こ、この……!」



だが疲労が無視出来ない状態。本体ならば距離を置き、一息付きつつ戦略を練りたいところ。だがこの男の性格がそれをさせない。



爪炎虎(そうえんこ)!!―



包洞は、新たに術を放ったために消失。そのためにスザクは、再度火を起こすことが出来る模様。全身炎に燃える爪という様相となる。



「……」



だがトムは、再度包洞を仕掛けようとしない。迎え撃つ気だろう。



「賽の目にしてくれるぅぅぅぅ――――!!!」



気が付けば目の前。これまでにない速さで彼に迫るスザク。



「強大な力……となれば強大な力で押し返すことこそが、この方の心を折る最良の手段となるでしょう……忍法!」


「させん!!!! 私の方が早……な!?」



ドドドドドドドドドド!!!



スザクの体幹に、いきなり無数の拳の痕が現れる。



「がはぁ!!! ……い、いつの……間に……」


「猛天・霞威風。風円旋の後に、すでに印を結んでいたことをお忘れですか?」



―猛天・朧嵐月!!!!―



新たなトムの十八番になるか。膨大な風の塊が真正面からスザクを襲う。



「あ、あ、うあああああああああああ――――――――!!!!!」



霞威風のダメージにより、満足に動けないところへ朧嵐月。

神社の一部を破壊し、その裏にそびえる崖まで強制的に飛ばされたスザクであった。



「さて、ここまでもあの二人と流れは同じ……ですが……」



このまま終わる訳がない。

直感だが、そう確信してしまう何かがスザクにはある。

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