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第105話 フウマVSノーラン

一方でフウマ。



「礼……じゃと?」



予測しなかったノーランの発言に、彼は訝しげだ。



(しかも『人間では』とは……? ますますもって怪しいのう)



このフウマの発想……それは、『ジェネラルは仲間である』という意識があるためだろう。

だがそもそも、その前提がおかしいとしたら?


ここで、ノーランがゆっくりとフウマに近付きつつ話始める。



「そのとおり。クク……私の思惑通りに事を運んでくれたことに対する礼だ」


「ふむ……ではあえて聞こう。お主……何者じゃ?」



すると目の前の黒髪の男は、右手を真上に掲げて何やら集中しだす。



「む?」


「何者かはすぐに分かる……む? ほう、エレンも倒されたか。これはこれは……ますます礼を言わなければならないな」



ノーランの右手が怪しく輝くと、倒れているアクセルに異変が起こる。



「おご!? ご……おごごごごご!!!」


「なんじゃ!?」



彼の口から黒いもやが現れ、それが抜き取られるような様相を示す。

そこでフウマは、左胸にも異変があることに気付く。



(あれは……? 牛か……? それとも馬か? 紋章のようなものが……)



アクセルの左胸にある紋章が、ぼんやりと輝いているのが確認出来る。



「私程になれば、力を分散しなければ奴に()()()()()()()()からな……」


「……? 一体何を言っておるんじゃお主は!」



強く警戒するフウマ。様子を伺っていると、アクセルの口から現れた黒いもやをノーランがその口で体に取り入れる。

さらに、別の場所から来たであろうもや……つまり、彼の言い分を考慮するに白丸に倒されたエレンのものなのだろう、それも取り入れる。



「ククククク……ルークは……そうか、勝ってシマったか……アトで……返シテモラワナケレバ……ナア!」



ビリッ……ミキ……ミキ……



「な、なんと!?」



普段の細目が非常に大きく見開かれるフウマ。かつて、ここまで驚愕したことはなかっただろう。

それもその筈。ノーランの衣類が破れ徐々に巨大化し、その頭部側面から前方に向かって山羊のような角が生え、体はたちまち体毛で覆われ手足は人間のもののように見えるが筋骨隆々となる。

そして顔は鼻あたりから前方に伸び、まるで牛のような形状……彼はこの姿に聞き覚えがある。



「これは……白丸が言っとった……」


「ククク……ルークの分がマダ……ダカラナ……オ、オオオ……完全デハ……ナイ……ガ……オ、オ、オオオオオオ!!」



そしてさらに巨大化。身長で言えば、フウマの数倍に至るだろう。

変化が終わったのか、荒かった鼻息も収まりその場に堂々と佇む。



暫しの静寂。



「お待たせした。私は、貴様達がデヴィルと呼ぶ存在。この機会を待っていた」


「な、なるほどのう……他のジェネラルは、お主の力の隠れ蓑じゃったか……」


「クク、話が早い。貴様は人間の割に知恵もある。始末するには惜しいが……やむを得まい。()()()()()()だからな」



『契約』という言葉。フウマは白丸の言葉と、リュウシロウの推理を思い出す。



「……プレジデント……か」


「む? あの地より遥か遠いこの地の者でそこまで知っているとは……東国の人間には驚かされる」



姿は異形ではあるが、紳士的な振る舞いをする悪魔。



「あのスザクとかいう男も相当な実力者だが、賢しさを含めれば貴様の方が手ごわそうだ。クク、この地に来て早速兵と合間見えることになるとは、私も運がいい」


「……そうじゃったの。お主らはごぎょうの依頼で……」



ごぎょうの名が出たほぼ間を置かず、悪魔は鼻で笑う。



「契約者に利用されているだけの哀れな男だ。そこそこの実力はあるようだが、やはり能面とは比べるべくもない」


「!! ……能面たちを知っておるのか!?」


「力を分散したと言っただろう? 奴の目を眩ませるにはこの方法しかなかった。……過去何度、能面にこの地への侵略を阻まれたか……」



つまり能面が、ムリョウが東国を守っていたということである。

ジェネラルと戦闘に入る以前、ルークの前でノーランは……いや、その時から既に中身は悪魔だったか。道中会話をしている際彼に話を遮られたが、そこで能面について触れるつもりだったのかもしれない。



(ムリョウ……お主は一体……)


「さらにこの地には、能面の他にも我々と戦うだけの力があると聞いた。それは慎重にもなる。本来なら下級の者を送り込みたかったのだがな……」


「!!」



何処かで聞いたことのある状況。

それが直に悪魔の口から語られた以上、事実として認識すべきだろう。



(そうか……坊主、さすがじゃのう。お主の読みは的中じゃ。それに白丸……訪れた悪魔を倒してくれて心から感謝するぞい……)



リュウシロウによる読みはほぼ完璧だった。

それと、もし東国に悪魔と戦う戦力がないと判断されてしまえば、多くの下級悪魔が東国を襲ったことだろう。中級悪魔を退けた白丸は、事実大手柄だったのだ。


しかしフウマ、気になることがある様子。



「それにしてもお主、よくしゃべるのう。人恋しかったんか?」


「クク……貴様らが我らのことを知らぬように、我らもまた貴様らのことを知らぬ。若輩者とは言え、デーモンではない爵位持ちを倒すだけの力を持つ者たちのことは知っておかねばな。話をするだけでも、人間という生き物がよく分かる……クク」



後半、よく分からない言葉を並べる悪魔。

しかし、少なくともフウマはさらに警戒心を強めている。



(知性が、その辺りの妖怪とは比較にならんの……人間を弱き者としておるように見える割にはわざわざ知ろうとする……そして能面には最大限の警戒を払う……ごぎょうの阿呆共と戦っとるだけなら楽だったんだがのう……む?)



知性は妖怪より上?

実際この悪魔は、人間への理解を深めようとし警戒心も抱き続けている。これは知性に乏しい個体が多い妖怪にはない特徴である。もしこの異形の者たちが()()()()()姿()()()()()()……


ここでフウマ、さらに別の何かに気付く。



(……いかん。この者……人間を調べておるということは、斥候の立場じゃろ。……さらに強力な悪魔が控えておると考えた方が良いのう……次の一手を講じられる前に、プレジデントを何とかせんと……)



様々な思惑が駆け巡る。

しかしそれは、目前の悪魔をどうにかしてからの話だ。



「さて、もう少し話をしていたいのだがな……今のところ私は契約通りに動かねばならん。そろそろ始めよう」


「……む、来るか……」



気勢? それとも他の何かか、悪魔は漆黒の炎のような何かを体表に張り巡らせる。



「これは……!」



ーカー・ヌーグ・ヴォー!ー



放たれるは、悪魔より少し小さめの先端が尖った黒い氷。



(いかん!!!!!!!)



ー守勢・廻風!!ー



廻風に着弾、そのまま悪魔の方向へ返す……のかと思われたが、そのまま術を粉砕して真っ直ぐ進む。



「むううううう!!!!」



フウマ、少しかすってしまうも寸前で回避。

しかし、破れた衣類に黒いもやがまとわりつき、彼の動きを制限する。



「何かが……付与されとる……!? それに、廻風をああもたやすく貫通するとは……」


「よく避けた。次だ」



ーハー・ダー・ヲーン!ー



今度は黒い炎の輪。

フウマは即座にこの不思議な術の性質を理解する。



(広範囲! ならば……間に合うか……)



「忍法!」



この時点で悪魔の術のような何かが放たれる。



ー猛勢・波状環!!ー



フウマはフウマで風の輪を作り出し、そして放つ。



「……ほう……」



何か感心した様子のある悪魔。

それは目前の光景がそうさせているのだろう。



ドオオオオ――――ン!!



せめぎあう風の輪と炎の輪。



(これはまずいのう……)



だがフウマは危機感を抱く。

何故なら波状環が少しずつ押されているからだ。ここで彼はさらに両手それぞれで印を結ぶ!



「忍法!」



―猛勢・壊衝破!!―



押される波状環への援護射撃。しかし悪魔はそれを読んでいたようだ。



―ラー・ダーウ・クルン!―



今度は雷の壁。それが押し出されるようにせめぎあう術に迫る。

よって、やはりフウマの術が劣勢となるが、彼はそれすらも読んでいた。


もう片方の印が新たな術を作り出す!



「疾風忍術奥義!!!!」



(おおとり)天風暮颪(てんぷうくれおろし)!!!―



「何!?」



衝突する術同士を飛び越えて、真上から悪魔に向かって彗星のような大渦を巻いた風が落下する。

気付いた時には遅し。悪魔は防御体勢に入り、そのまま直撃する。



ドォォォォォォォ――――――――ン!!



爆音が周囲に響き渡る。

だが、フウマの面差しに楽観はない。様子を伺っている印象だ。



(仕留められておらんのは分かっとる……さて、これからどうするか……)

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