忘れん坊のサンタクロース
「メリークリスマス!」
大声で叫びサンタの服装をした彼女、が入ってきた。
普通のサンタの格好ならいいのだが……女性の胸や太ももを強調するような服より肌の面積が多いような格好だった。
「あの……昨日ですけど?」
「いやいや、それはイブだよ」
「今日26日ですよ?」
「またまた〜私を騙そうなんてそうはいかないぞ」
「いや、ガチで。今日は26日なんだって」
彼女は慌ててスマホを取り出し日付を確認した。
確認するや否や顔が青ざめていくのがわかった。
恐らく驚きを隠せなかったのだろう。
「マジじゃん……。うぅ、24日から25日にかけてサプライズしようと思ったのに……」
余程ショックだったのか今にも泣き出しそうになっている。
「慌てん坊じゃなくて忘れん坊のサンタさんだな」
「そんなこと言う子にはプレゼントあげないぞ?」
「ごめんなさい! プレゼント欲しいです!」
「ふっふっふ。よかろう、プレゼントあげちゃう!」
背中に担いでいた大きな白い袋からプレゼントを取り出そうとガサガサするがなかなか取り出せずに焦っている。
「あれ? あれれ?」
「どうしたの?」
「プレゼントどこかに置き忘れちゃった……うぅ、ほんとにごめん」
忘れん坊+慌てん坊、両方を兼ね備えたサンタさんが目の前にいる。
プレゼントを持っていないようだが一体どうするのだろうか?
「あ! プレゼントあった」
「お、見せて見せて!」
「はい!」
「???」
彼女は仁王立ちしているだけ。
プレゼントを差し出す様子は伺えない。
もしかして……彼女自身がプレゼント……いや、そんなわけないか。
「プレゼントは?」
「あるじゃん!」
「なんだろ……バカには見えない透明な何かとか?」
「リュウヤは馬鹿じゃない!」
「あ、ありがと……。じゃなくて、プレゼントって何?」
「このユナサンタがプレゼントだよ!」
「……」
「ちょっとなんで無言なのよ!」
「いや、嬉しいんだけど……彼女なわけだし」
「そうだけど、私を好きにしていいんだよ?」
「へぇ……。わかった」
小さな声で呟き堂々と胸を張る彼女に飛び掛かった。
体勢を崩した彼女はよろめき背中から布団に飛び込んだ。
仰向けになっている彼女に深い口づけをすると「や、やめて」とか細い声で訴えてきた。
「やめないよ。だって『好きにしていい』って言ったよね? それにユナは俺のプレゼントだ。拒否権はない」
「……わかった。でも痛くしないで、優しくしてね?」
「うん。約束する」
一瞬考える素振りを見せた彼女だったが自分が言ったことに責任を感じたのか素直に受け入れた。
キスをして彼女に愛情を示す。
すると彼女もキスで愛情を示してくれる。
深いキスをしてさらに愛情を示し、示される。
最初こそ大人しく受け入れていた彼女だったが時間が経つにつれ立場が逆転しお互いにお互いを求めあっていた。
「今日はこのままでいいよ?」
「いや、さすがにまずいでしょ」
「1回だけなら大丈夫だって。それにずっと一緒にいてくれるよね? 隣にいてくれるよね?」
「あぁ、約束する。逆にずっと一緒にいてくれ。俺がユナを守るから」
「リュウヤはずるいな~。さらっとカッコイイこと言うんだもん。
こんな格好で言うことじゃ絶対ないけど……これからも末永くよろしくお願いします」
「確かに、こんな格好で言うことじゃないな。でもいい、こちらこそよろしくお願いします」
彼女の言葉と勢いに流されそのまま最後までやってしまった。
後悔は全くしていない。
それどころか彼女との未来が誓い合えたことで嬉しさのほうが大きかった。
一日遅れにやってきた忘れん坊のサンタクロースは俺にとって彼女にとっても忘れることのできない思い出となった。
来年は忘れないようにしっかり日付を守って貰いたい。
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