朝起きたら婚約破棄(解消)マニュアルと書かれたチラシが枕元に置いてあった件
これを手に取られたと言う事は、あなたには婚約をなかった事にしたい相手が居るのでしょう。
真実の愛に目覚めましたか?
それとも相手の本性に気付いてしまいましたか?
押し付けられた婚約でしたか?
いずれにせよ、このマニュアルは必ずあなたの力になるでしょう。
では最初に、あなたにとっての敵である、婚約について知っていきましょう。
既に詳しく知っている人は再確認です。
敵を知り、己を知れば百戦するも危うからずとの言葉もありますからね。
それをなかった事にする為に、どういった条件で婚約が成り立っているのかを知る事は重要なのです。
まず婚約は、口約束でも当人同士、双方の合意があれば成立します。
つまり幼少の頃の口約束、大きくなったら~~君と、~~ちゃんと結婚する! でも婚約になると言う事ですね。
成立の条件は非常に軽いと言えるでしょう。
要するに、その程度の物に過ぎません。
婚約とは結婚の約束をしたと言うだけで、何ら強制力が発生する物ではないのです。
故にこの婚約を破棄する事は、一方的に、
「あれはそんなつもりじゃなかったんだ」
で終わる話です。
口約束でも約束は約束だ!
とおっしゃる方もいるかも知れませんが、例えば、そう、一週間先の食事処に予約の連絡を入れ、その前日になってどうしても外せない用事が出来てキャンセルしたとしましょう。
これも予定を約束しておいて破った事になります。
旅行の予約でも、面会の予約でも、何でも同じです。
勿論、約束は守るべき物ではありますが、その為に自分の人生を犠牲にする程の物ではありません。
しかし問題はここからです。
婚約とは口約束の物ではありますが、結納等で物品、金銭のやり取りがあった場合は、婚約をなかった事にする際にその補償を求められる場合があります。
つまり利害が絡んでしまっていると、一方的な破棄は不可能になると考えていただいて良いでしょう。
またより話をややこしくするのが、家と家の間で婚約が交わされていた時です。
これは当人同士の意思でなく、家と家が繋がりを得る為の血縁関係を求めた婚約で、極論を言えば当人の意思は全く関係ありません。
そして家同士の繋がりを求めた婚約の場合、どうしても利害関係だって生まれるでしょう。
例えば直接的に、一方の家がもう一方に対して資金援助を行ったり、取引で優遇したり、或いは戦争を止めて停戦したりと。
結婚後、二人が住む為の新居を購入していたり、女性の実家が婚約した男性に対して、仕事や社会的な立場を用意している場合もあります。
当たり前の話ですが、こうした婚約は一方的に、
「あれはそんなつもりじゃなかったんだ」
で解消する事は出来ません。
先ず貴方の家がそれを決して許さないでしょう。
故にどうしても貴方が真実の愛を貫きたければ、まず家の掌握から始めるのです。
貴方の家の実権を握る人物は誰でしょうか?
当主である父親ですか?
それともまだ先代当主である祖父が実権を手放していませんか?
母親や祖母こそが家の支配者なケースだって、あるでしょう。
しかしそれが誰であれ、弱点のない人間は存在しません。
実は当主は女性関係がいい加減だったりしませんか?
家の中にその権力者と反目する人物はいませんか?
いえ、いっそ直接的な弱点でなくても構わないのです。
当主が信頼する腹心の家庭には、何らかの問題が生じてないかを調べましょう。
生じてなければ、それを生じさせる余地がないかを。
人を取り込み、実権を握る人物を陥れ、そうすれば貴方こそが家を差配する事が出来る筈。
つまりは、そう、貴方の結婚相手も、貴方自身が決めれます。
けれどもそれでも、家の実権を握る人物が手強く、勝利がおぼつかないと言うのであれば、えぇ、このチラシに記された地図の場所に赴いて下さい。
そこで正当な対価を支払えば、貴方の真実の愛を応援する誰かが、貴方にとっての邪魔者を、貴方の手を煩わせる事なく排除してくれるでしょう。
とても素晴らしい事ですね。
さて、あり得ない事だとは思いますが、もしも貴方が真実の愛も家族も、どちらも等しく大切で選べない優柔不断な人物だったら?
……本来ならばそんな方には、貴方の愛はその程度かと罵りたいところですが、実は一つだけですが、愛も家族も失わずに済む方法があります。
そう、貴方にとっての邪魔者は、家の実権を握る人物だけではないですね?
ほら、貴方の人生を邪魔する、今の婚約者が。
えぇ、そりゃあわかってますとも。
愛と家族のどちらかを選べないような優柔不断で、でもとても優しいな貴方なら、幾ら婚約者が憎くても排除する事なんて考えられないと。
ですから貴方にたった一つ、お勧めの方法をお教えします。
このチラシに記された地図の場所に赴いて下さい。
そうすれば後は貴方は幾らかの金銭を失いますが、何ら心を煩わせる事なく、貴方の人生から件の婚約者は退場するでしょう。
しかもこのチラシをここまで読んでくれた貴方だけに、耳よりの情報です
今から記す合言葉『×××』と伝えれば、地図の場所で請求される金額が何と三割引き。
三割引きになるのです。
ですが何時までも三割引きになる訳じゃありません。
このチラシを貴方が読んでから三日以内。
そう、三日以内でしたら、その三割引きは適用されます。
三割引きだけじゃ物足りない?
そんな欲張りな貴方には更にドン!
本日中のご連絡に限りもう一人、貴方にとって不都合な人間が世界から消えます!
このチャンスは逃せませんね。
はい、我が黒鵜忍軍は貴方のご訪問をお待ちしています。
それではどうか、良き婚約破棄ライフを。
……えっ、やだ何これ怖い。
私、婚約者とはラブラブなんですけど。
あれ、でもお兄様が学園で、婚約者以外の方と親しくしてるとのうわさが……。
えっ?
お、お父様に相談しましょう。
そうしましょう。




