はじめての雷
はじめまして。読んで下さると嬉しいです。頑張っていっぱい書きますのでよろしくお願いいたします。
しとしと雨がふる、今夜もまた良いものだ。そう思いながら滴る雨を身体にまとわりつかせ私は暗い夜道をひたひた歩くのだ
社会に絶望してしまった、畦道 始28歳。これといった趣味はない。ただこうやって夜道を練り歩くことが趣味と言えば趣味だろうか、そこそこの大学を卒業し、運良くそこそこ名の知れた企業に入社できた。端から見ればホワイトカラーと呼ばれてもいいくらいの人間なのだろう。
そう畦道 始はそういう人間である、昨日までは。
今朝はひどく眠い朝だった。人ごみをかき分け電車を乗り継ぎ会社へ向かっていた。不意に手をつかまれた時は意識が飛びかかっていた頃だった。
「あなたは何をやっているのですか!!」
強い口調で話かけてきた女性は、濡れた蛇の様な美しい髪をした美人だった。この人になら尻に敷かれても良い。そう思える程だった。
女性に積極的に話しかけられる経験はあまりなかったのも不幸の始まりだった。
痴漢の免罪だ。いや、正確には免罪ではなかった。なぜなら私の下半身にあるファスナーから私が飛び出ていたからだ。
ボロン、効果音をつけるならきっとこんな感じなのだろう。私の人生においても上位に来るほどのコンニチハ具合であった。
あれよあれよというまに鉄道職員の所まで連行された私は痴漢の免罪を押し付けられてしまったのだ。
いやもしかしたら、鉄道職員に対し状況を説明し終えるまで私を出しっぱなしにしていた事がさらに状況を悪化させたのかも知れない。
しまえと三回くらい言われてようやく応じたその頑固さもまた拍車をかけた。
仕方がなかったのだその時私は下着をはいていなかったのだ。その状況で納めればムズムズする。
下着をはいていない状況でファスナー全開していたのだ。ちょっとはみ出るのもご愛嬌ではないのか。むしろちょっと道からはみ出てしまうのが人間というものではないだろうか。
不幸と不幸が重なったのだ。私は悪くない。
そのまま私はその状況を会社に報告し、取り調べを受けたのだ。解放されたのは正午を大きく過ぎていた。
会社に連絡するとそのまま帰宅し、しばらく出社せず自宅で待機するようにと謹慎処分を受けた。
・・・無残だ。
誰も私の話を聞いてくれなかった。むしろ言い訳をすればするほど迫害されるかのような孤独感さえあった。
私の身体を濡らすのは雨だけではないのだ。そうこうしているうちに空模様が荒れ出した。ゴロゴロと響く重低音が私を揺らす。徐々にそれは近づいて来ているかのようにも思えたが、そんなものを気にしている心ではなかったのだ。
次の瞬間には私は激しい光と痛みに包まれていた。
・
・・
・・・
「ねえ、何してるの・・・」
気がつくと私は一面真っ白な砂漠のような場所にいた。どこまで続いているのか分からないほど広く、空も太陽もないのに明るい。ただただ真っ白なのだ、だがどこか柔らかで、雲の上に世界を作ることができるならこんなふうに作りたいと思えるような場所だった。
「ねえ」
じっとりとした目で私を見るものがいた。若い。十代後半だろうか、白いローブに整った顔つき、シルクのような金の髪、笑えばきっと人を魅了する。そんな容姿なのに蔑んでいるかのような目がそれを台無しにしていた。
白いローブを着た青年に私は話しかける。
「あの光はきっとカミナリだったのだろう。そうなるとここは死後の世界で君はきっと神さまなんだろう?察しの悪い私でもそれぐらいは分かる。何をしていたかと言われれば、少々不幸が続いていたから気を紛らわせるために夜の散歩をしていたのさ」
青年はそれを聞くと蔑んだ目をそのままに眉間にシワを寄せる
「じゃあ何で全裸で歩いてたんだよぉ・・・」
読んでくれてありがとうございました