甲斐先輩にも指摘
ぬいぐるみ劇も昨日と違って初回から八割埋まった。それに伴って二日目も元気に来てくれた、えりか、りす、やまねの三人も、もっと元気。元気な可愛い女子小学生って見てるだけでなんでこんなに気持ちが浄化されるのか。
僕は美雨にロリコン顔認定されないように注意しながら過ごした。
八割埋まったと言っても、陶芸室の半分の劇場の話。それでもぬいぐるみ部にとっては大進歩。ぬいぐるみにとって大きな一歩が三十センチくらいなように。
それにしても甲斐先輩はぬいぐるみ劇も見てくれていてありがたすぎる。
小さな子と親しかいないところに甲斐先輩がいると目立つ。
どちらかというとお母さんよりかな……。
それを告げたら僕がぬいぐるみにされそうだけど。
ぬいぐるみ劇の反応自体は昨日も良かったので、今日は昨日の拍手が大きくなった感じだ。
そして昨日と同じく、そのままぬいぐるみを買ってくれる人が結構いる。
「いやあ、ぬいぐるみ劇まであそこまで進化しているとはね」
ぬいぐるみ劇からのぬいぐるみ購入の人たちが帰った後、甲斐先輩がまた現れて、話しかけて来た。
「そうですよ甲斐先輩。何にもみかけが変わってない私と違ってぬいぐるみは変わってます! もちろんそれは甲斐先輩が残してくださったもののおかげです」
美濃がそう言った。
美濃の言う通り、甲斐先輩に僕たちはぬいぐるみづくりを教わったし、ぬいぐるみ劇自体、甲斐先輩がもともと始めたものだ。
だけど美濃がそのタイプの自虐台詞を言うとは思わなかった。
甲斐先輩も微妙に返しにくくなってるし。
「あ、ところで、優くんのぬいぐるみも今年はちゃんとたくさん売れてるね」
だから甲斐先輩はそう話を変えたのだろう。
「あ、そうなんです。それに……去年唯一売れた僕のぬいぐるみも……大切にしてくれる人がいるんです」
「あ、それがえりかちゃんね」
「はい」
甲斐先輩は僕に小学生のお友達が増えたことについて、美雨からしっかりと報告を受けているようだ。というか美雨と甲斐先輩は色々語り合っているらしい。
「いいな……そういうの。運命の出会いだね」
お、甲斐先輩は、美雨や美濃みたいにロリコンがどうのとは言わないのか。
「はい、実際、初めて会った時、『うんめいの、出会い……』と言われました」
僕があの時の嬉しかったことを思い出しながら言うと、
「あ、なんか優くんロリコンっぽい怪しい雰囲気なってるよ。気をつけた方がいいね」
ここで指摘された。だから自分ではどういう風になってるかわからないんですけど。
しかし、僕がそう突っ込む前に、
「でもほんとにいいな……私はまだ気づいてもらえてないからね」
甲斐先輩が先ほどと変わらない調子でそうつぶやいた。