二日目の朝に
次の日。文化祭二日目。
僕は朝早く陶芸室に入った。
「あ、おはよ、優」
「あ、おはよう」
美雨がすでに来ていた。僕より美雨が早いとは思っていなくて少し返事が遅れた。
僕は昨日洗い出した改善点のもと、今から直せるところは直そうと思ってこんなに早く登校したのだ。
ということはおそらく美雨も……。
「ほら、ここに記念撮影スペース作ってみた。ぬいぐるみ部歴代保存のおっきいぬいぐるみと写真が撮れるよ」
やはり、僕が思い描いていたことをすでに実行していた。
「おはよーございます!」
と、ここで美濃が登場。
お、いつも通り小学生が制服を着たような格好……ではなかった。
「なんかすごい色々くっついてるな」
美濃は身体のあちこちにぬいぐるみをくっつけていた。
「この姿で歩いてぬいぐるみ部の宣伝するんです。放送部の仕事の方はそんなに人前には出ないのでほぼ一日中この格好で行きます!」
「すごいつばき可愛いね! 優のチョウチンアンコウと比べるとものすごい差で……」
はい、ごめんなさい……。チョウチンアンコウなんか作って悪かったと反省してます。
「僕も美濃みたいにつけようかな」
「そうだね、チョウチンアンコウよりはいいと思うし。私つけてあげる。だから私にもつけて」
「お互い付けあいっこ! 恋人同士のイベントの定番ですね」
「いや、ぬいぐるみ付けあいっこしてる人なんて世界探してもどこにもいないだろ」
「じゃあまずここら辺につけて」
僕の指摘はスルーですか。
じゃあつけますか……って、美雨が指したところ、もともとついてるけど。つまり……おっぱいが。
「そこは自分でつけられるでしょ」
「うん、うんそうだねわかったよ」
美雨は自分でぬいぐるみを胸元につける。
あ、でも僕がつけても良かったかな……。いや別にそういう機会を逃したのを悔やんでいたりはしないからな。
結局その後の、背中や肩の後ろあたりにつけるのでも十分緊張した。
と、ぬいぐるみ付けあいっこがひと段落したところで、稲城が到着した。時間もないことだし、僕たちはさらに改善できるところを改善した。
例えば、ぬいぐるみを陳列する机の高さを低くしたり、商品の説明にふりがなをふったり。そういう小さなところから。
ぬいぐるみもただ並べるだけじゃなく、ぬいぐるみたちがじゃれ合っているように並べ、余っていた雲や草のぬいぐるみも配置。
実際にごっこ遊びなどをする様子が小さい子にもイメージできるようにするという狙いがある。
それに何と言っても、この方がぬいぐるみがさらに可愛く見える。
手作りだから一つ一つ若干違うし、本当に一つ一つが生きているようにすら感じられる雰囲気となった。
よし。かなり良くなった。
二日目も、一番大切にすることは一日目と同じ。
『ただいまより二日目を開始します』
今日は講堂での集会はないので、そのままアナウンスを合図に、文化祭二日目が始まった。




