満足なのか?
二回目のぬいぐるみ劇も、来てくれた人たちは、楽しんでくれたようだった。
ほたる児童館の人たちはもちろん。
大きな動きで手を振ってくれるほたる児童館の小一小二たちと、そして梨田さんと別れた僕たちは、えりか、りす、やまねを送るために、再び料理部へと向かった。
「また回れるの楽しみだな〜」
「なぎさこどもまつりの参考になりそうなもの、いっぱいあったよー」
「あれ、なぎさこどもまつりってもう終わったんじゃないの?」
やまね達の小学校における文化祭のような行事であるなぎさこどもまつりは、例年もっと前にやっていたはずだ。ちなみに僕は行きたくてたまらないんだけど残念ながら在校児童とその保護者のみしか入れない。
「今年からね。十二月になったんだよ〜」
りすがそう教えてくれた。
そうなのか、今年から時期がずれたのか。
「……あの」
僕が納得していると、えりかが小さな声でりすとやまねに話しかけた。
「どうしたー? えりかちゃん」
「あの、そのなぎさこどもまつりって、楽しい?」
えりかはなぎさこどもまつりに興味があるようだ。えりかは転校して来たばかりで、しかも今は学校に行っていないから、なぎさこどもまつりの様子を知らないのだろう。
前に僕が少し話した時はえりかが泣いてしまうことにつながってしまった。けれど、今はえりかの方から興味を持っている。
「すんごい楽しいよ〜! まずね〜準備が楽しいよ〜。私たちのクラスはね、ミサンガ作りと、宝物探しゲームをやるんだよ〜」
「えりかちゃんもきっと楽しいと思うから学校来ようよー」
「うん……でも……」
えりかは考えているようだった。一瞬顔が歪んだ。スポーツ大会のかけっこの時。学校に来たことを責められてしまったことを思い出してしまうのかもしれない。
「かんがえてみる……」
それでもえりかは、行きたくないとは言わなかった。
料理部に三人を送り届けた後、僕は、ぬいぐるみ売り場に戻りひたすら仕事。もちろん、仕事という感覚はないし、ぬいぐるみを買ってくれる人がいるたびに、この人は、ぬいぐるみとこれからどんな思い出を作っていくのだろう、そんなことを考える。
僕のぬいぐるみもやっぱり美雨や美濃よりは少ないけど売れていた。買ってくれた人たちにとって大切なものとなってくれればもう嬉しすぎる。僕はかなり満足していた。
その調子でぬいぐるみ劇をやってぬいぐるみを売ってを繰り返して、一日目が無事終了した。ぬいぐるみ劇は、五回合わせて百三十五人。ぬいぐるみは、百三十個売れた。僕的には結構いい方だと思う。
しかし、
「今年は統計をまとめる会、気合入ってるんだな。一日目時点のの得票数の結果を出しているぞ」
お客さんがいなくなった陶芸室で、稲城がパソコンを見て言った。
「……ぬいぐるみ部は?」
得票数は、お客さんが多い部活が有利だ。だから悪いのは予想付いてる。しかしそれでも、どのくらいなのか気になった。
「……言いにくいんだが」
「……」
「言ってしまうと少ないビリから三番目だ」
「そうか……」
「羽有は、これで満足なのか?」
稲城の問いかけは僕を圧迫して、ジンベエザメのぬいぐるみを上に置かれたコバンザメのぬいぐるみのような感覚に僕は襲われた。