女子小学生みたい、です
陶芸室についてから十分ほど経つと、
「すごい〜! 学校中が文化祭の雰囲気だね〜」
「楽しそうなの、いっぱいあったー」
「今日から三日、がんばるよ」
りす、やまね、えりかの三人が到着したわけだが……。
「わお……」
僕は三人の格好に驚いた。えりかがピンクのワンピースなのは予想通りなのだが。りすも、やまねもふりふりワンピースだった。
三人の可愛いお嬢様がプリンキュートの変身後バージョンが勢ぞろいしたかのごとく降臨してしまった。
「三人とも可愛い! すんごい可愛い! いやー可愛い!」
美雨が可愛いを連発して褒める。その美雨の反応を見て、三人とも嬉しそうにぴょこぴょこし始めた時、
「じゃーん、フランス語劇部の余った衣装借りてました! どうですかこのお嬢様のようなワンピース!」
放送部の仕事が終わったのか美濃が戻ってきた。そして制服を着ていず、衣装を着ている美濃は、三人に溶け込んでいた。
「あ、なんか、私、女子小学生みたい、です」
美濃は小学生三人を眺めてから、自分の胸元を見下ろす。
「そうだな。格好がね」
胸元あたりに共通点があるか否かの話じゃなくて、あくまでも格好の問題。
「しょうがないですね。速攻で着替えます。優くんは一回廊下に出てくれると助かります」
「はい、出ます出ます」
僕は廊下にさっさと出る。ついでにあまりに隅っこでパソコンを見ていたせいで美濃に気づかれなかった稲城も、引きずって出る。
「はい、オッケーです」
そう言われたので戻ると、美濃は制服姿になっていて、一応なんとか高校生に見えた。廊下に稲城はまだいるっぽい。出るときは引きずってあげたから戻るときは自分で移動しような。
「一回めの公演は十時からだから、それに向けて三人は準備をよろしく。三十分あるからゆっくりで大丈夫だよ」
少し雰囲気が落ち着いたようなので、僕はりす、やまね、えりかにそう言った。三人は元気いっぱい返事を返してくれ、ぬいぐるみ劇の舞台の裏で、セリフの最終チェックをお互いに始めた。
「で、もうすぐ、九時半だから、僕たちは、ぬいぐるみ販売とパンフレットの方を準備しないと」
ぬいぐるみ劇は、十時から、十一時半から、一時から、二時半から、四時からの一日五回。ぬいぐるみ販売とパンフレット配布は、一日中行う。
僕たちがぬいぐるみ劇をやっている間は、ダンス部の人たちが販売と配布をしてくれることになった。どうやら、衣装づくりに加え、中庭のステージをやった(やらされた)お礼らしい。
さらに、ぬいぐるみ劇がない間、りすとやまねとえりかが文化祭を回れるように、三人を料理部の人が案内してくれることになった。こちらも料理部のお子様ランチのおまけのぬいぐるみをつくったお礼だ。
というわけで少ない人数でもなんとか一日中稼働でも乗り切れそうなわけだ。
準備が整って、僕たちがずらりと並べたぬいぐるみを前にして座ったと同時に。開門を告げるアナウンスが流れた。