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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭編
44/73

もしかしたら下着関係な感じかな?


 広い講堂はすでに三分の一くらいが埋まっていた。


 基本的に自由席だったはずなので、僕たちは真ん中より少し前よりの座席をとった。美濃は放送席にいると言っていたので、美濃の分の席を取る必要はない。


 講堂は暗いので、稲城のパソコンの画面が明るく感じる。


「お、よく見たらマウスが新しい気がする」


 僕は稲城が操作しているワイヤレスマウスに気づいた。前はワイヤレスじゃなかった。


「羽有にしては珍しく鋭いじゃないか。ネットで買って昨日届いたんだ」


「おお、なんかかっこいい」


「やはりそうか、自分もこのデザインはかなり神がかっていると思う。それに、手にフィットして疲れにくい」


「へー」


 感心していると、脇腹よりも少し背中よりのところをつつかれた。


「ん?」


「あのね、今日ね、私もバージョンアップしたところあるよ」


 そう言っている美雨は足の先を擦り合わせている。それに合わせて、制服のスカートが少し動く。


「え?」


 美雨はいつも通りに見える。しかし、何かバージョンアップしたのにに気づいて欲しいとしたら、やっぱり。


「美雨の髪ってすごい綺麗だよね」


 髪に決まってるよな。


「えっ、何で髪? 髪……私の髪、すごく綺麗……なの?」


 美雨は突然顔を赤くして……るのかは暗いからわからないけど、足を高速すりすりし始めて、髪をくるりんとしたり手で溶かすような仕草をしたりし始めた。

 それがなんか、めちゃくちゃ女の子だなあって感じで、僕はなんとなく視線を稲城の自慢のかっこいいマウスに移した。


 結局、美雨がどこが変わったのかはよくわからなかった。もしかしたら下着関係な感じかな? それだったら中洲先生の期末の最後の問題くらい難問になるけど。




「まもなく、開会式を始めます。生徒は着席してください」


 誰かはわからないけど、これまた可愛い声の放送部員がアナウンスをかける。


 見渡すと、ものすごい人だった。中等部も高等部も全員集合しているから、千人以上の人がいるはずだ。


 みんなのざわざわが収まった頃。壇上に一人の男子生徒が上がった。

 

 文化祭実行委員長の石本だ。


 そして、はきはきとした口調ではないけど、爽やかに開会宣言。


 講堂に、自分の拍手のリズムがわからなくなりそうなくらい大きく拍手が響きわたる。


 文化祭一日目、スタートだ。


 その後は、文化祭実行委員の人たちによる細々とした諸連絡と、校長先生のお話、それから文化祭行事担当の先生のお話と、お話がたくさん続く。


 去年は全く聞いていなかったが、今年は部長だということもあり、連絡事項は聞き逃せないし、その勢いでちゃんと先生のお話も聞いた。まあ要約すれば力を合わせて頑張ろうでおしまいなんだけど。


 りすとやまねとえりかは、九時十五分に到着予定で、文化祭の一般来場者むけ開門時間は九時半。

 

 時刻を確認すると九時三分なので別に暇があるというわけでもない。りすとやまねとえりかを出迎えるために、僕と美雨は、それからなかなか立とうとしないでパソコンを見ている稲城を立たせてから、入り口付近の人々の流れに身を任せ講堂を出た。


「ぬいぐるみ部の人たちか。今回は、ライバルといった関係がきっとふさわしいのだろうかね」


 途中話しかけてくる人がいて僕たちは、階段を上りかけたところで立ち止まった。


「おお、アニメ研究会、だよな」


 アニメ研究会の部長の山藤だと思う。なんか謎のコスプレしていてるから全くそうは見えないけど。


「その通り。アニメ研究会は毎年テーマを決めているが、今年は超人気アニメ、プリンキュートをはじめとする、女の子に人気のアニメをテーマとした。したがって、ぬいぐるみ部とターゲットが被っているのだよ」


「そうなのか、で、それはなんの格好?」


「まさか幼い女の子との触れ合い経験が豊富と噂の羽有でも知らない……? いや、そんなはずはない。これは、プリンキュートの謎キャラで後に味方だとわかる、コーラ味のプリンの精霊、プリコーラのつもりなのだがね」


 山藤は、トリプルアクセルのように回転して見せた。あ、もちろん宙に浮いて三回転したわけじゃないからね。ちなみに、プリンキュートは少し知ってるけど、プリコーラって初めて聞いた。サブキャラかな。


 そして、そのまま謎の泳ぎ方をするプランクトンのように移動していった。

 

 離れていくプリコーラを、僕と美雨、稲城は見ていた。


「ライバル、ね……」


「自分はアニメ研究会のテーマについては事前に情報を得ていた。だが思ったよりも気合いが入っているようだな」


「たしかに。しかも人気ありそうなんだよな」


 知名度が高くて大人気のアニメキャラがいる空間と、全くもって知られていないぬいぐるみの空間。どちらに人が集まるかは明らかだろう。


 それでも、ここまで準備をしたんだから、僕たちはぬいぐるみの魅力をしっかり伝えよう。


「よし、陶芸室早く行こう」


 僕はそう言って、階段装飾でいつよりもカラフルになっている階段を駆け上がった。







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