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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭準備編
38/73

お菓子食べたいです


「よっしゃ! 今日から本格的にぬいぐるみ劇の練習を始めるし、入口の看板も作るし、販売用のぬいぐるみも作るし、あとそれと……」


 僕は忘れないように自分で前もって書いたやることリストを確認。


「あとそれと……そうだ、料理部から頼まれたおまけのぬいぐるみ」


「めちゃくちゃ多いじゃん!」


「エネルギー補給のためにお菓子食べたいです……」


「いや、そんな暇ないよ。四時半に、りすとやまねとえりかが来るからそれまでできるだけ作業だな」





 えりかの家に行ってから、五日ほど経った。その五日の間に、一度は崩れたぬいぐるみ部は、ものすごく進化していた。


 まず、ぬいぐるみ部HPができた。できたというか、稲城がこっそり作っていた。ぬいぐるみ部のための何か、と言うのはこのことだったのだ。

 パソコン研究部の人たちにもアドバイスをもらったらしく、そのお礼に趣味で作っているゲームを提供したらしい。

 僕が一人で学校を早々と後にしたあの日。稲城はぬいぐるみ部のためにパソコン研究部に行ってくれていたのだ。


 そして、そのHPに早速、ぬいぐるみ部の紹介動画が上がっているのだが、その音声の声が美濃だった。そして、放送があんなに適当な美濃が、動画内ではきはきと喋っているのだ。

 稲城からHPでの紹介動画について、僕と美雨よりも早く打ち明けられた美濃は、きちんとした話し方について、放送部の人から教えてもらい、練習したらしい。教えてもらってばかりでは悪いので、文化祭中の校内放送の企画を立てたみたいだ。

 そう。美濃もまた、あの日、ぬいぐるみ部のために放送部に行っていたのだ。


 脚本は、前よりも美雨らしくなった。前よりものびのびと、楽しんでほしいという気持ちを込めて、書くようになったからだと思う。

 あと、美雨は文芸部の副部長の戸内に、脚本を読んでもらって改善点を指摘してもらっていたのだ。戸内は、僕たちのクラスの出し物で行う演劇の脚本を担当していて、それで美雨は助言をもらえると思ったらしい。そのお返しに、小道具作りを手伝っていたのだ。

 だから美雨も、ぬいぐるみ部のためにクラスの作業に関わっていた。



 みんな、ぬいぐるみ部がばらばらになった次の日、ぬいぐるみ部のために行動を起こしてくれていた。


 そして、それらが全て生かされて、ぬいぐるみ部が、文化祭に向けて、さらに歩んでいる。




 四時二十分ごろ。


「うゆゆ〜。高校生になった気分だよ〜」


「小学校よりも広いねー」


「今日は、セリフの練習がんばる」


 三人が音楽室楽器置き場裏に登場した。


「三人とも、一緒にぬいぐるみ劇をやるって言ってくれて本当にありがとう。ちょっとお菓子食べていく?」


「ちょっとまったです! 私には駄目って言ったのにずるいです!」


「私も、お腹空いたかな……」


 でた。小学生以上に、お菓子が大好きな女子高生。


「しょうがない。ちょっと食べたら、陶芸室に移動するからな」




「美雨と美濃のちょっとはちょっとじゃないんだな」


 お菓子をそれお昼ご飯ですか? ってくらい食べた美雨と美濃は満足そうだ。りすとやまねとえりか、三人とも二人がめちゃめちゃ食べるからびっくりしてたんですけど。




 まあそれでもちゃんと四時半から開始できたからまあいっか。

 まずは、三人に現段階の脚本を渡す。そして、脚本を見ながら読んでみる。まずはここからだな。

 



 ちなみに、えりかはライチョウ、りすはウサギ、やまねはアザラシの役をやることになった。

 美濃が二役やり、僕と稲城はなし。ぬいぐるみの声は女の子の声の方が絶対いい。僕はひたすらぬいぐるみの操作などなど。稲城は照明をやってくれることになった。


 女子陣五人が読み合わせているのを聴きながら、僕はぬいぐるみをどう動かすかをイメージする。


「やっと一周おわったー意外と長いんだねー」


 やまねが、椅子の背もたれに寄りかかって背中を反る。


「でも、三人ともすごいな。初見なのにはっきりと読んでて」


 僕は小学生たちの音読技術にかなり感心していた。


「そりゃあ、やっぱり、毎日音読の宿題をやってるからかな〜。聞いてもらった人に音読カードにサインしてもらったりするんだよ〜!」


「学校いってないけど、私も音読は毎日してるよ」


 そうか、毎日の音読の効果か。そういえば僕も音読してた頃があったな。懐かしい。


「よし、もう一周やりましょう!」


 美濃は二役やってるのに元気だな。お菓子のエネルギーのおかげかな。




「様子、見させてもらっても大丈夫ですか?」


 二周目を始めようとした時、小町先生が入って来た。


「どうぞどうぞ」


 僕は小町先生に近くにあった椅子を出す。できれば綺麗な椅子を選びたかったが、陶芸室の椅子は全部ボロくて汚れてるから仕方がない。


 小町先生が見ている中、二周目が始まった。僕は一周目の時に適宜とったメモを見ながら、改善点を考えたり、ぬいぐるみの操作を考えたりして、思いついたことをひたすらメモしていく。


 こうして練習を何周かして、初めてのぬいぐるみ劇の練習は、ぎゅうぎゅうに綿を詰めたぬいぐるみのように、中身の詰まったものとなった。





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