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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭準備編
26/73

あら、またですわね、会うの

 しかしそれから順路を進みお土産ショップに移動すると。


「うお! すごいぬいぐるみが並んでいる!」


 先ほどの静かな空間にいた僕たちはテンションが上がっていた。特に変化が大きく見られるのは僕なんですけど。


「ほら、このコツメカワウソのぬいぐるみなんか、10個ピラミッド型に積み上げたくなるくらいの可愛さだな!」


って三人を振り向くと、三人はそこにはいず、海の生き物きらきらキーホルダー売り場にいた。


 それでもさっきまで僕と一緒にぬいぐるみを見ていたから、やっぱりきっとみんなぬいぐるみが好きなんだと思う。


 三人とも、それぞれ購入することに決定したぬいぐるみを一つずつ、小さな買い物かごに入れている。りすはカクレクマノミ、やまねはゴマフアザラシ、そしてえりかはフンボルトペンギンのぬいぐるみにしたみたいだ。

 僕はとりあえず、ぬいぐるみ部の人々へのお土産と自分用に、チンアナゴのぬいぐるみを四つ。他は買わない。買うお金があれば材料を買うし現在金欠。だから思う存分見てどうして可愛いのか考えて今後に生かさねば。


 僕はチンアナゴのぬいぐるみを先に買い、店内をぶらぶら歩いてぬいぐるみを見て回っていた。


 三人はやっと買うキーホルダーを決めたようでレジの列の一番後ろにちょうど並んだところだった。もう少し時間がかかりそうだなと思っていると、


「あら、またですわね、会うの」


 バッグに加え、お土産ショップの袋を下げているみかんが一人でいた。


「まだ田植と別行動してんのかよ」


「違いますわ。さっきまで一緒だったのですけど。けどまたお子様ランチを発見してしまったようですわね」


 みかんの目の先には、お土産ショップに隣接されたカフェ。あそこにもお子様ランチあるのかよ。たくさんお子様ランチに会えてよかったな田植。でも……


「みかんはいいの? それで」


「いいですわ。別に。幼馴染ですもの。凛太がお子様ランチしか見えない時があるのは私が世界で一番受け入れていますわ」


 そうか。幼馴染だったのか。なるほど、幼馴染ヒロインがいてかつ、お子様ランチを極め小さな子供たちとも交友関係を広げる。田植を主人公としたJSラノベが書けそう。


「それに……羽有くんは、凛太がどうしてお子様ランチに興味を持つようになったか知っていますの?」


「いや、そういや知らないな」


 田植が純粋に料理が本当に好きだということは僕もわかっているけど、なぜお子様ランチなのかと言われれば、答えは思いつかなかった。


「凛太は、お子様ランチを、初めは妹だけのために作っていたのですわ」


「妹……? そういえば田植妹いるんだっけ」


「そう。凛太が中一で、妹の花凛が小一の頃でしたわ。両親が離婚して、母親と三人暮らしになりましたの」


 みかんがカフェの入り口近くを見る。入り口近くの席にはお子様ランチをのりのりで食べる田植の姿がみえた。こちらの方を向く気配はない。


「それ以来、お金のために朝から夜中まで仕事をしなければいけなくなった母親の代わりに、凛太が家事をすることになりましたわ。私はその頃はもうとっくに凛太を知っていましたから、手伝いに行ったのですわ。でも、私、料理が下手で、凛太の方がうまいくらいでしたわ。凛太はある程度のものを作れてそこそこ美味しかったのですけど、問題があって……」


「……妹か」


「……そうですわ。花凛は両親の離婚と急な生活の変化についていけず、学校を休みがちになり、食が細くなくなってしまいましたわ。だからこそ凛太は花凛に食べてもらおうと思ってお子様ランチを……」


「……そうだったのか」


「もともとやっていたサッカーも家事と勉強との両立が難しくてやめて、いつの間にか、自分にはお子様ランチしかなくなったと凛太は思っていますわ。私は凛太の素敵なところを他にもたくさん知っているのですけれど」 


「それで、あんなにお子様ランチにこだわるようになったのか」


 再び田植を見ると、食べ終わっていた田植がこちらに気づいていた。


「……私は、何であれ、好きなことに全力な凛太が好きですわ」


 小さいけどはっきりと、カフェの方、いや田植の方を向いてみかんはそう言い、手を振りながら駆け足で田植のところに行った。

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