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ランドセルを背負ったうみがめさん  作者: つちのこうや
文化祭準備編
11/73

いや、暇じゃない


 ギーコギーコ。

 中庭に、のこぎりの音が響く。あと、鳥が騒がしく鳴き始めてうるさい。


「はあ……」


 普段運動とかしていない僕にとって、木材を切るだけで重労働。寸法通りに切った垂木が傍に積み上げられていく。


「何かやっているようだね」


 上から声がした。

 見上げると、窓から顔を出している稲城が。中庭に面した二階のあそこは、図書室だ。また図書室にいるのかよ。


「暇だったら手伝ってくれたりしたらうれしいなって思うんだけど……」


「いや、暇じゃない」 


 あくびをしながら言う稲城。こいつ暇だ。

 僕はのこぎりをベンチに置くと、稲城を捕まえるべく、校舎の中へと入った。




「自分はこういう仕事は向いていないんだがな」


 稲城はしぶしぶ中庭に降りて来てくれた。


「僕も向いてないからそれはお互い様」


「何がお互い様だ。そもそも自分はぬいぐるみ部ではない。きっと何かおごってくれるんだろう」


 絶対言うと思ってた。


「わかった。何かおごる。それは約束するから、その代わり、もう少しまっすぐ切って欲しいんだけど」


 切断面が明らかに斜めってるのが大量発生している。新幹線かな。僕はそんなに斜めってないというかむしろ芸術的にまっすぐで山手線のよう……って、


「うわああ!」


「どうした? 可愛いJSでも校内に侵入して来たか?」


「き、切るところ間違えた……」


 そのせいで余計に時間がかかったが、なんとか今日のノルマ(みかんが決めた)を終えることができた。



「なかなかうまいな」


「そうか、それはよかった」


 学校から歩いて十分ほどのところにあるとあるファミレス。そこで稲城は、パフェを味わっていた。女子高生かよ。


「うん、おいしいね」


「おいしいです」


 ついでに、美雨と美濃も食べている。こっちは本物の女子高生だ。


「悪いなおごってもらって」


「ありがとー」


「ありがとうございます」


「? いや、僕稲城にしかおごんないからな。二人は勝手についてきただけでしょ」


「美雨、今なにか誰か言ってました?」


「うん。なんかね。気のせいだと思うけど」


 だめだ。甘い物を前にして性格悪くなってる。無理矢理でも追い払うべきだった。しかも美雨と美濃はそれぞれ二つずつ食べてるしな! 僕はドリンクバーだけなのに。


「……で、そういえば、ぬいぐるみ部は無事、部屋を手に入れたわけですけど、何やりますか?」


 話をそらされたような気がする。まあ大事な話だからいっか。


「やっぱりぬいぐるみ劇が僕はいいかなあと思う。美雨脚本

で」


 僕は最後の方を強調してそう言い、コップに残っていた白ぶどうジュースとオレンジジュースのブレンドを飲み干した。


「美雨脚本書いてくれるんですか? うれしいです!」


 美濃の口調は放送をうきうきする時のように弾んでいる。


「う、うん。書いてみよっかなって思って。私でよければ」


 美雨は少し自信なさげでいつもよりやや小さめの声。


「だいじょぶです! このぬいぐるみ部に、脚本をかけるのは美雨しかいません!」


 その様子を見て美濃が励ますが、問題はその言葉があまり励ましになっていないところだ。


「つばきにそう言ってもらえるとやる気出てくる!」


 それでも美雨は笑顔になり、美味しそうにパフェを口に運んだ。ほんとうまそうだな。

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